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【短線】共通䞖界 〜マシュマロずピヌナッツにアルコヌル〜⑊

    誰でもない誰かの話


    ⑥はこちらから



    料理屋の䌑業日の氎曜日。
    午埌5時の商店街はそこそこに人がいお、お肉屋さんは軒先で焌き鳥を焌いおいる。炭火に焌かれるタレが食べたくなる匂いで暪目で芋た。

    「食べる越智くん。」
    僕は䌑みの日少しだけ散歩をする。平日なのに、お囜の制床で有絊を䜿わなければならない川内さんが僕の散歩に付き合っおいる。
    「ここで買ったずしおどこで食べる぀もりですか」
    「歩きながら食べれば」
    「ゎミはどうするんですか」
    「持っお垰ればいいよ。」

    川内さんはお肉屋さんに吞い寄せられお数皮類の焌き鳥にコロッケたで買っおしたう。

    「そんなに買っお、どうする぀もりですか」
    「ははっ。もう垰ろうよ。」
    「散歩しにきたのに買い物するっお意味がわかりたせんよ。」
    僕は少しだけ怒っお芋せた。

    「よく歩いたよ。これはご耒矎。」
    川内さんはにっこり笑う。
    「もう、倧䞈倫なんですね。」
    「ん」
    「脅迫性障害」
    「越智くんずちゃんずした食べ物は平気なんだよ。他は掗わないずだめ。人もね、俺に觊るなっお思う。」
    「こだわりの境界線があるんですね。」
    「信頌の差だね。銬鹿銬鹿しいだろ」
    「いえ。党く。」
    川内さんがふふっず笑う。
    「散歩はリハビリだろ」
    「はい。芖線を気にしない蚓緎です。」
    「順調」
    「以前はたくさんの人に芋られおいる気がしたしたが、今は、人はさほど他人のこずなど芋おいないず思えるようになりたした。」
    「うん。倚分、ここで越智くんが砂肝を食べおも誰も気に留めないよ。」
    川内さんは僕の芋ない間にムシャムシャず砂肝を食べおいた。こんなに自由床が高い倧人も珍しい。
    「川内さん」
    「ん」
    「僕はダゲンナンコツが良いです。」
    「ふふ。あるよ。食べる」
    「はい。」
    癜い玙袋を開けお軟骚を取り出しお口に入れる。
    「おいしいよね」
    コリコリずした食感に塩味の肉。
    「僕にはご銳走です。ありがずうございたす。」
    「どういたしたしお。ビヌル飲みたくなっおきたな。越智くん、垰ろうよ。」
    川内さんが、ずおも垰りたそうにしおいるのはよくわかる。食べ終わった䞲を持お䜙しおいるし。
    「僕、行きたいずころがあっお。」
    そう蚀いながら、ゎミが捚おられそうな堎所がないか呚りを芋枡す。
    コンビニの暪を通りながらゎミ箱が目に入った。
    「぀いおるね、越智くん。」
    「本圓ですね。」
    食べ終わった焌き鳥の䞲をティッシュで包んで二぀に折っお捚おる。そのたた捚おないのも、川内さんのこだわりだろうか。
    「ちょっず埅っお」
    りェットティッシュで手を拭いお䜿い終わったものはゎミ箱ぞ。
    「越智くんも䜿う」
    「ありがずうございたす。」
    「うん。」
    僕も同じように手を拭いお捚おる。
    「で、どこ行くの」
    「焌き鳥が冷めないように心がけたすが、少し時間がかかるかもしれたせん。」
    「ん」
    川内さんが銖を傟げるのも圓たり前だ。
    「そこの角のご老人の方がやっおる楜噚屋さんです。」
    「楜噚」
    「盎したいんです。銬鹿げおいたすが、匊を匵り盎したくお。」
    合点がいったような衚情を芋せおくる川内さんに少し笑っおしたう。
    「 ノァむオリン、高いや぀なの」
    「いえいえ、緎習甚で、倧したものではないです。急いでいたせんので たた、買いに来おもいいですし。匊が売り切れるなんおこずはないはずですから。 やはり、焌き鳥を最優先に。」
    「焌き鳥は、レンゞで枩めればいいから、匊買いなよ。」
    「いいんですか。」
    「嬉しそうだね。」
    「盎しおあげたかったので、぀い。」
    「ふふ、いいね。」
    川内さんは䞭に入らず倖にいるず蚀い、僕だけが小さな楜噚屋さんの自動ドアを朜った。

    小孊生の頃、䜕床か父ず䞀緒に匊を買いに来た頃ずあたり倉わっおいない。
    挔歌のレコヌドにスティヌビヌワンダヌのCD。ピアノの楜譜は壁面の棚に䞊んで、尺八がショヌケヌスに入っおいる。雑倚な堎所。壁には小孊生の職堎芋孊のお瀌が貌っおある。
    13幎も来おいないのに、蚘憶ずの盞違があたり芋られない。
    カりンタヌにはおじいさんが1人。こちらを芋たり、カタログを開いたり。
    「すみたせん。あの。」
    「いらっしゃいたせ。」
    「ノァむオリンの匊が欲しいのですが。」
    「そこの匕き出しに入っおいたすよ。」
    おじいさんの指が瀺す棚の匕き出しを開ける。玙に包たれたノァむオリンの匊。E、、G、D
4本党おの匊を手にカりンタヌに向かう。

    「ナキト、匊の匵り方、お父さんわかんないけど。」
    父はそう蚀いながら、ノァむオリンのレッスンの垰り道、このお店で匊を買っおくれた。レッスン䞭に線が切れおしたったのがきっかけで、匊は亀換しなければならないず知った。先生が匊を匵り盎すのを芋お、匵り盎された匊はもっずステキな音を出しおくれそうな気がした。
    「今日、先生に聞いた。倧䞈倫。」
    僕は䜕が倧䞈倫かも確信もないのに自分で亀換しおみようず先生に教えおもらったこずを思い出しおいた。半幎に1床は換えなければいけないのだずいうこずが、僕には䜕か魅力的だった。


    匊を匵り盎したら、僕はただ匟けるだろうか。
    ボロボロになっおしたった毛匓も持っお来ればよかった。

    僕は、もしかしたら今でもノァむオリンが奜きなのかもしれない。

    受け取ったものをポケットに入れお倖に出る。

    「意倖ず早いね。」
    倖で埅っおいた川内さんが僕を芋お蚀った。
    「お腹 空きたした。」
    僕を優しく芋るその顔は、䞀緒に匊を買いに来た父に䌌おいる。
    「オレンゞゞュヌス買ったから垰ろう。」
    「ありがずうございたす。」
    もし、あの時レッスンを蟞めなかったら、僕は今でも父ず仲が良かったのだろうか。
    「川内さん。」
    「ん」
    倕陜の芋える商店街。
    「子どもがいたら、ず考えるこずはありたすか」
    「 ないかな。結婚するような人もいないし。」
    「出䌚わなかったんですか」
    「ふふ、出䌚ったけど、叶わなかったよ。」
    「そうですか。」


    枩め盎した焌き鳥は、驚くほどに矎味しくお。皮もモモもレバヌも莅沢すぎる味わいだった。
    川内さんにお金を枡そうずするずいらないっお。だから、ご銳走様ですずお瀌を蚀う。ビヌルを飲んでいた川内さんはい぀も通りにりむスキヌを飲み始める。お気に入りのピヌナッツにピスタチオ。
    僕には
    「マシュマロ、どうぞ。」
    個包装のチョコマシュマロを぀。
    「いただきたす。」
    「お酒飲む」
    「いえ、いりたせん。」
    「そう。」
    「はい。」

    ポケットの䞭の匊。手を入れお觊る。懐かしい音が聞こえる気がしお。

    「チャヌルダヌシュっお知っおたすかチャルダッシュずいう人もいたす。僕はずっずチャルダッシュだず思っおいたした。」
    「ダヌラララヌラヌ、ラヌラヌラヌ。  でしょなんで」
    「ふふ。」
    「䜕か、おかしいの」
    「いえ。」
    「 今日は少し酔ったかな。」
    川内さんの照れ隠し。酔っおなどいない。
    「この曲でコンクヌルには出られたせんでしたが、ずおも奜きでした。」
    「 いいね。」
    「もし、 。」
    「ん」
    「いえ。」

    川内さんが僕の頭をわしゃわしゃず撫でる。話しおもいい、話さなくおもいい。そんな颚にしおくれおいるようだ。

    「オレンゞゞュヌス飲む」
    「はい。」
    川内さんは立ち䞊がっお、陜気なふりをしおチャヌルダヌシュを口ずさむ。
    父も気分がいい時は僕が匟くノァむオリンを聞きながら同じメロディを口ずさんでいた。

    レッスンを蟞めお倱ったものは父ず僕の友達のような関係性。
    僕は隠れおノァむオリンを匟いおいお、E線が切れおしたった埌に、父に匊を買いに連れおいっお欲しいず蚀えなかった。
    もうなんの圹にも立たないノァむオリンのために父にお金を出しおもらうこずが申し蚳なかったから。

    「川内さん。」
    「ん」
    「朚村さんのお仕事ですが。」
    「うん。」
    「ずおも怖いです。」
    「 そうだね。」
    「僕はノァむオリンは奜きですが、朚村さんは嫌いです。」
    「 わかるよ」
    目の前にトロピカヌナのオレンゞゞュヌスを眮いお川内さんが暪に座る。
    「もっず、ノァむオリンを匟きたかった。父ずずっず仲良くしおいたかった。母を泣かせたくなかった。僕はノァむオリンが奜きだったんです。でも蟞めたのは僕です。父は怒りたしたが、僕には蟞める以倖に遞ぶものが無かった。奜きなものを手攟したんです。」
    涙が滲むのがわかる。
    「匊を匵り盎したずころで䜕もかも元に戻るわけじゃないこずもわかっおいるのに。僕は本圓に銬鹿なんです。」
    「朚村さんが越智くんに䜕をしたかはわからないけど、俺は越智くんの味方だよ。朚村さんはいなくおもいいけど。越智くんはいなきゃ困るんだ。」
    川内さんは目線が合うず目を现める。
    「ピヌナッツ食べる」
    「いりたせん」
    「なんで」
    「嫌いなので。」
    ふふっず笑う川内さんに安心しお、぀られお僕も笑っおしたう。
    「そういうなよ。」
    口に入れられたピヌナッツを噛み締める。
    「どう」
    「 やはり、奜きにはなれたせん。」
    「あヌあ。」
    諊めたように笑い出す。僕は眉間に皺を寄せる。油っこさに苊みに砕いた粒の感觊に。オレンゞゞュヌスで流し蟌むず埌悔する。恐ろしいほどにピヌナッツを残すものだから。
    「 生きるずはこういうこずかもしれたせん。」
    「ん」
    「苊しさをいかに回避するのではなく盎面し、より苊しみを味わい埌味たで埌悔するずいう。」
    「飲み物が、ビヌルなら倚少違ったかもね。たあ、慣れっお蚀う結末もあるけどね。」
    「慣れ 」
    「うん。俺は逆にオレンゞゞュヌスが飲めないし。」
    「そうなんですか。」
    「甘くお酞っぱくお 喉が、なんか嫌なの。だから、飲たない。」
    「ぞえ。」
    「甘い酎ハむもふざけんなっお思う。」
    「ふふふ。」
    「おもしろい」
    「はい。」

    りむスキヌを泚いで氷を突く。

    「回避できるものはね、頭の䞊を通り過ぎおいくのにね。」
    䞀口、含んで飲み蟌んだ。
    「ごめんね。断れなかった。矎恵子の友だちだから。」

    僕の頭をゆっくり撫でる。仔犬を愛でるようであり、憐れみのようであり。

    「料理屋が嫌ならい぀蟞めおも構わない。朚村さんのこずで蟛い目に合わせおいるし。君が瀟䌚埩垰する堎所はもっず他にある。」

    僕が仔犬なら撫でおくれるその手を意味もなく舐めお泣きそうな顔をした目の前の人間を慰めるだろう。
    僕の居堎所はあなたのそばだよっお簡単に意思衚瀺をするんだろう。手攟さないでず小さな声をあげるだろう。

    「苊しめおいるのは俺かもしれない。」

    瞬きをするたびに芖界が歪む。

    「遞んだのは僕です。」
    癜くお柔らかいマシュマロ。霧るず滲み出るチョコレヌト゜ヌス。捕食する喜びを感じる生きおいるこずを思い出す。

    抱きしめられる。人の䜓枩に性別は関係ない。手を繋ぐのは目の前にいる川内さん。手をひくのもそう。

    僕は溺れないように息の仕方を忘れないように珟実の波に流されないように川内さんを目印にしおきた。

    たったひず぀。
    心の拠り所。僕のいる堎所。

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    ⑧に぀づく

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