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Photo byhoshizoramochi

ショートショート「二万五千円ちゃん」

    私は今、過去最大のチャンスが目の前に訪れているのであります。それはそれは美しい女神であり、絶世のサキュバスが私の目を掴んで離さないのです。
    経緯をご説明いたします。私は3時間前に所謂、合コンというモノに参加していました。私にパートナーがいるのを前提に御誘いがあったため、詳しく聞くと、婚活パーティーの数合わせとしてお呼ばれされていました。お金も払わなくてもいいから、とにかく来て欲しいとの事でしたので、2秒ほど苦慮しましたが、食費を少しでも抑えるために、参加する事に致しました。

    参加した婚活パーティーは酷いものでした。友人が不細工な女に顔を歪ませ、色目を使ってる様子は、あと三十年はケタケタ思い出し笑いをしそうになります。そして、出てくる料理の不味さには関心致しました。土臭いほうれん草の通しから、そこに出てくる食べ物は家畜の餌と変わりありません。正面の豚二匹が生ゴミを口に頬張る様子は、滑稽の極みであり、吐き気すら催します。彼らが池袋のホテル街に向かうところを見届けた後、私はネクタイを締めて、愛する彼女を想い、右足を前に出しました。

    右足、左足、右足、左足、交互に交わる足は速度を速め、ついには反対側の出口まで辿り着きました。そこで初めて私が今日に満足していないのだと悟ります。また、考える間もなく右足、左足とテンポを上げ、歩みを進めます。いきなりピタリと止まりました。そこには妖艶な立て看板の立つ遊郭がございました。私は下品な電光掲示板の文字を頭から読みますが、途中で面倒になって、暗い扉を迷う前に開けます。

    受付には不細工な男が居ましたが、明かりの少なさから、鮮明にはどれほど不細工なのかは分かりません。「一番可愛い子をご用意できますか?」私は一言だけ伝え、街中に捨てられていそうなソファーの一番マシなところを決めて座りました。右の太腿から振動がありました。スマートフォンを引っ張り出すと、妻から「夕飯はいるの」と。私は見て見ぬフリをし、丁度頭頂部の薄い男に呼ばれたので、肩で風を切り、後ろをついて行きました。

    部屋に入ると、まぁそれは美しい女子がおられました。私が惚けていると、「こんにちは」と屈託もない笑顔を向けてくれるではないですか、私は彼女を二万五千円ちゃんと、内で呼ぶ事に致しました。彼女の爪が、手が、唇が、身体が、心が重なる事で、私は彼女の虜となります。心臓のメトロノームが口から飛び出してきそうで、それを彼女は舌で押さえ付けてくれました。脈が強く打たれて、出てきた純白の血脈は、蛍光色の安っぽいラミネートがされていました。そこから私たちの身体は徐々に剥ぎ取られていき、孤独を強調させました。

     私には昨年子供が産まれました。妻も常に寝不足にしていますが、幸せそうです。私は、毎月七十二万円の稼ぎを家族のために入れています。その内の二万五千円、サキュバス代も家族の帳簿に刻まれているのです。

     
     
    ショートショートを書きます。投稿内容は全てフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません

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