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Photo byhidemaro2005

愛した人(短編小説 2)

    1976blue

    (あらすじ→ 5年前に亡くなった恋人、隼人を美紀は未だに忘れられない。かつて隼人が住んでいた住居が空き家になってるのか、既に新しい住人がいるのか、ずっと気になっていた。好奇心を抑えきれず、訪れてみると……。)




    心臓がはち切れそうだった。
    鼓動が激しさを増して、息苦しい。
    予想外の出来事に何だか怖くなり、逃げ出したいと思いながらも、体が固まってしまって動けない。
    最早、隼人以外の何者にも見えない男性と目が合った。途端に、彼の顔に笑みが広がった。

    (えっ!? 私を知ってるのかしら?) 

    隼人なら当然だ。
    でも、彼は隼人のそっくりさん?だから、知ってるわけがないだろう。
    男性は鍵を外すと、アルミサッシの窓をスルスルと開けた。

    「美紀、なんでそんな所につっ立ってるの?」

    「えっ?!」

    「ずっと覗いてたでしょう? まるで泥棒みたいだよ」
    男性は可笑しそうに笑った。

    (私の名前を知ってるなんて、やっぱり隼人?
    イヤ、だって彼は……)

    笑った時の柔和な目元と声が、隼人そのものだ。
    この現象を、どう捉えたらいいのだろう?

    (私、夢を見てるの? 幻? 目の前にいるのは
    隼人の幽霊?)

    「いつも予告なしで合鍵で入ってくるのに、今日は何で庭から覗いてたの?」
    男性は無邪気な笑顔を向けてくる。

    「えっ、と。特に意味はなくて、何となく……」
    美紀は適当に言い繕い、もじもじした。

    「とにかく、入っておいでよ」

    「うん……」

    ひとまず、玄関へと向かう。
    頭が混乱している。少し落ち着かせないといけない。

    引き戸を開け、中に入る。
    まだ、胸がドキドキしている。
    ここに来るのは5年ぶりだ。
    ラック棚に、隼人が美紀のために用意している花柄のスリッパがあった。

    (まだ、あったんだ)
    スリッパを取り出し足を入れると、ゆっくりとした足取りで居間へと向かう。
    夢を見ているようで、体がふわふわしている。


    居間のドアを開けると隼人? が立ち上がり、
    近づいてくる。
    えっ?! っと思うや否や、正面から抱き締められた。

    「美紀、会いたかったよ」

    隼人の胸に抱きすくめられながら思った。
    声も匂いも温もりも、隼人そのものにしか思えない。
    美紀は一時、目眩に襲われる。

    (もう、夢でも幻でもいい。夢なら覚めないで……)


           つづく







     
     
     
    人生の折り返し地点を過ぎ、今後 ますます後悔しない選択をしていきたい。愛読書は渡辺淳一、連城三紀彦の作品。知、意より情が大事。空虚より傷心を望んでる。過去に自費出版しましたが、なかなか売れず、在庫山積み状態です。趣味でベリーダンスを始め、定期的に発表会やイベントで踊ってます。

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