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エフェメラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エフェメラ(ephemera)は長期間の使用と保存を考慮しない一時的な筆記や印刷物。しばしば収集の対象となり、その例としては、しおり、グリーティングカード、手紙、写真、葉書、ポスター、チケット、パンフレット、リーフレット、チラシ、マッチ箱、商品ラベル、包み紙(包装紙)、などが挙げられる。

概要

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図書館情報学におけるエフェメラとは、役割を終えたら捨てられる一枚ものの印刷物や冊子状でも薄くて書籍と呼べるほど厚くないもの等を指す言葉である。「短命資料」[1][2]「一過性資料」[3][4]などと訳される。印刷されていない手紙や写真は含まれず、そちらは手稿(マニュスクリプト)やタイプ原稿(タイプスクリプト)などと呼ばれる。大学図書館、国立図書館、博物館、公文書館などでは歴史的資料としてエフェメラを収集・整理・保存する場合がある。

ギリシャ語で1日しか存在しえないものを指す言葉がエフェメラという言葉の起源である。エフェメラ(ephemera)は名詞で、ephemeron および ephemeros の複数中性格にあたる。ギリシャ語および近代ラテン語で古くは epi = on, hemera = day を意味し、カゲロウなどの短命な虫、花、その他の1日ないし短期間のみ存在するものを指すようになった。ちなみに英語のephemerisやフランス語のéphémérideは、日記・日誌・日めくりの意味から天体暦を指す言葉になっている。英語ではカゲロウと区別するため、修飾句を添えてプリンテッド・エフェメラと称したり、形容詞形を使ってエフェメラル・マテリアル(ephemeral materials)と呼んだりしたが、次第に名詞一語のみで通用するに至った。

史学資料論の文脈では、「一紙文書」や「単葉文書」に相当するものとされることがある[5]。もともと文書館は図書館と違って冊子に綴じてない書類が多いからか、薄さ(ページ数の少なさ)についての言及を欠く定義がなされ、アメリカ・アーキビスト協会では「通例は印刷された文書の資料で、特定の限定された目的のために作成され、一般的には使用後に廃棄されるよう図られたもの」[6]と定義された。しかしなおもエフェメラを論じる者の間では、まずエフェメラが定義し難く、捉えどころのない呼称であること自体が、議論の種となっている[7][8][9]。

印刷物としてのエフェメラについては、ジョン・ジョンソン(パピルス学者)(英語版)のコレクション[10]をタイポグラフィ(活字)の観点からまとめたジョン・ルイス(タイポグラファー)(英語版)著『プリンテッド・エフェメラ(印刷されたエフェメラ)』(1962)[11]が記念碑的書物となった。1975年にルイスはモーリス・リッカーズらとイギリスにてエフェメラ協会を結成し、1980年にはアメリカ・エフェメラ協会も設立された。こうしてエフェメラは収集趣味にとどまらず学問研究の対象となり、その集成がリッカーズによる『エフェメラ百科事典』(2000)[12]に見られる。

近年は、エフェメラル・メディアという概念に拡張され、映画・テレビ・ウェブ動画などに関する映像文化論で用いられている[13]。またSNOWやSnapChatなど、一定時間経過すると投稿が消滅する「エフェメラルSNS」(ephemeral app)が2016年頃から話題となり、これらは日本では「消える系SNS」とも呼ばれる。

関連図書

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脚注

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  1. ↑ 木寺清一『洋書事典』明治書院、1975、p.256
  2. ↑ 日本図書館学会用語辞典編集委員会編『図書館情報学用語辞典』丸善、1997、p.172「パンフレット」の項目中にて「簡易資料,または短命資料(ephemeral)に分類されることがある」と原語を形容詞形にして使用。
  3. ↑ 丸山昭二郎・高鷲忠美・坂本博監訳『ALA図書館情報学辞典』丸善、1988、p.8「(1) 一時的に関心を集め価値を持つ資料で,主としてパンフレットまたは切り抜き資料からなり,ふつうは限定された期間バーチカル・ファイルに保管される.(2) 過去のものとなった上記の資料で,文学的・歴史的重要性を獲得するに至ったもの.」
  4. ↑ エドワード・P.アドコック編・木部徹監修・国立国会図書館訳『IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則』第4章「6  スクラップブックとエフェメラ」、シリーズ本を残す、日本図書館協会、2003、p.57
  5. ↑ 和田光弘「18世紀アメリカに関するエフェメラ――ワシントン・受領証・手形――」『名古屋大学文学部研究論集 史学』2014年3月
  6. ↑ リチャード・ピアス=モーゼス(英語版), A Glossary of Archival and Records Terminology. The Society of American Archivists, 2005, p. 149.
  7. ↑ Martin Andrews, The Importance of Ephemera. In: S. Eliiot and J. Rose (eds.) A Companion to the History of the Book. Blackwell Companions to Literature and Culture. Wiley-Blackwell, Oxford, pp. 434-450.(2007, ISBN 9781405127653)
  8. ↑ Henry Raine, The Importance of Ephemera. In: S. Eliiot and J. Rose (eds.) A Companion to the History of the Book, 2nd Edition. Blackwell Companions to Literature and Culture. Wiley-Blackwell, Oxford, pp. 633-644.(2019, ISBN 9781119018179)
  9. ↑ 北村智仁「浮上するエフェメラ研究の素描:絶えず遠ざかる敷居の共有」『The KeMCo Review』04「特集 プリンテッド・マター」、慶應義塾ミュージアム・コモンズ、2026年4月
  10. ↑ データベース The John Johnson Collection : An Archive of Printed Ephemera
  11. ↑ Printed Ephemera: The Changing Uses of Type and Letterforms in English and American Printing, John Lewis, Ipswich, Suffolk, Eng.: W. S. Cowell, 1962
  12. ↑ The Encyclopedia of Ephemera: A Guide to the Fragmentary Documents of Everyday Life for the Collector, Curator, and Historian by Maurice Rickards et alia. London: The British Library; New York: Routledge, 2000.
  13. ↑ 佐々木友輔「地方映画史研究のための方法論(36)パラテクスト分析(4)ポール・グレインジによるエフェメラル・メディア論 」2024年9月6日

参考文献

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  • Printed Ephemera: The Changing Uses of Type and Letterforms in English and American Printing, John Lewis, Ipswich, Suffolk, Eng.: W. S. Cowell, 1962
  • The Encyclopedia of Ephemera: A Guide to the Fragmentary Documents of Everyday Life for the Collector, Curator, and Historian by Maurice Rickards et alia. London: The British Library; New York: Routledge, 2000.
  • Fragments of the Everyday: A Book of Australian Ephemera /Richard Stone (2005, ISBN 0-642-27601-3)

関連項目

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外部リンク

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