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【会計×SF_#18】純資産の部 3800

     データストリームの中で踊っていると、これはゲームの世界なのかどうかを宮田は確かめてみたくなった。意識を過去-未来の時系列ではなく、ミクローマクロのレンジに切り替える。今までも細分化された世界は見てきたので、思い切ってマクロの世界に振り切ってみた。数億はある企業が一体となり最初に見た歪な直方体が現れ、それらが少し離れていくつも浮かび上がっている。それぞれの間を隔てながら、無限へと並んでいる。その直方体の間を透明な生き物らしい姿がうごめいている。直方体に比べれば格段に小さい。それは幼いころ顕微鏡で見たことのある水辺の単細胞生物のようだったが、単細胞ではなかったし、何よりも大きさが子犬程もあるように思えた。透明な細胞膜は、その中でいくつかの器官を震わせながら空間をゆっくりと移動している。
     電卓ほどの大きさのあるひとつの器官を見ていると、片方から小さな何かが取り込まれていって、逆から出ていくのが見て取れる。そして出て行ったものがまた別の器官へと取り込まれていく。器官は半透明でその中の様子をうかがうと、二重螺旋がゆっくりと長く編まれていく様が見えた。二重螺旋に見えたものに目を凝らすとそれは記録であった。代謝に必要な栄養である分子を、いつ何個取り込み、それをエネルギーに変換した代謝熱量とのこった分子を、すべて記録していた。こうした化学式はひとつの式として公式化させるのだが、かれらはこうした抽象化・単純化を潔しとしなかった。いつ何個のアミノ酸をINPUTとし、OUTPUTとして何ジュールのエネルギーを得た後、化学変化した副産物/老廃物の分子をいくつ排出したかを二重螺旋として記録しているのだ。もしかしたら事実と記録で、順番が逆なのかもしれない。記録することで事実=エネルギーを生み出している。
     「記録生命…」二重螺旋はひたすら長くなっていく。そもそも子犬ほどの細胞が一個体の生き物なのかもわからない。しかし「生きることは記録すること」がこの生命の生きるための術なのだ。あのときにモニターから浮かび上がっていた歪なキューブ集合体は、記録生命体の群体だったのかもしれない。記録することによってとてつもないエネルギーを生み出している姿だったのかもしれない。

     足もとに細胞が絡みついてきた。皮膚が熱くなる。生命体の体温ではなかった。子犬ほどの形状をしていたそれは平たく変形すると、宮田の腰のあたりを登り始めた。宮田の身体を取り込もうとしているようだった。足をばたつかせ懸命にそいつを振りほどくと、2、3歩離れたところへゴロゴロとぶざまに転がっていった。振りほどいた拍子に右の靴が一緒に脱げた。そしてその靴をゆっくり体内に取り込んでいる。しばらくすると靴はその中で溶けて見えなくなった。
     免疫細胞のようなものだろうか。異物?そう、正常を維持しようとする力、自浄作用が働いている。彼らの内部統制を活かさない手はない。

    https://note.com/zubolac_299/n/nd9612d13b28d?sub_rt=share_pw


     
     
    無意味なことが好きなおじさん。

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