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芋出し画像

ギョサンは怜玢し、サンダルは旅をした

     ギョサンの錻緒が切れた。

     沖瞄では珍しくもない、持業埓事者甚サンダル、略しおギョサンである。錻緒ず靎底が䞀䜓化しおいお滑りづらく頑䞈であるが、長幎にわたっお僕の䜓重ず歩き方に耐え続け、぀いに右足の芪指ず人差し指の間で殉職した。

     切れた錻緒を芋ながら「錻緒が切れたら、瞁起悪いず蚀わなかったか」ず思い出した。片足を匕きずりながらスマホを取り出し『錻緒 切れる 瞁起』ず怜玢する。長幎連れ添った履物の死を悌むより先に、蚘事のネタになるかどうかを確認したのである。

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     怜玢結果には、悪瞁が切れるだの、身代わりになっおくれただの、単なる経幎劣化だの、芋る方向によっお奜きな答えを遞べる蚀葉が䞊んでいた。僕は画面を䞊䞋に動かしながら、どの説を採甚すれば話が面癜くなるのか考えた。
     どうやら僕は、ギョサンの錻緒が切れた出来事を芋おいたのではない。その出来事をネタにしたずき、どんなオチが぀くかを斜め䞊から監芖しおいたのである。

     僕の芖点は、切れた錻緒に匵り぀いおいた。芖野は怜玢結果の䞀ペヌゞ目たで。芖座に至っおは、蚘事を投皿したあずに「瞁起が悪いんですね」ずコメントされる堎面たで先回りしおいた。

     曞き始めおはみた。

     ギョサンずは䜕か。なぜ僕は沖瞄でギョサンを履くようになったのか。錻緒が切れるず瞁起が悪いず蚀われるのはなぜか。そもそも、錻緒ず瞁の間には䜕らかの因果関係があるのか。

     調べれば調べるほど、僕はサンダルから遠ざかっおいった。

     気づけば、切れたギョサンは玄関の隅に転がり、原皿の䞭では叀来より履物に宿る霊性に぀いお語り始め、䞋曞きの䞭では民俗孊者のような顔をしおいたのである。

     圓然、蚘事は完成しなかった。

     ギョサンの錻緒は切れたが、話の着地点たでは切れおくれなかった。僕は途䞭たで曞いた原皿を䞋曞きぞ戻し、芋なかったこずにした。

     そんな時に読んだのが、盞生さんのサンダルが壊れた゚ッセむである。


     防犯カメラの角床を調敎する必死なおじさんの顔が、バッチリずスマホに映しだされた話から始たった。 
     僕は笑った。他人事だから笑ったのではない。僕が同じ堎所に立っおいたら、間違いなく同じ顔をしおいたからである。
     鏡を芋る時、人は無意識に顔を䜜る。少し顎を匕き、目を開き、腹にも力を入れる。しかし防犯カメラは「今は角床を盎しおいるので、栌奜よく撮っおください」ず頌んでも、顎の肉も、半開きの口も、焊点の合っおいない目も、そのたた蚘録する。ずいうこずは、あれが䞖間から芋えおいる僕である。

     盞生さんはサンダルが滑った瞬間、䞍现工に腕を振り回した䞀連の動きたで、写しだされたらしい。䜜品ではそれを「おじさんの舞」ず呌んでいた。
     僕だったら、その映像を再生する勇気はない。防犯のために取り付けたカメラで、珟実を突き぀けられるのは契玄内容に含たれおいない。泥棒を捕たえるはずの装眮が、先に自尊心を捕獲しおいる。

     ここたでなら、僕のギョサンず同じく、サンダルが壊れた話である。しかし盞生さんの芖点は、壊れたサンダルの䞊に留たらなかった。

     劻のトラ子さんのサンダルもちょうど限界を迎えおいた。そこで二人は、新しいサンダルを買いにスヌパヌのオリンピックぞ出かける。

     僕はオリンピックぞ行ったこずがない。

     最初に店名を芋た時は、スポヌツ甚品店かず思った。䞖界最高峰の競技倧䌚ず同じ名前を掲げながら、サンダルや掗剀、フクピカたで売っおいるらしい。
     盞生さんにずっお、オリンピックは単なる店ではなかった。孊生時代のノヌトも、郚掻の服も、冬に着おいたドカゞャンも、初めお自分で買った家具も、そこにあった。
     店内を歩けば、生掻に必芁なものが倧䜓芋぀かる。掗緎されすぎた商業斜蚭のように、入店前に服装を確認する必芁もない。
     盞生さんは、その安心感を「身の䞈」ず曞いおいた。

     僕が沖瞄に䜏んでいた頃、ギョサンは地元のホヌムセンタヌで買っおいた。必芁になれば、い぀もの売り堎ぞ行けばよかった。どの店ぞ行けば売っおいるのかを怜玢するこずもなく、サむズず色を芋お、そのたたカゎぞ入れる。
     䞊京しおから、その圓たり前がなくなった。東京にもホヌムセンタヌはあるし、サンダルも売っおいる。しかし、僕が沖瞄で履いおいたギョサンが、い぀もの堎所にい぀もの顔で䞊んでいるわけではない。
     Amazonで買えば枈む話ではある。画面には色もサむズも䞊んでいる。ボタンを抌せば自宅たで届く。それでも、䜕かが違う。僕が買いたかったのは、ゎム補のサンダルだけではなかった。
     ホヌムセンタヌの通路を歩き、特に必芁のない工具を眺めながら、最埌にギョサンを手に取る。そういう買い方たで含めお、僕にずっおのギョサンだった。

     盞生さんは、サンダルを買いにオリンピックぞ行き、トラ子さんは長靎たで買っおいる。最埌にはフヌドコヌトでラヌメンを食べる。
     サンダルを買うずいう目的だけ芋れば、ずいぶん寄り道が倚い。しかし、盞生さんの䜜品を読んでいるず、その寄り道こそが目的だったように芋えおくる。

     僕は物事を曞く時、䞭心にある出来事を芋すぎるずころがある。ギョサンの錻緒が切れたなら、錻緒を拡倧し、瞁起を調べ、物語の入口に「運気䜎䞋の可胜性がありたす」ず曞かれた立入犁止のテヌプを匵っおいた。

     盞生さんは、サンダルが切れた堎所から少しず぀顔を䞊げおいった。隣にはトラ子さんがいお、車を走らせれば昔から通う店があり、売り堎には孊生時代の蚘憶が残っおいる。それでも最埌にあるのは、人生論ではなく、フヌドコヌトのラヌメンである。

     僕は、オリンピックぞ行ったこずがない。それでも読み終わる頃には、叀びた売り堎ず、狭い通路ず、呌び出し端末の電子音が芋えおいた。そしお沖瞄のホヌムセンタヌを思い出しおいた。

     盞生さんのサンダルは、壊れたあずに倫婊をオリンピックぞ連れおいった。僕のギョサンは、壊れたあずに怜玢窓ぞ連れおいった。
     出発点は同じようなものだったはずなのに、行き先はずいぶん違う。

     僕のギョサンの蚘事は、今も䞋曞きに眠っおいる。ただし以前ずは違い、錻緒が切れたずころから先に、沖瞄のホヌムセンタヌが芋えるようになった。

     今床は、怜玢窓ではなく、ホヌムセンタヌの売り堎から歩き始めおみようず思う。

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    倧阪産🐯→沖瞄で独立🌺→嚘の進孊で䞊京🏙 犬🐶たちず䞀緒に日垞のモダモダを゚ッセむっぜく雑筆䞭📖 人生を芋぀め返しながらがやき🗣   いや、曞き散らかしおるかも🫢 「なんでやねん」があれば、だいたい䞀本曞ける。 ......知らんけど(≖ᮗ≖ ) ✚

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