
ギョロ
その球体が何なのか、私にはわからない。
今から3日ほど前、空から落ちてきた謎の飛行物体。隕石と呼ぶには綺麗すぎる代物、紫色の水晶だ。大きさは野球ボール並み。地球に衝突はしたが、犠牲者も怪我人も、ましてや自然や建物に損傷もない。強いていえば、木の枝が1本折れたくらいだ。落下スピードに対して、衝撃は大したものではない。発見された当初、まるで子供がボール遊びをして、たまたま引っかかった様にそれはあった。放射能もない、地球に害をもたらす成分なし、やたら頑丈で割れない。つまり綺麗で丈夫な宇宙からの贈り物。だが、研究所の科学者達は毎日の様に、隕石について会議室で議論するわけだ。ホットコーヒーがぬるいコーヒーになるまで。
「いいか!これは宇宙人が作った宝石だ!人間以上の科学技術を持った奴らが加工したにちがいない!」
「いいや!これは遥か彼方の鉱物が宇宙に浮かぶチリや小惑星帯の残骸で少しずつ削れて今の形になったのだ!つまり、地球よりはるかに離れた場所にはこの強度と同じ鉱物が何万と、、、!」
私は熱いうちにコーヒーを飲み干し、使い忘れたスティックシュガーをどうしようか考えていた時、科学者のお偉いさん達に話しかけられた。
「コバヤシくん!君はどう思うね?」
「え、ああ。私は議論に上がる宇宙人も自然現象、その他諸々のご意見、色んな可能性があると思います。発見されてからこの隕石がどんな物質で出来ていているのかすら不明、未知のものに対して議論が白熱するのは当然です。とにかく私としては、今後あの隕石が世界にとって脅威にならない事を祈るばかりです。では、これで。」
私はそう言って、スティックシュガー片手に会議室を出る。
研究室の屋上。私はひとり空を眺めていた。その姿を見て後輩のシンジョウは後ろからからかう。
「先輩。昼飯にスティックシュガー1本はさすがに、、、。
「あ?あ、まだ俺手に持ってたか、、、。」
「どうかしました?徹夜でもしてます?」
シンジョウは私の隣でヘラヘラとサンドイッチを取り出し食べ始める。
「先輩以外と真面目だなぁ。あの隕石に関してなんか調べてるんですかー?」
「俺は生物学専門だ、ちゃんと自分の研究してるよ。だが、年上連中は自分の研究そっちのけであの隕石について語ってる。」
「判明したら名も上がりますからねー。」
「そのせいで他の研究が遅れてどうする、あの隕石はこの総合研究所の害だ。」
「真面目っすねー。じゃああの隕石がなんなのか、先輩が調べてみればいいじゃないですかー。」
そう言ってシンジョウはサンドイッチ片手に帰っていく。
「その砂糖、手に持ってるとガチでダサいですよー。」
生意気なやつだ。だが、一理ある。私はスティックシュガーの封を開け、一気に口へ流し込む。あの隕石、研究所の特殊展示室に保管されてたよな。確か私のカードキーでも開けられるはずだ。
その夜、私は特殊展示室の前に立つ。警備員はひとりだけ、軽く会釈しカードキーで入る。ああ、あったよ。ど真ん中に堂々と、特殊ガラスで守られてるやたら硬い隕石。お前は守られなくても大丈夫だろうに。私はその隕石を色んな角度から見て思った。ただの紫色の水晶。色は濁っているけど、ただの水晶。なんかパワーストーンとか、ああいう感じの。なんだろうか、子供の頃は生き物が好きでそれ以外にはあまり興味を示さなかったからそれ以上の感情は湧き起こらない。毎日議論してる教授連中はなんで飽きずに議論しているのだろうか。私がため息をついてもう一度ずっと眺めていると生ぬるい音がした。
ギョロ
私は咄嗟に叫ぼうとしたが息が詰まる。言葉を発せないし、手足も動かない。そして隕石に映るのは、目、大きい目だ。こちらの瞳の遥か向こうを突き刺すが如く、こちらを見つめている。
『怯えることはない、この星の民よ。』
頭に言葉が流れ込んでくる。まるで綿を叩きつけられているかの様な振動と一緒に、声が聞こえる。
『我はお前らの理解及ばぬ宇宙の果てより生まれし存在。しかし多種族との戦に負け、逃げ仰たのがこの星だった。貴様らが我にどうこうしても無駄だ、たとえ我だけでもこの星を滅ぼすことは可能だ。』
なんだ!こいつは、生き物なのか!?何が目的なんだ!
『目的。安住の地を得られた我にもう目的はない。だが、下手に動けば追手に目をつけられる。我はここで、余生を送るとしよう。貴様らに求めるのはひとつだけ。』
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今から3日ほど前、空から落ちてきた謎の飛行物体。隕石と呼ぶには綺麗すぎる代物、紫色の水晶だ。大きさは野球ボール並み。地球に衝突はしたが、犠牲者も怪我人も、ましてや自然や建物に損傷もない。強いていえば、木の枝が1本折れたくらいだ。落下スピードに対して、衝撃は大したものではない。発見された当初、まるで子供がボール遊びをして、たまたま引っかかった様にそれはあった。放射能もない、地球に害をもたらす成分なし、やたら頑丈で割れない。つまり綺麗で丈夫な宇宙からの贈り物。だが、研究所の科学者達は毎日の様に、隕石について会議室で議論するわけだ。ホットコーヒーがぬるいコーヒーになるまで。
「これは特殊なガスが地球に落下した際凝固してだな、、、!」
「いや!その理屈ではこれほど綺麗な球体になるはずがない!それなら複数の鉱物が融合した説が、、、!」
「コバヤシくん!君はどう思うね?」
皆の額には、軽い冷や汗があった。当然私にも。
「そうですなぁ。私は生物学が専門ですから。もしかしたら宇宙生物の卵という説も、、、。」
その球体が何なのか、我々にはわからない。