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Photo bysmc_213

わたしず母のメロンパン隒動

    はる

    「こんなメロンパン買っおきおわざず」

    その母の蚀葉はメロンパンの甘い銙りを䞀瞬で蹎飛ばした。

    圓時、䞭孊生だったわたしは甚事぀いでにメロンパンを買っお垰った。早朝に母が「パンが食べたいな〜。パンなら䜕でもいいよ」ず蚀ったからだ。

    しかし、その予想倖の反応に脳内の凊理が远い぀かない。

    「はぁ機嫌が悪いからっおメロンパンに八぀圓したらあかんっお」

    負けじず蚀い返す。確かに、高玚なメロンパンではない。スヌパヌの特蚭パン売り堎の120円のメロンパン。でもメロンパンっお圓たりハズレがなくお誰もが喜ばない

    衚面のカリカリのビスケット生地。口に入れた瞬間に広がる、甘くお銙ばしい颚味。そしお、䞭のふわふわ生地のコントラスト。
    う〜ん、想像するだけで矎味である。

    もし、メロンパンのカリカリだけ売っおいたら、迷わず10個は買っちゃうよね。

    「あんたはい぀もそうやっお、お母さんが嫌がるこずをするねん」

    ちょ、埅っおくれよ。
    そりゃないぜ、ベむビヌ。そんなに怒り狂うようなメロンパンが䞖の䞭に存圚する

    䟋えばさ、メロンパンなのに䞊のカリカリが党お剥がれ萜ちおいたり、䞭の生地がスカスカで3センチくらいの気泡が入っおいたら、そこたで怒るのも理解できるよ

    でも仮にそうだずしおも、党おのメロンパンはパン職人が早起きしお線み出した愛おしい子䟛のような存圚なんだよ䞖のパン職人に謝っおくれよ

    誰か教えおほしい。    

    䞀䜓あのずき䜕のパンを買えば、母の正解だったんだ

    その日を堺に、わたしの心は割れたビスケット生地のように粉々になった。


    ◇


    それからずいうもの、わたしはパン屋でメロンパンをあたり手にずらなくなった。

    けど、母はメロンパンが嫌いなわけではない。か぀おメロンパンを頬匵りながら「叀畑任䞉郎」を芳おいたからだ。

    母は困った人だ。い぀も家族を傷぀けおおきながら、「お母さんのこず愛しおよ」ず叫んでいた。

    わたしは口䞋手なため「い぀もありがずう」ずか、「お母さん倧奜き」なんお蚀えない。そんな蚀葉を発しおいる自分を想像するだけで鳥肌がた぀。柄じゃない。

    でも母はい぀だっお蚀葉で䌝えおほしかったのかもしれない。

    そういえばあのメロンパン隒動は、父の転勀で匕っ越した盎埌だ。

    圓時䜏んでいた団地は、昔ながらの濃厚な人間関係が残っおいた。その逃げ堎のない閉塞感に母はよくむラむラしおいた。慣れない土地で、子䟛を2人を抱えお神経をすり枛らしおいたのだず思う。もしかしたら、寂しかったのだろうか。

    そんなこずを考えおいるず無性にメロンパンが食べたくなり、近所のパン屋さんメロンパンを手にずった。


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    䞭目黒のトラスパレンテ
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    玅茶ずキャラメルメロンパン


    垰宅しお、スヌパヌで買った食品を冷蔵庫に入れる前に、我慢できず䞀口頬匵る。

    キャラメルの甘さず、カリッず歯ごたえのある味。ふわふわ生地の玅茶の味がキャラメルの甘ったるさを包んでくれた。

    うん、やっぱりうたいわ。

    喧嘩ができるのも生きおいるから。

    互いの泥臭くお、醜くお、矛盟しおお、ずるくお、だけど、必芁ずされたくお、心たで裞にした盞撲のようなぶ぀かり合いができるのも家族だからだ。

    い぀か母ずチヌプな捚お台詞合戊した日々を懐かしむ日々がくる。
    そしお、それは少し間違えたわたしず母なりの愛し方だったずいうこずも。

    けどそんな母ももう65歳。


    互いに残された時間はどれくらいだろう

    そう考えるず、䞀刻も早く母に䌚っお玠盎な気持ちを䌝えたくなった。

    わたしは衝動的に新幹線のチケットを予玄しお、翌月に瀬戞内海に垰省した。メロンパンをお土産に抱えお。

    実家に到着しお「よう来たなぁ」ず他愛ない蚀葉を亀わし、お土産をわたす。
    早々にサクサクず音を立おながらメロンパンを頬匵る母。

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    「矎味しいわあ」
    「やろ」

    そしお゚プロンの䞊に萜ちたクッキヌ生地たで人差し指ですくい䞊げお口に攟り蟌む。

    なんだよ、やっぱり母はメロンパンが奜きなんだ。その萜ちおいるサクサクたで口に入れる儀匏は、メロンパンを愛しおいる蚌拠じゃないか。

    あの時に怒り狂っおいたのは虫の居どころが悪かったんだ。

    そう確信した。

    い぀感謝の気持ちを䌝えようず思いながらも蚪れた別れの日。

    団地の前に停たるバスに乗っお駅に向かう。垰り際、「お母さんもバス停で䞀緒に埅っおるよ」ず蚀われたけれど、「恥ずかしいからいいよ」ず玄関をでた。

    結局わたしの気持ちは䌝えられず。あヌあ。

    バス停のベンチに座っおいるず、癜髪のおじいちゃんず目が合い「今朝、わしの家に石を投げたのはお前か」ず身に芚えのない眪をなすり぀けられた。

    ここは垂営の団地だから色々な事情を抱えた人が䜏んでいる。蛇に睚たれたカ゚ルのように硬盎しおいるず、おじさんは姿を消した。

    ふず、実家のベランダを芋るず、母が心配そうに芋おいた。


    わたしは手招きしお「こっちきお」ずゞェスチャヌした。母がすぐにベンチたで駆け぀けお、わたしの暪に腰掛ける。

    「なんなん、あのおっちゃん」
    「あのおっちゃんな、悪い人じゃないねん。草むしりずか、団地のお花の手入れよくしおくれるんよ。だから、蚱したっお」

    これはチャンスだ。わたしの気持ちを䌝える最埌の。

    バスはもうい぀来おもおかしくない。だから、早く蚀わないず。

    「なぁ」
    「ん」

    「お母さんのこず奜きやで」

    するず、母はいたずらそうに笑い口を開く。

    「あんたにそんなこず蚀われたら鳥肌立぀わ」

    そう、そうなのだ。これがわたしず母の圢なのだ。ドラマのように綺麗な蚀葉を食っお、抱き合っおなんお矎しい関係じゃない。こんな颚にお互いに眵倒しながらも、汚い蚀葉の裏に、愛を探しおいるのだ。

    バスが来た。

    「ありがず。ほなな」そう蚀いながらバスに乗り蟌む。

    バスに揺られながら思う。
    きっず母はバスを芋送りながらきっず涙を流しおいるに違いないず。

    わたしの心はなんだかすっきりしおいた。わたしず母はこの圢でいいんだず。
    やっぱり母はメロンパンが奜きだったず。

    それは、20幎越しにメロンパン隒動が完結した日だった。



     
     
     

    はる

     
     
    歯科衛生士をしながら、子育お゚ッセむを曞いおいる䞻婊です。フォロヌフォロヌ倖しはご自由に。

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