
18歳になる君へ⑩ | 「自己肯定感」なんて高めなくていい。不安な心と自信をそっと仕分ける話
第1章 自己理解⑩ 自己肯定感とは何か
本屋さんに行けば「自己肯定感を高める方法」という本がずらりと並び、SNSを開けば「自分を愛してあげよう」という眩しい言葉が飛び交っています。
でも、優しくて繊細な君は、そんな言葉に触れるたびに「どちらかというとマイナス思考で心配性で、そても自信をモテないよ」と、逆に息苦しさを感じてはいないでしょうか。
今日は、そんな重たい言葉の呪縛から君を解放する、少し静かなお話をしようと思います。
心理学の定義とやらは、一旦横に置いておく
私は心理学のプロフェッショナルではありませんし、学術的な難しい定義をここで語るつもりはありません。
私がこれまでの人生で泥臭く生きてきて、たくさんの人と関わる中で行き着いた「自己肯定感」の正体。 それはとてもシンプルで、「毎回100%自分を信じてあげられるか、それとも、まったく信じてあげられないかという、シーソーのような『さじ加減』」のことだと思っています。
自己肯定感が高い人というのは、どんな時でも「自分ならできる」という側にシーソーが傾いている人。 逆に自己肯定感が低い人というのは、何をするにも「どうせ私なんか」と、不安な側にシーソーが傾き切っている人のことです。
でも、人間の心はそんなに単純な「0か100か」でできているわけではありません。
新しい環境に入って、初めての仕事をするときは「失敗したらどうしよう」とすべてが不安になる。 でも、自分の得意な作業をしているときや、心を許せる友人と話しているときだけは、「ここなら大丈夫だ」と少しだけ自分を信じてあげられる。
それでいいのです。 「すべてに対して自信満々」である必要なんて、どこにもありません。
不安の霧を晴らす「紙とペン」の仕分け作業
自己肯定感が低いと悩む人が陥りがちな1番の罠は、「ひとつの不安が、自分のすべてを覆い尽くしてしまうこと」です。
何かひとつ失敗しただけで、「私は仕事ができない」「人間関係もうまくいかない」「だから生きている価値がない」と、不安が霧のように広がって、自分という存在全体を否定してしまいます。
だから、君にやってほしいことがあります。 それは、前にもお話しした「紙に書き出してみる」ということです。
頭の中だけで悩むのではなく、ノートを広げて、真ん中に線を引いてみてください。 そして、「自分が自信を持てない(不安になる)こと」と、「ここだったら少しだけ自信を持てる(向いている)こと」を、ただ淡々と書き出して、仕分けをしていくのです。
「大人数の前で話すのは、すごく不安で自信がない」 「でも、年上の人の話を一対一でじっくり聞くことなら、好かれる自信がある」
「ゼロから新しいアイデアを出すのは向いていない」 「でも、誰かが作ったものを丁寧にチェックすることなら、自信を持ってできる」
苦手なことがたくさん出てくるあなたは、そもそもいろんなことによく気づいている人だと思います。
自分より上がいる、そうやって客観視できるから、自己評価が低くなりがちですが、むしろ課題発見の天才です。
世の中にはこういったことに気づいていない、一種視野の狭い人の方がその分野や特性で名を馳せることがあります。
そのタイプではないと思ってもご安心を、そういった方々の見えない場所に、あなたのようによく気づく人たちが必ずいます。
あなたの輝ける場所はある、まずは自分を評価してあげることから始めてみてください。
君の「現在地」を知るだけで、心はふっと軽くなる
こうして書き出して仕分けをしていくと、あることに気がつきます。 「そっか、私は自分のすべてがダメなわけじゃなくて、『この特定の分野』にだけ不安を感じていたんだな」と。
自己肯定感とは、無理やりテンションを上げて「私は素晴らしい!」と自己暗示をかけることではありません。 「今の自分は、ここは得意だけれど、ここは不安に思っているんだな」と、自分の心の現在地を、ただ静かに理解してあげることなのです。
「私は年上の方に好かれることには自信があるんだから、その強みだけは信じてあげよう」
そうやって、自分が自信を持てる小さな「安全地帯」を一つでも把握しておくこと。 それさえできれば、君はもう、漠然とした不安の霧に飲み込まれて自分を見失うことはありません。
今日も読んでくれた君へ
今日もここまで読んでくれて、本当にありがとう。
「もっと自信もって頑張れ」 社会に出ると、そんなふうにアドバイスをしてくる大人がいます。彼らは悪気があるわけではなく、心から君を励まそうとしてくれています。
でも、無理に自分を好きになろうとしたり、自信満々な人のふりをしたりして、心をすり減らさなくて大丈夫です。
今のあなたが何をどう捉えて世界を見えているか、頭の中を書き出すことで、自分の頭の整理ができます。
すべてに自信を持てなくて不安になるのは、君が物事に真剣に向き合い、失敗を恐れるだけの「責任感」と「想像力」を持っている証拠です。その繊細さは、決して悪いものではありません。
「ここは不安だな。でも、こっちなら少しできるかも」 そうやって、紙の上で自分の心をそっと仕分けしながら、君のペースで進んでいけば大丈夫。
無理に自分を愛せなくても、まずは「不安に揺れる自分」をそのまま理解してあげること。それが、君にとっての一番の「自己肯定」なのだと、私は信じています。
窓の外の雨のように、君の心に降る漠然とした不安が、少しでも静かに落ち着きますように。 明日もまた、君らしい一日を過ごしてください。