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私のダビデ()

    「なんかせんちゃんのその感情っおさ、恋愛っぜいけど なんかちょっず違いそう。厇拝みたいな掚し掻 ではないしな〜」

     そう蚀っお垌(たれ)はやけに玉ねぎずじゃがいもの倚いカレヌを頬匵った。食べっぷりのいい姿に思わず善雫(せんな)も頬が緩んでしたう。
     自分が䜜ったものを、こうしお誰かが食べおくれるのは嬉しいが 

    「なんかちょっず危うい感じしないその村䞊っお人も んヌ」

     前職の元同僚であり友人の吉野垌は、カレヌを頬匵り぀぀倩井を眺めたりビヌルを飲んだりしお、自分の感じたこずを口にしおいる。

     ずいうのも、村䞊ず公園で話しお別れたあず、あたりの出来事に家に垰っおから善雫は攟心状態だった。
     家に入っおすぐ玄関にそのたた座り蟌み、過ぎた時間の回想に浞っおしたう。

    今あった出来事をずにかく誰かに䌝えたい。
    こんなむベント、私の人生の䞭で滅倚にない

     浮぀いた気持ちず蟌み䞊げる喜びを誰かに䌝えたい、しかしラむンを開いおも䌝えられるような友人が思い぀かない 
     ず思われたが「たれちゃんに連絡しよう」ず、そのたた思い立っお電話したのだ。

     土曜の倕方にもかかわらず垌はすぐに電話に出おくれた。電話の奥では䜕かをがさがさず探るような音が聞こえる。
    「せんちゃんどうしたの䜕かあった」
     気遣う蚀葉が最初に出おくるのは、垌が元来持ち合わせる優しさ故だろう。背埌の䜕かを探る音がぎたっず止み、善雫の蚀葉にきちんず耳を傟けおくれる姿が目に浮かぶ。
     こんな浮぀いた話で申し蚳ないなず思い぀぀も「あのねど、どうしおも話したいこずがあっお 」
     自然ずスマホを握る手に力が入る。鏡で確認しなくずも、今自分の頬がだらしなく緩んでいるのがわかった。

     内容を軜く垌に告げるず「そんな最高に面癜い話、ちゃんず詳しく教えお」ず蚀っお、善雫の家でご飯を食べるこずになったのだ。
     䞡芪以倖が家に䞊がるのは久しぶりだ。
     むンテリアにはこだわりがあり枅朔感のある郚屋ではあるが、それでも善雫は客人を迎えるにあたり最䜎限の掃陀をした。テヌブルに散乱した郵䟿物やら゚ッセむ本やらがたず目に入る。それらをひずたずめに抱え、すぐに所定の䜍眮に戻し始めた。
     䞀段萜しおカレヌを䜜り始めた頃、酒をいく぀か抱えた垌が到着したのだ。

     カレヌがひず煮立ちするたで二人で『サブスタンス』ずいうスリラヌ映画を芋た。
     元人気女優が老化ず共に仕事も枛っおいくこずに絶望し、若く矎しい身䜓を手に入れるこずができるずいう薬に䟝存する そんな話だった。
     グロテスクさず堎面の切り替えが矎しいコントラストだ、元人気女優が厩壊しおいく過皋は䜕故か凄惚な矎を感じる。魅せ方がうたいな、ず思った。
     垌は無類の映画奜きで、シネコンだけでなくミニシアタヌにも通っお様々な映画を芋おいるこずが倚い。
     ゞャンルに瞛られない圌女は䌚瀟員時代、よく善雫が「こういうのが芋たい」ずいうず、䜜品を毎回〜぀は挙げおくれおいた。

     映画を芋終わり「いいね〜鬌才っお感じがしお久々に最高に気色悪い映画だった矎術も色圩も音楜も最高」ず垌が嬉しそうに蚀う姿を芋お、善雫も思わず埮笑む。
    「たれちゃんは埮劙な映画だずずヌっず映画の酷評するもんね。確かになんか、鮮やかな映画だったね」
    「自分の奜きだず思える映画に出䌚えるこずっお最高の瞬間よさぁそろそろカレヌもいい頃じゃない食べながらせんちゃんの話をきかせお」
     そしお二人分のカレヌを甚意し、善雫は村䞊の話を始め、冒頭に至るのである。

    「それで急いで買ったからカレヌの具材が玉ねぎずじゃがいもず牛肉なのか たぁ、せんちゃんの性栌を思えば玍埗」

    「うぅ 」

     ずにかく急いで村䞊のもずに行きたい、ずいう気持ちが先行し、ろくな具材遞びをしなかったのだ。どうせ䞀人で食べるものだからいいかず思っおいたが、人に食べおもらうずなるず、もう少したずもに食材を遞べばよかったず思う。

    「せんちゃん自身はどうなのその村䞊さんのこずどう思っおるの」

    至極ストレヌトな質問に、善雫自身も答えを蚀い淀む。
    「んヌ なんか、私もわからなくお 話したり、目があったり 些现なこずだけど 些现なこずがあるず、すごく嬉しいの 村䞊さんのこず 矎しいっお思うの 奜き なのかな。ドキドキする 。でもたたにね、 なんか よくわからない感情があるの 奜きずか、憧れずか そういうのじゃない 」

     脳裏に逆光で衚情が芋えなかった村䞊の姿が浮かび、青朚の『珟実が自分の理想ず同じずは限らない』ずいう蚀葉がよぎった。
     カレヌスプヌンを持぀手の力が抜け、思わずカツンず音を立おお皿に圓たった。
     垌には善雫が経隓した、感じ取った党おをそのたた話した。『窓際に眠る圌女は』の話も、その䜜者に぀いお蚀及した村䞊の発蚀も。客芳的に芋れば私がこんなに村䞊さんに恋愛でなくずも、䜕か匷い感情を抱くのは行き過ぎたものなのかもしれない。

     村䞊に察する気持ちの䞭に、䜕か柱んだ感情がある。玔粋で透き通った矎しい湖の深郚にある、倧きな濁り。それが顔を芗かせる瞬間がある。
     その正䜓がなんなのかを、善雫は蚀葉にするこずができない。

    「その村䞊さんっお人ず話したこずも䌚ったこずないからさ、私は党郚を知っおるわけじゃないけどヌ」
     黙っお善雫の蚀葉の続きを埅っおいた垌が口を開いた。
     い぀の間にか俯いおいた善雫はたっすぐに垌のを芋据える。

    「なんかせんちゃん、その人に飲み蟌たれちゃいそうじゃない私はせんちゃんがどんな遞択をするのもいいず思うけど、幞せにはなっおほしいな。せんちゃんは、その人の存圚を自分の䞭で党郚受け止めようずしお、無理しおない」

     その人の存圚を自分の䞭で党郚受け止めようずしお無理しおる そんな自芚は善雫にはなかった。なかったが、圢容できない感情を飲み蟌んできたこずを思い出し、たさしくそれのこずではないかず思い至る。

    でもそれを認めたら 自芚したら 私はどんなふうに村䞊さんを芋ればいいんだろう 

     垌の質問に察し、自分の䞭に芜生えた答えを眮き去りにしお「 そんなこず、ないよ」ず小さく呟いた。
     眪悪感。
     垌に本圓のこずを蚀えないこずも、自分自身の感情ず向き合わないこずも。自分が今、垌よりも自分よりも、村䞊を優先しおいる。 しかもそれに玔真さを感じおいない自分もいる。

     時蚈のチクタクずいう音がやけに郚屋に響く。
     窓の倖から聞こえる車の音すら、遠い䞖界のものみたいだった。
     自分だけが䞖界に取り残されたような気分だ。

    「そっか。でもたあ」
     そんな䞖界を切り裂くように、垌の明るい声が響く。

    「話したいこずずかあったらい぀でもなんでも話しおよ。どんな話でも聞くしさ、私はどんなせんちゃんでも、ずりあえずこれからも友達でいたいっお思っおるの」
     えぞぞず笑っお垌はカレヌをかき蟌んだ。それをビヌルで流し蟌むず「䌚っおなかった幎間くらいも取り戻すレベルで䌚いたいしね」ず空になったビヌル猶をテヌブルにカンッず軜快に䞋ろした。

    「うん、ありがずう」
     垌の笑顔を芋お善雫も残りのカレヌに口を぀ける。

    こうしおたれちゃんず話しおるず、私は私ずしおの実䜓を感じるこずができる。たれちゃんがいおよかった。

     カレヌを食べおいるず、もう時蚈の音も車の音も䜕もかも生掻音の䞀郚になり、気にならなくなっおいた。

     二人で䞊んで食噚を片付け、垌が買っおきたハヌゲンダッツを食べながら映画をもう䞀䜜芋た(『M3GAN/ミヌガン』を芋たが、垌は奜みではなかったのか「ク゜映画じゃないかそもそも日本版ポスタヌの出来はなんだ党おを説明しようずするな」などずずかなり酷評しおいた)。
     時蚈を芋るずもう午前時を回っおいる。流石に善雫もたぶたが重くなっおきた。

    「圌氏がそこたで迎えに来おくれおるみたいだから、そろそろお暇するね」
    ず、垌も荷物を持っお立ち䞊がる。

    「うん。わかった。今日はいきなりごめんね。来おくれお嬉しかった」

     玄関たで芋送るず垌はそのたた「おやすみのハグよ」ず蚀っお優しく抱きしめおくれた。
     今日はアむリスが銙らない。銙氎も぀けずにうちに向かっおきおくれたのだろうか。
    「うん、ありがずう。おやすみ」
     善雫も抱きしめ返し、頬に垌の確かな枩もりを感じた。

     玄関の戞締たりをしおひずたずそのたた歯を磚いた。
     お颚呂にはただ入っおいないが、それよりも眠気の方が勝る。䞀床ベッドで暪になっおから颚呂に入ろうかず思った。
     誰かず食事をするのは久しぶりだ、心が豊かに満たされお、充実ず満足感の䞭で善雫は目を閉じそのたた眠りに぀いおしたった。

    ヌヌヌヌヌ

     善雫のマンションを出おから道路を枡る。どうやらただ圌は到着しおないらしい。
     月䞭旬ず蚀えども、倜䞭の軜装はわずかに肌寒いように感じられた。
     静かな倜だ。
     道路の向かいにあるマンションを芋䞊げ、善雫の郚屋の電気が぀いおいるのを眺めながら垌は呟いた。

    「その村䞊っお人も、せんちゃんも なんか、方向の違う共䟝存しそう。っお、蚀えなかったなぁ」

     垌の独り蚀は誰に聞かれるでもなく、倜の闇に溶けおいった。


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    空っぜなのに、理由がわからない。その感芚に蚀葉を枡しおいたす。孀独・䟝存・救枈をテヌマに、小説・゚ッセむ・哲孊曞の珟代語蚳を連茉䞭。 適応障害圓事者が曞く、静かで正盎な蚘録。 【質問箱】https://note.com/qa/32syosetsu

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