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ログアウト

静かな夜だった。
ボロいアパートの狭い机の上に置いた、古びたデスクライト。その頼りない明かりの下で、私は紙にペンを走らせている。
世の中は、近未来化が進んでいた。
今やヒューマノイド型AIは、ほとんど人間と変わらない姿をしている。街を歩けば、人間に混じって生活している彼らを見かけることも珍しくない。
こんなにもデジタル化が進んで、世の中が電子機器や便利なもので溢れているというのに。
私は、紙にペンを走らせる。
毎日、欠かさず。
ふと、視線を感じた。
狭いワンルームの床に敷いた布団。その中で、先に眠っていたはやとが、こちらをじっと見ている。
「何。眩しかった?」
私がそう尋ねると、はやとは目をぱちくりさせた。
「いえ。あの……何をしているのかな、と」
確かに、文字を書くこと自体が少なくなった現代では、そう思われても仕方がない。
私は手元の紙に目を落として、少しだけ笑った。
「日記。毎日、日記を書いてるの」
私がそう言うとはやとは、ぼんやりと何かを考えるような顔をした。
「おかしいよね、この時代に。笑」
「いや……。少し昔の事を思い出しました。」
はやとはそう言うと、くるりと背中を向けて大人しくなった。
私も特に深追いはせずに、日記帳に向き合って今日の出来事を書く。
日記に書くことはいつも様々だ。
自分の感情や今日食べたもの、ちょっとした出来事やその感想、読んだ本や観た映画など。
日記を書くようになったのは、高校に入学した頃からだ。
そこから、今日まで毎日続けている。
世の中のデジタル化が進んでから、紙やペンの需要が下がり今は希少なものとなっている。
しかし、セール品や在庫処分などで安く買えるので、欠かさず毎年、日記帳と年に数本お気に入りの筆記用具を揃えている。
この、日記を書く時間が私は好きだ。
今は自分の身体を売りながら、何とか生活している私にとって、日記を書く時間だけが自分を保っていられる気がする。まあ、滅多に読み返すようなことは、無いのだが。
書き終えた日記帳を閉じてから、軽く伸びをして、横に寝ているはやとを跨いでベッドへと入る。
はやとが、家に来てからもう3日が経った。
はやとは、ほとんど喋らない。感情もあまり感じられない。でも、私にとってはそれが何だか心地よかった。
人と触れ合う仕事をしている私には、人間の欲や業が直接降り掛かってくる。
それが時々、酷く、疲れるのだ。
だから、ワンナイトは何度も経験があるが、それ以上はいつも無い。
自分でもだらしないとは思うが、それぐらいが丁度いい。
でも、はやとはなぜか家に住み着いた。
聞くと、家が無いと言った。
私と出会ったあの日に、その日まで住んでいた所から追い出されたらしい。
そこは、ホストクラブの下宿だったそうだ。
私は、自分を可哀想とは思わないし、他人にも同情しないたちだ。
だから、はやとが家に住み着いているのも私の情とかでは無い。
許可も出してないが、なぜか家に住み着いている。
ただ、一人暮らしのボロアパートでどこか身寄りのない2人が一緒に住んでいる。

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