
余っているのに、なぜ貸せない? EquipmentShareが見つけた壁
地下約4.5メートルの下水管工事。
Jabbok Schlacks(ジャボック・シュラックス)には、急きょドリルが必要になった。
自分たちのドリルは、工事現場から数マイル先にある。取りに戻る余裕はなく、兄弟は近くのレンタル会社から借りることにした。
3日後、返却時に請求されたのは300ドル。
新品のドリルを買うのと、ほとんど変わらない金額だったという。
Jabbokと弟のWilly Schlacks(ウィリー・シュラックス)は、建設会社を経営してきた兄弟だった。
必要な工具を借りると高い。だから建設会社は、自分たちで機械や工具を買う。
ところが、買ったものを毎日使うわけではない。
一つの現場で使い終えれば、次に必要になるまで置き場で眠る機械もある。
「それなら、使っていない間だけ別の建設会社に貸せないだろうか」
ここからEquipmentShare(エクイップメントシェア)は始まった。
現在のEquipmentShareは、アメリカ各地にレンタル拠点を持ち、自ら建設機械を貸し出しながら、T3というシステムで機械の位置や稼働状況、メンテナンスなども管理する会社になっている。
でも、2014年の出発点はもっとシンプルだった。
使われていない建設機械と、
それを必要としている会社をつなぐ。
最初は、そこがEquipmentShareの商品づくりの面白さだと思った。
初期の資料を読むまでは。
使っていない。でも、簡単には貸せない
2014年、兄弟たちはEquipmentShareのアイデアをStartup Weekend Columbia(スタートアップ・ウィークエンド・コロンビア)に持ち込んだ。
Startup Weekendは、週末の短期間でアイデアを形にして事業案を競うイベントだ。
43のアイデアが出されたこの大会で、EquipmentShareは優勝した。
最終日にはすでに最初の取引も生まれていたという。
翌2015年にはY Combinator(ワイ・コンビネーター)へ参加する。
当時のEquipmentShareは、建設会社が使っていない機械をサイトへ登録し、必要な別の建設会社が近くから探して借りられるサービスだった。
たとえば、ある会社が今は使っていないショベルカーを持っている。
別の会社は、数日だけショベルカーを使いたい。
EquipmentShareが間に入れば、持ち主には貸出収入が入り、借りる会社は一般的なレンタル会社より安く借りられる。
貸す側にも、借りる側にもメリットがある。
ここまでは分かりやすい。
でも、自分が機械の持ち主だったらどうだろう。
高額な建設機械を、よく知らない会社へ何日も預ける。
どこへ持っていくのか。
どう使われるのか。
きちんと返ってくるのか。
使っていないからといって、「どうぞ」と簡単に渡せるものではない。
実際、2015年の業界誌ENR(イー・エヌ・アール)ではWillyが、最初は自分たちの機械を貸すことに慎重な顧客もいたと話している。
EquipmentShare側は、その会社の機械がどれほど使われていないかを分析して見せていた。
使われていない機械はある。
借りたい会社もいる。
貸せば収入にもなる。
それでも、取引は動かないことがある。
需要と供給を見つけただけでは、まだ足りなかった。
その間に、**「この相手に大切な機械を任せて大丈夫なのか」**という問題が残っていた。
「見えない」を減らしていく
EquipmentShareは、単に両社をサイト上で紹介するだけでは終わらなかった。
2015年の時点で、レンタルに出す機械へGPSのような追跡端末を取り付けていた。
持ち主は、その機械を誰が使っているのか、何のために使っているのか、どこにあるのかを確認できた。
2016年の記事では、この仕組みは「ES Tracker(イーエス・トラッカー)」と紹介されている。
機械にセンサーなどを取り付け、位置や利用状況をリアルタイムで確認するものだった。
EquipmentShareは技術者を現場へ送り、端末の取り付けまで行っていた。
こうした、GPSやセンサーを通じて機械の情報を遠隔で集める技術は「テレマティクス」と呼ばれる。
言葉は少し難しい。
でも、持ち主から見れば意味は分かりやすい。
貸した機械が今どこにあり、どう使われているのか分からない状態を減らせる。
テレマティクスには資産管理など複数の用途がある。EquipmentShareの初期の貸し借りにおいては、貸し手の不安を和らげる役割も持っていた。
EquipmentShareは保険や輸送など、実際のレンタルで必要になる部分にも関わっていた。
2016年のTechCrunch(テッククランチ)では、投資家がEquipmentShareの課題について、所有者には機械を一時的に手放すことへの障壁があり、位置や使われ方をリアルタイムで確認できれば、その障壁を下げられると説明している。
ここまで追うと、最初の「余っている機械をつなぐ」という見方だけでは足りないことが分かる。
EquipmentShareが扱っていたのは、余っている機械を見つけることだけではない。
貸した後の「分からない」を減らすことも、取引を動かすための一部になっていた。
「信用」のための仕組みは、貸し借りの外へ
翌2017年、EquipmentShareは「ES Track(イーエス・トラック)」というテレマティクス製品を、一般の建設会社にも広げると発表した。
WillyはEquipmentShareを運営して分かった重要なこととして、「trust(トラスト)」、つまり信頼を挙げている。
ES Trackでは、機械の場所だけでなく、利用状況や状態もリアルタイムで確認できた。
それまではEquipmentShareのマーケットプレイス利用者向けに提供されていた仕組みが、EquipmentShareで機械を貸し借りしない建設会社にも使えるようになった。
複数メーカーの建設機械をまとめて見て、どこにあり、どれくらい使われ、どんな状態なのかを管理する。
EquipmentShareはこの頃、レンタル市場を広げることだけではなく、テレマティクスを強化し、建設会社が抱える問題を解く方へ重点を移すと話している。
現在のT3にも、機械をデータで「見えるようにする」という流れは残っている。
公式サイトでは、レンタル中の機械について位置や稼働状況、状態などを確認できる。
ただし、これは「2014年からT3を作る計画だった」という意味ではない。そこまでの証拠はない。
2016年の記事では「ES Tracker」、2017年の発表では「ES Track」という名称が確認できるが、ここでも両者の関係を必要以上に断定しない方がいい。
確認できるのは、EquipmentShareが早い段階から機械の位置や利用状況を見えるようにし、その仕組みを後により広い建設会社向けへ展開していったことだ。
つないだ後に、何が止めているのか
EquipmentShareの最初の発想は分かりやすい。
使われていない建設機械があるなら、必要な会社へ貸せばいい。
実際、それだけでも最初の取引は生まれた。
でも、その先には「相手へ高額な機械を任せられるか」という問題が残っていた。
EquipmentShareは、その不安を仕方がないものとして終わらせず、機械の位置や使われ方を見えるようにし、保険や輸送にも関わっていった。
僕なら、「使われていない機械」と「借りたい会社」を見つけた時点で、商品候補を見つけたと思ってしまう気がする。
でも今回、もう一つ見る場所が増えた。
需要と供給をつないだあとに、それでも取引を止めているものは何か。
EquipmentShareの場合、
その一つが、「相手を信用して機械を任せられるか」という部分にあった。
【主な参考資料】
・COMO Magazine|Business Update: EquipmentShare
・ENR|Peer-to-Peer Equipment Rental Apps Gain Steam
・Silicon Prairie News|Columbia’s Startup Weekend pulls off one of its most successful years yet
・TechCrunch|YC-Backed EquipmentShare Is Like Airbnb For Construction Equipment
・TechCrunch|EquipmentShare raises $5.5 million for peer-to-peer marketplace for heavy equipment
・Project DisCo|Construction Disruption: Q&A with EquipmentShare
・GlobeNewswire|EquipmentShare Secures $26 Million in Funding…(2017)
・ENR|Heavy-Iron Rental Portal EquipmentShare Shifts to Telematics
・EquipmentShare公式|About / T3