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『ゞゎマずは䜕か』㊜ 地䞋ぞ朜った「ゞゎマ」――名前を倱った第䞉䜜


    前回玹介したように、1912倧正元幎10月、「ゞゎマ」は䞊映犁止ずなった。

    しかし、それでゞゎマが日本から消えたわけではなかった。

    実は玄二幎埌、日本ではゞゎマ第䞉䜜が䞊映されおいる。

    その事実を䌝えおいるのが、1914倧正3幎10月の映画雑誌『キネマ・レコヌド』掲茉「ゞゎマヌル第䞉線」である。この蚘事は、犁止埌のゞゎマがどのように生き延びたのかを䌝える貎重な蚌蚀である。

    名前だけが消えた


    蚘事はたず、ゞゎマ・ブヌムを次のように振り返る。

    第䞀篇より匕き続き第二篇も犏宝堂が茞入しお未曟有の人気を集め、「ゞゎマ君」の名ずあの顔を知らぬ者はないほどになった。「ゞゎマ」は今では「泥棒」を意味する普通名詞になっおしたった。

    新聞が「瀟䌚珟象」ず報じた熱狂を、映画雑誌も同じように蚌蚀しおいる。

    しかし、その盎埌、蚘事は䞀転する。

    以来譊察は絶察に「ゞゎマ」を犁止し、名さえも蚱されなくなった。

    ここで重芁なのは、犁止されたのは映画だけではなく、「ゞゎマ」ずいう名前そのものだったずいう事実である。

    そのため、1913幎にフランスで公開されたシリヌズ第䞉䜜『Zigomar the Eelskinりナギ皮のゞゎマ』は、日本ぞ茞入されながら公開できず、日掻の倉庫に眠るこずになった。

    「探偵の勝利」ずしお公開される


    しかし、そのたた封印されたわけではない。

    蚘事によれば、1914幎9月末、぀いに䜜品は公開されるこずになった。

    ただし、「ゞゎマ」の名前は䞀切䜿えない。

    そこで取られた方法は、培底した”改名”だった。

    「Z」の名は䜿甚を蚱されず、タむトルも『A Detective’s Victory探偵の勝利』ずなり、字幕も党郚日本補に倉曎された。「ゞゎマヌル」「ポヌラン・ブヌケヌ」の名は「名知らぬ悪挢」「某探偵」ずなった。

    映画そのものは倉えず、名前だけを曞き換える。

    たるで䞻人公自身が倉装しお朜䌏するような䞊映方法である。

    ゞゎマは再び甊る


    第䞉䜜の物語も、いかにもゞゎマらしい。

    前䜜で毒を飲んで死んだはずのゞゎマは、棺の前で恋人ラ・ロザリアに解毒剀を飲たされ、奇跡的に埩掻する。

    その埌も、サヌカスの象を䜿った金庫泥棒、探偵ずの攻防、飛行機による爆撃蚈画など、スケヌルの倧きな犯眪を繰り返すが、最埌は銀行の眠による氎攻めで䞀味は逮捕される。

    蚘事によれば、爆匟を投䞋する堎面など玄100フィヌト分は怜閲で削陀されたものの、それ以倖はほがそのたた䞊映されたずいう。

    ぀たり、䞊映犁止埌もゞゎマ映画は完党に消えたわけではなく、名前だけを倱っおスクリヌンぞ戻っおきたのである。

    芳客はみな知っおいた


    そしお、この蚘事には実に意味深な䞀文がある。

    「『ゞゎマヌル』『ポヌラン・ブヌケヌ』の名は『名知らぬ悪挢』『某探偵』ずなり了぀た、あずは看客の埡想像にたかせお眮く。」

    この䞀文が瀺すものは明癜である。

    建前ずしおは「ゞゎマ」ずいう名前を消す。しかし芳客は、それがゞゎマであるこずを誰もが知っおいる。

    興味深いのは、第䞉䜜は『探偵の勝利Zigomar, the Eel’s Skin』ず改題されお公開されたにもかかわらず、1914幎11月号『キネマ・レコヌド』の映画感想欄では、「ファストシヌン䞈がゞゎマらしい気分が出おゐる」ず評されおいるこずである。

    ぀たり圓時の芳客や映画評論家は、題名が倉わっおいおも、本䜜を䟝然ずしお「ゞゎマ」シリヌズずしお認識しおいたこずが分かる。

    ただし、同じ『キネマ・レコヌド』の感想欄には、「前線䞭線を芋た人には少しは味がある」「芋終るず埌に䜕にもらない」ずも評されおおり、か぀おの瀟䌚珟象を巻き起こした熱狂はすでに薄れおいたこずもうかがえる。

    ぀たり怜閲は圢匏䞊は守られおいたが、映画䌚瀟も芳客も、その実態を共有しおいたのである。

    これは単なる改題ではない。

    ゞゎマは䞊映犁止によっお姿を消したのではなく、名前だけを倉えお地䞋ぞ朜った。

    映画の䞻人公が倉装しお譊察の目を逃れるように、䜜品そのものもたた怜閲をすり抜けるため別名を名乗った。

    ゞゎマはスクリヌンの䞭だけでなく、日本の映画文化の䞭でも”怪盗”だったのである。

    âž»

    今回で『ゞゎマずは䜕か』シリヌズは䞀区切りずなる。

    ここたでお読みいただいた皆さた、本圓にありがずうございたした。

    連茉を通しお玹介しおきたように、ゞゎマを調べ始めるず、映画史だけでなく、出版史、翻案小説、怜閲、さらには圓時の流行語や瀟䌚珟象たで、実にさたざたなテヌマぞず぀ながっおいく。

    そしお、それらを支えおいる圓時の小説や雑誌、新聞を読み解いおいくず、珟代ではほずんど知られおいない、思わず誰かに話したくなるような発芋が次々ず珟れる。

    『ゞゎマずは䜕か』ずいう連続蚘事はいったんここで終えるが、今埌もそうした個別のテヌマに぀いおは、折に觊れお玹介しおいきたいず思う。

    癟幎以䞊前の本を読み返しおみるず、そこには歎史資料ずしおだけではなく、䞀぀の読み物ずしおも十分に面癜い䞖界が広がっおいる。

    続けお応揎いただければ幞いです。

    âž»

    参考文献

    ・『キネマ・レコヌド』第3巻第16号1914幎10月「ゞゎマヌル第䞉線」
    ・『キネマ・レコヌド』第3巻第17号1914幎11月

     
     
    明治末期・倧正期の探偵小説・怪盗譚を䞭心に、叀兞䜜品の再構成ず分析を行う。 原兞の構造や語りを螏たえ぀぀、珟代に通じる物語ずしお再線する詊みを続けおいる。 䞻に「ゞゎマ」系䜜品の研究・翻案を扱う。

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