異世界に陰陽師として召喚されたが、戦えないので空気だけ整えて帰りたい。〈1.序〉
【あらすじ】
東京で就職して一年目の渡月由良は、ゴールデンウィークに実家の京都に帰省していた。友人達との肝試しの下見で訪れた廃神社で、空間が剥がれ落ちたような"裂け目"を見つける。その異様な光景に惹かれて思わず手を伸ばしたその瞬間——由良は、江戸時代の雰囲気を残す"もう一つの京都"に迷い込んでいた。そこは、人と妖怪が共存している世界。式神を扱う白虎大社の白様と百吉に支えられ、自身にも式神を与えられる。元の世界に帰る術も分からぬまま異質な力を手にしてしまった由良。早く帰りたいと願う彼を、この異世界はどこへ導くのか。
俺はその日、山の奥の廃神社に来ていた。
東京で就職し、最初の大型連休であるゴールデンウィークに京都の実家に帰省していた。
久し振りに地元の友人ら三人と連絡を取り、この連休のひとときを満喫する事になっている。
学生気分が抜け切らないノリで、肝試しでもしようじゃないかと、廃神社に行く事になってしまったのだ。
車の免許を取ったものの、就活から今に至るまでほとんど運転をしていない。
そんなペーパードライバーが、夜中に山で運転するなんて論外だ。だからこうして、昼間に下見も兼ねて来ている。
廃神社の鳥居は見事に色褪せており、木々が鬱蒼と茂っている。カラスの鳴き声が辺りに響き、少し湿った風が吹いていた。
——明るいうちに確認しておこう。夜中に初見は怖すぎる。
正直、肝試しなんかやめた方が良いと思いつつ、社殿の裏側へと回った——
バリ、バリ……
不意に、何かが剥がれ落ちるような音が聞こえてきた。
咄嗟に古びた社殿を見上げる。崩れてきたら大変だ。だが、どうやらその心配は無さそうだ。
良く、耳を澄ませてみる。
音はどうやら、背後の林の方から聞こえてくるようだ。
背筋が、ぞわり、とする。おそるおそる振り返る。
——何だ、あれ。
音のする方へ、生い茂った草を掻き分けて進んで行く。
——バリ、バリ……
そこには、"亀裂"があった。
空間に、だ。
"亀裂"は蜘蛛の巣状に広がっており、その中心からバリバリと音を立て、剥がれ落ちていたのだ。
触ってはいけない——という考えとは裏腹に、興味が勝って右手が既に伸びていた——
バリバリバリバリ……!
ただ触れただけなのに、轟音を立てながら亀裂が勢いよく崩れていった。
——うわぁ……っ……
一瞬、向こう側に建物らしき物が見えた気がしたが、あっという間に目の前が強烈な光に包まれた——
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