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平成筑豊鉄道、バス転換は本当にできるのか。紛糾の協議会、議事録を読み解く

廃止時期の決定を先送り

平成筑豊鉄道のバス転換計画が難航しています。一般路線バスを引き受ける事業者が見つからず、自治体などによる自家用有償運送を実施する方針となりました。2028年度末とする鉄道の運行終了案も、準備不足を懸念する声が相次ぎ、決定を先送りしました。

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バス転換を決定

平成筑豊鉄道は、福岡県内で伊田線、糸田線、田川線の3路線49.2kmを運行する第三セクター鉄道です。経営悪化を背景に、沿線自治体などで組織する平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会が、鉄道の存廃を協議してきました。

2025年11月には、鉄道の上下分離、BRT(バス高速輸送システム)、路線バスへの転換という3案の比較資料が公表されました。今後30年間の赤字累計額は、上下分離案が439億円、BRT案が148億円、路線バス案が110億円と試算されています。

これを受け、2026年3月24日には、協議会が路線バス転換を決議しました。投票には委員27人のうち12人が棄権し、公表された有効投票結果は、路線バス案が8票、BRT案が4票、上下分離案が2票でした。

ただし、この段階で決まったのは、鉄道を廃止してバスに転換するという大きな方向性だけです。具体的なルートやダイヤ、運行事業者、鉄道の廃止時期などは決まっていませんでした。

平成筑豊鉄道

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代替バスは4系統

2025年11月に示された路線バス転換案は、京築線、筑豊線の特急号・各駅停車号、田川豊津線の4系統で構成されています。いずれも仮称で、一般道路を中心に走行し、一部で鉄道の線路敷を転用したバス専用道を設ける計画です。

平成筑豊鉄道代替バス
画像:福岡県

筑豊線は直方駅を起点とし、赤池、金田や田川市内などを経由します。速達性を重視する特急号と、現在の鉄道駅付近を細かく結ぶ各駅停車号を組み合わせます。

特急号は直方駅から油須原までを大型バスで運行し、13か所に停車します。各駅停車号は直方駅から田川高校前までを小型バスで運行し、26か所に停車します。

京築線は、油須原から行橋駅に至る路線です。小型バスを使用し、13か所に停車します。

田川豊津線は、金田から田川伊田駅、香春町役場を経由し、みやこ町の豊津支所までを結びます。中学校・高校への通学需要に対応するため、大型バスを使用する計画です。

渋滞や道路幅の問題に対応するため、人見~赤池間の約0.8km、上伊田~柿下温泉口間の約2.3km、油須原駅付近の約0.3kmで、線路敷をバス専用道として整備する計画も含まれています。

平成筑豊鉄道代替バス
画像:福岡県

 

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2028年度末の鉄道運行終了案

バス転換の決定から約半年後となる2026年9月8日、第11回協議会が開かれました。県が示した議題は、今後の協議スケジュール、地域公共交通計画の骨子、バス事業の運行形態という3つでした。会議の議事概要と資料が、9月25日に公表されました。

県が提示したスケジュール案によると、2026年度に地域公共交通計画を策定し、2027年度に具体的な運行内容を定める利便増進実施計画を策定します。その後、国の補助金などを活用して準備を進め、2028年度中にバスの運行を開始し、同年度末(2029年3月)に鉄道の運行を終了します。

ところが、このスケジュール案について、沿線自治体から疑問が相次ぎました。田川市がバスの具体的な運行開始時期を尋ねたところ、県側はまだ決まっていないと回答。2028年度中という時期は、「最速の場合」という見込みを示していると釈明しました。

バスのルートもダイヤも未定

バスの運行開始には、ルートやダイヤの決定に加え、車両の購入、営業所や車庫の整備、運転手の確保など、多くの準備が必要です。しかし、県が示したスケジュールには、これらの作業をいつ進めるのかが記載されていませんでした。

事業主体や運行事業者も未定で、具体的な準備を「誰がやるのか」という、根本的な部分が決まっていません。沿線自治体からは、こうした状況で2028年度中のバス運行開始を目指すことに懸念が示されました。

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バス転換に3年

議論のなかで、田川市は、バス会社での勤務経験がある平成筑豊鉄道の河合賢一社長に、運行準備に必要な期間を尋ねました。

河合社長は、過去に自ら試算した際、約3年が必要という結論に至ったことを明らかにしました。意思決定や運転手の訓練なども含まれていますので、実務的な準備期間は2年程度です。

今回のスケジュールでは、実務的な調整を約1年半で終える必要があり、一般論としてきわめて困難との見解を示しました。ただし、今回の計画の実施可否を判断するだけの情報は持っていないとも付け加えました。

JR九州バスの常務は、日田彦山線BRTの事例を紹介しました。同線では2020年7月にBRTでの復旧を正式決定し、2023年8月28日の運行開始まで約3年を要しました。

日田彦山線の場合は、JR九州が事業主体となり、JR九州バスが運行を引き受ける体制が最初から決まっていました。それでも、車両の調達や運転手の確保に加え、運賃の設定、ICカードの導入、バス停設置に伴う警察との協議など、多くの実務が必要だったといいます。

これに対し、平成筑豊鉄道のバス転換では、事業主体も運行事業者も決まっていません。JR九州バス常務は、誰が中心となって準備を進めるのかを早期に決め、専従の体制を整える必要があると指摘しました。

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補助金の申請期限も迫る

スケジュールを巡っては、国の補助金も問題となりました。

県は、社会資本整備総合交付金と「交通空白」解消等リ・デザイン全面展開プロジェクトの補助金を組み合わせて活用する方針を明らかにしました。しかし、後者の補助金を申請するには、事業の実施主体を決めておく必要があります。

九州運輸局福岡運輸支局は、2027年度分の第1次公募に申請するのであれば、2027年3月までに必要額を算出しなければならないと説明しました。事業主体が決まらなければ、補助金の申請にも支障が生じます。

さらに、田川市によると、沿線自治体が2027年度予算で必要な資金を確保するには、2026年11月までに事業費を見積もり、予算要求する必要があります。事業費の算出が遅れれば、2027年度からの準備にも影響します。

鉄道の廃止時期を再検討へ

協議が進むにつれて、2028年度末という鉄道の運行終了時期について、見直しを求める意見が相次ぎました。

河合社長は、鉄道の廃止時期はバスの準備状況に合わせる必要があると説明しました。鉄道の終了からバスの開始まで空白期間が生じれば、高校生などの通学に支障をきたすためです。

一方、県は、鉄道とバスを一定期間並行して運行する案にも言及しました。利用者が鉄道の運行中にバスに乗車し、経路や所要時間を確認できるためです。

行橋市は、並行運行の可能性があるならば、2028年度末に鉄道の運行を終了するという記載を削除すべきだと主張。田川市も、運行終了時期を改めて協議するよう求めました。

県は、鉄道の運行が1年延びれば、沿線自治体の財政負担も増えるとの懸念を示しました。これに対し、田川市は、実現できない日程を発表してから延期した場合の混乱を指摘。必要な準備を積み上げて、実行可能な時期を決めることを求めました。

最終的に県は、2028年度末に鉄道の運行を終了するスケジュール案を撤回しました。バスの運行開始と鉄道の運行終了の時期については、改めて検討します。

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年間73万人の利用目標

続いて協議会では、2027~2031年度の5年間を対象とする地域公共交通計画の骨子について議論しました。

県は2025年の試算に基づき、京築線で年間18万人以上、筑豊線の特急号・各駅停車号で52万9,000人以上、田川豊津線で2万3,000人以上の利用を目標と設定しました。全体では年間73万2,000人以上となります。

沿線市町村の財政負担額については、京築線が年2,700万円以下、筑豊線が9,400万円以下、田川豊津線が800万円以下という目標を掲げました。

しかし、具体的なルート、本数、運賃が決まっていない段階で、利用者数や収支の目標だけを先に設定することについて、沿線自治体から疑問が示されました。

県は、今回の目標値は2025年のシミュレーション結果に基づくものであり、今後の協議によって運行内容が大きく変われば、目標値も変更すると説明しました。

一方、九州運輸局は、試算された財政負担額は、鉄道の方向性を決める際に示された数値にすぎず、沿線自治体がその負担を望んでいるとは限らないと指摘。実際の負担額は、自治体がどこまで財政負担できるかを協議したうえで、改めて設定する必要があるとの認識を示しました。

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住民への意見募集

地域公共交通計画については、住民への情報提供も論点となりました。

県は、地域公共交通計画を策定した後、地域公共交通利便増進実施計画を作成する予定です。具体的なバスのルートやダイヤなどは、実施計画で示されます。そのため、交通計画のパブリックコメントを実施する時点では、ルートやダイヤを提示しない見通しです。

しかし、北九州市立大学の内田晃副学長は、住民が最も関心を持つのは、バスがどこを通り、何本運行し、いくらかかるかという点だと指摘しました。少なくともルートや本数などの案を示したうえで、住民から意見を募る必要があるとの考えを示しました。

田川市も、このスケジュールでは、住民は具体的な運行内容が分からない段階で、意見表明をしなければならなくなる、と疑問を示しました。

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バスの運行形態

最後の議題となったのが、バス事業の運行形態です。

県は2025年8月から2026年1月にかけて、県内外の交通事業者9社に聞き取りを実施しました。

その結果、一部路線のみを担当すること、自治体からの委託事業とすることなどを条件に、運行への協力を検討できるという回答は得られました。しかし、通常の路線バス事業として、運行を一手に引き受けられる事業者は見つかりませんでした。

そこで県は、道路運送法78条に基づく「自家用有償旅客運送」を前提として、検討を進める方針を示しました。

4条運行と78条運行

通常の路線バスは、道路運送法4条に基づく一般乗合旅客自動車運送事業です。いわゆる「路線バス」で、国の許可を受けたバス会社などが事業主体となり、緑ナンバーの車両を使用して運行します。

これに対し、78条に基づく自家用有償旅客運送は、通常のバスやタクシーでは地域の移動手段を十分に確保できない場合に、市町村やNPOなどが主体となって運行する制度です。白ナンバーの自家用車両を使用し、道路運送法79条に基づく登録を受けて運行します。

バスの運行形態、4条と78条
画像:福岡県

4条運行ではバス会社が運行責任を負いますが、78条運行では自治体などが運送主体となります。ただし、バス会社に運行管理や車両整備などの協力を求めることもできます。

大きな違いの一つが、運転手の資格です。4条運行では車両に応じた二種免許が必要ですが、78条運行では、二種免許のほか、一種免許と国土交通大臣が認定する講習の修了など、所定の条件を満たした人も運転できます。大型バスであれば、大型一種免許と必要な講習で対応できます。

このため78条運行では、二種免許を持たない人にも採用対象を広げられます。ただし、運転手の資格要件が緩和されても、実際に必要な人数を採用し、訓練する必要があることに変わりはありません。

運賃の制度にも違いがあります。4条運行では、一般乗合バスの運賃として法令に基づく認可や届出の対象となります。78条運行では、運送に要する費用を踏まえ、営利を目的としない合理的な対価を設定します。運行に利用できる補助制度も異なります。

今回の計画では、ICカード決済やバスロケーションシステムの導入も想定しています。運賃や定期券、既存の路線バスとの乗り継ぎを含め、具体的なサービスは今後の運行計画で決めることになります。

バスの運行形態、4条と78条

バスの運行形態、4条と78条
画像:福岡県

 

運転手不足という難題

今回の協議会に参加した、沿線バス事業者の太陽交通は、78条運行を支持する考えを示しました。

同社によると、乗務員の不足と高齢化が続いており、大型二種免許を持つ運転手を募集しても、必要な人数を確保できていない状況が続いています。

こうした状況を踏まえ、78条運行ならば、二種免許以外の資格を持つ人にも募集対象を広げられるため、業界全体で協力しやすくなるとの考えを示しました。

78条運行を前提に検討へ

会合では、県内9社への聞き取りだけで一般路線バスの可能性を断念するのは早いのではないかとして、全国から運行事業者を募集するなど、4条運行の可能性を引き続き探るよう求める声もあがりました。

これに対し、県は、4条運行が原則であることは認めつつ、これまでの聞き取りでは引き受ける事業者が見つからなかったため、78条運行を前提に検討せざるを得ないと説明しました。

九州運輸局は、78条運行を始めるには、既存の交通事業者による運行が難しいことや、事業者への影響がないことなどについて、適切な協議の場で確認する必要があると説明しました。今回の協議会で方針を決めるだけでは、直ちに78条運行を開始できるわけではないと、念を押した形です。

最終的に協議会は、実際に運輸局から許可を取得するためのステップが別途必要であるという前提のもとで、78条運行を前提として検討を進めることで合意しました。

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社員の離職問題

バス転換の準備が長引くなか、平成筑豊鉄道の社員の処遇も課題となっています。

河合社長によると、同社は社員との個別面談を実施し、鉄道業界への転職を希望する社員、地元企業への就職を希望する社員など、それぞれの意向を確認しています。バス転換後の運行事業者への就職を希望する社員もいるということです。

一方、鉄道の運行終了時期が決まっていないため、採用に関心を示す企業があっても、具体的な入社時期などを調整できない状況です。

ここで問題となるのが、鉄道の廃止まで、運行に必要な社員を確保できるかという点です。

鉄道の運行終了が先送りされる一方で、社員の離職が先行すれば、列車の運行や車両・施設の保守に必要な人員が不足しかねません。バス転換の準備が整うまで鉄道を走らせる方針であっても、社員が先に退職してしまえば、鉄道の運行継続自体に支障が生じるおそれがあります。

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本当にバス転換できるのか

公表された議事録からは、自治体の協議会会合には珍しく、紛糾している様子がうかがえます。その内容を読み解くと、スケジュールの問題はもとより、そもそも平成筑豊鉄道を本当にバス転換できるのか、という疑問が湧いてくるのを禁じ得ません。

なにより、沿線のバス会社が、引き受けに及び腰です。9月の協議会会合に出席したバス会社は、JR九州バス、西鉄バス、太陽交通の3社のみ。JRは常務が出席しましたが、西鉄、太陽交通は課長クラスで、議事録を読む限り、西鉄の発言はありませんでした。

議事録からも、4条運行による、「一般乗合旅客自動車運送事業」としてのバス転換は、ほぼ不可能であることが明らかになっています。

こうなると、白ナンバーの78条運行によるバス転換にならざるをえませんが、それすら運転士の確保はこれからの話です。二種免許が不要とはいえ、大型バスを運行するのであれば、大型免許は必要です。トラックの運転士も不足するなか、大型免許の運転士を確保するのは簡単な話ではないでしょう。

とはいえ、全長50km近いローカル線を、鉄道として、沿線自治体だけで維持していくことが困難なことも事実です。人口減少時代のなか、予算も人手も足りない状況で、地域の公共交通をどう確保していくか。平成筑豊鉄道が直面している問題は、日本全体が向き合わなければならない難題を映し出しているともいえそうです。(鎌倉淳)

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