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人間だから 第一話

    痔の多い人生でした。
    自分には、幸福というものが何であるか見当がつかなかった。
    ただ、長時間のデスクワークと排便後の違和感だけは、幼い頃から人一倍敏感でありました。

    人々は恋をし、夢を語り、未来を描く。
    しかし私は、椅子に腰掛けるたびに肛門の機嫌をうかがっていたのです。
    「今日は大丈夫だろうか」
    その不安は朝の天気予報より正確で、株価の変動よりも私の感情を左右しました。

    世間は努力すれば報われると言います。
    けれども私は知っています。
    どれほど真面目に生きても、ある日突然、トイレで絶望することがあるのだと。
    静かに紙を見る。
    赤い。
    もう一度見る。
    やはり赤い。
    人生には、受け入れなければならない現実があるのです。

    病院へ行けばいい。
    誰もがそう言います。
    しかし人は、自らの肛門について語る時だけは妙に口数が少なくなる生き物です。
    私は症状を検索し、安心し、また検索し、さらに不安になりました。

    そしてある夜、布団の中で思いました。
    人間はなぜ二本足で歩くようになったのだろう。
    四足歩行なら、こんな苦労はなかったのではないか。
    もちろん答えは出ませんでした。

    ただ翌朝も、私は変わらずトイレへ向かいました。
    人間だから。
    生きている限り食べる。
    食べる限り出す。
    出す限り、痔と向き合う。
    それが私の見つけた、とてもささやかな人生の真実でした。

     
     
    目立たぬままに溶けて それでも確かに効いていく そんな生き方をしています

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