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初恋〈A面〉

まずはBGMをどうぞ👇

A面から読んでください。
B面はひな子の視点です。


中学校一年生の入学式。
彼女に出会った。

たまたま席が隣だった、ひな子。

彼女は、まるで子猫を
見つけたような目で
僕をジロジロと見て、
なんなら、頭を撫でてくる。

なぜか、イヤじゃない。


僕は教室での時間は、
一人で本を読んでいるのが
好きだった。

でも、ひな子は
ズケズケと僕のテリトリーに
踏み込んでくる。

「智くん、めっちゃかわいいな」

それから、目を合わせると、
自分が変な顔をしていないか
気になるようになった。


そして
勉強のこと、スポーツのこと
いちいち、うるさい奴だ。

「智くんすごいやん」
といつも笑ってる。


僕は気付いたら
勉強もスポーツも、
クラスで1、2を
競うくらいになっていた。
別に興味はないけど、
モテていた。


ひな子とは三年生まで同じクラスだった。
よく笑う子で、
ずっとクラスで人気者だった。


でも、勉強は苦手。
「宿題、手伝ってよ~」と
いつも甘えてくる。


この日も、中が丸見えの机に
教材一式が詰まったままになっていた。

「宿題……困るやろな……」


〈突然、電話なんてビックリするかな、
変に思われへんかな?〉

鼓動がうるさいし、
ダイヤルを回す手が震える。


電話を出たのは、ひな子だった。

「あ、あのさ、宿題一式、忘れてるで」

「あ~、良いねん、べつに」と笑っている。

〈知っていた。宿題をしないこと〉


しばらく他愛もないことを話した。
翌日も、その翌日も。
ほとんど毎日かけてしまった。


「お前、好きな人おるん?」
勇気を出して聞いてみた。

「えへへ、内緒!絶対言わへん」

「なんやねん、俺が知ってる人?」

「そんなん言うたら、バレるやろ!アホ」

たまに一緒に帰る日も増えた。
「勉強、教えるから同じ高校目指せへん?」
〈なんて答えるかな……〉
言った後、手が震えていた。

「ホンマ?じゃあ、
頑張ってみようかな」

家に帰ってから、枕に顔を
埋めて大声で叫んだ。


気付けば、いつもひな子を目で追っていた。
〈ヤバっ……〉

目が合いそうになると
明後日の方向を見る。

ある日、ひな子から電話がかかってきた。


嬉しくて、心臓がうるさい。
親をシッシッと追い払った。


「どうしたん?」

「あんな……映子ちゃんがな……
あんたのこと好きやねんて。
つきあいたいって……」


「え?……
なんで、お前がそんなん言うねん……」

手の震えが止まらない。

彼女も黙っている。

〈電話で良かった、
こんな顔を見られなくて……〉


「も、もういいわ!」

震えそうになる声を
精一杯、強い口調にして
電話を切った。

「いっつもニコニコしてて
智くんは太陽みたいやな」

ひな子は、よく僕に
そう言ってくれていた。


もう、彼女の前で
笑うことはなくなった。


ひな子も笑わなくなった。


ひな子と映子ちゃんも
口を聞かなくなった。


――もう、どうでもいい。


別々の高校に進学してから
顔を見ることもなくなった。

ある日、
たまたま寄ったスポーツ用品店。


可愛い店員さんがいた。

〈え?……ひな子だ……〉

急いで店を出た。


咄嗟に隠れた。

店の方を見たら、
悲しそうな顔でキョロキョロしてた。

僕は、また逃げた。

「この前な、部活の道具を買いに行ったらさ、
ひな子と会ったわ。めっちゃ可愛くなってたで」
と友達が言う。


「……」


「お前らさ、いい感じやったのにな!
俺、アタックしよかな」


「好きにしたら」


「あれさ……映子ちゃんがひな子に、
親友やろ!お願い!って
無理矢理、頼み込んだみたいやで」


〈……いまさら〉


どうしたいかわからないまま、
スポーツ用品店に行ってしまった。


店にひな子はいなかった。


外で偶然見かけたのは
幸せそうに、知らない
大人の男と手をつないだひな子だった。

僕の心は4年もこじれたままだ。

あれから、もう全くモテない。

この指は、まだ彼女の家の
ダイヤルを覚えている……


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