構造調整屋——アーキテクトの定義からこぼれ落ちた仕事について
この記事が語ること
役割として定義されていないが、放置できない領域がある。
それを引き受けるために、「構造調整屋」という肩書きを付けた理由を書く。
現場には「名前のない仕事」が存在する
どの現場にも、役割として定義されていないのに、放置すると確実に破綻する領域がある。
- 設計書にも職種定義にも書かれない
- 担当者も明確に決まっていない
- しかし、誰かがやらなければ構造は壊れる
それは「誰が悪いか」という話ではない。
前提・意図・判断の位置・その他の要因が、いつの間にかズレていたという種類の問題だ。
アーキテクトの定義が拾いきれていない領域
一般に、アーキテクトは未来の構造を設計する役割として語られる。
- 技術選定
- アーキテクチャの全体構成
- トレードオフの判断
- 長期的なシステムの整合性
どれも重要だ。
アーキテクトの定義についてはこちらの記事も参照いただきたい。
だが現場で実際に壊れるのは、設計そのものよりも、設計が機能し続ける前提のほうである。
例えば、
- 前提が共有されないまま消えていく
- 意図が説明されないまま再利用される
- 判断軸が曖昧なまま議論が積み重なる
- 負債が理由を失ったまま放置される
これらは、設計書には現れにくい。
しかし、放置すれば確実に現場を壊す。
これは「アーキテクトにしかできない仕事」ではない
誤解してほしくないことは、この領域は、アーキテクトにしか扱えない専門領域ではない、ということだ。
また、誰かが意図的に避けてきたわけでもない。
ただ、役割として定義されず、担当が決まらず、既存の肩書きにも当てはまらず、そのまま空白として積み上がってきただけだ。
自分は、その空白に起きた問題を、その都度現場で引き受けてきたにすぎない。
「構造調整屋」という名を置いた理由
この場合、自分がやってきたことは、未来を描くことではない。
- 前提のズレを見つける
- 判断が止まった場所を掘り起こす
- 負債を管理できる状態に戻す
- 意図が消えないように支える
そして、対象は技術だけではない。
前提、意図、破綻、負債、判断、文脈――
未来の構想ではなく、現在の構造そのものを扱っている。
それを自分の責任として引き取り続けた結果、それが職能として積み重なっていった。
この職能を説明するために、既存の肩書きでは足りなかった。
だから「構造調整屋」という名を置いたのだ。
役割が曖昧なままだと、誰も責任を持たない。
既存の肩書きに当てはめようとすると、必ず誤解が生まれる。
- アーキテクトの一種なのか
- PMの延長なのか
- テックリードの別名なのか
どれも違う。
扱っているのは、設計をする仕事ではなく、設計が壊れないように“今ある構造”を調整する仕事だからだ。
空白を埋める肩書きとして
構造調整屋とは、アーキテクトの定義に含まれないまま、現場で確実に必要とされてきた“判断と前提の調整領域”を扱うための肩書きだ。
専門性の主張ではない。
定義の拡張でも昇格でもない。
ただ、空白を空白のままにしないための呼び名だ。
特別なことなどなく、自分事を積み重ねた結果が、この名前には込められている。
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