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アイドルになりたかった私│創作大賞2026

    突然だが、私はアイドルになりたかった。

    物心がつく頃から毎日のように音楽番組が流れる家庭で育ち、歌って踊って遊んでいた。
    モーニング娘。のライブ、記憶が正しければ、小学生に入る前両親に連れて行ってもらっていた。
    漠然と、アイドルはキラキラしている存在で、自分はそうなりたいし、なれると思っていた。
    しかし、生まれ育ったところが田舎で、オーディションの情報もなく、「アイドルになる」方法が分からなかった。

    中学生の頃、同じクラスになった女優をしている女の子と友人になった。
    そこでオーディションのこと、事務所に所属していること、お仕事のこと、色々聞くことができた。
    友人のおかげで自分の中でより具体像ができ、アイドルで世の中を元気にしたい、そう思うようになった。
    しかし、親は芸能活動に理解がなかった。
    中学生の頃にオーディションを受けたい、レッスンを受けたいと申し出たが、反対された。
    今思えば、もっと早く親元を離れることができれば、もっと早く東京に上京していれば、と時々悔しくなる。
    たらればを繰り返しても仕方ないが、当時の私は真面目だったので、ただただ親の言うことを聞いて、進学校に進み(結果的には落ちこぼれたが)、大学に進学した。

    今となれば、歌もダンスも何もやったことないのにできるわけがなかったのだが、いつかなれると信じていた。
    過去にこっそりオーディションを受けたり、ワークショップに通ってみたりした。
    もちろん落ち続けた。

    大学は医療系の学部に進学した。
    座学は得意だったが、実技が苦手で、徐々に自分には向いてないのではないか?と自問自答するようになった。
    大学3年生の時、2週間ほどの病院実習があった。
    配属された病院は厳しいと評判の病院で、厳しい言葉を浴びたし、夜遅くまで病院で説教(指導が正しいかもしれないが、あれは今思えばパワハラだと思う)、帰宅後レポートに追われる、地獄だった。
    その実習と同じくらいのタイミングで、とあるアイドルオーディションで書類審査が通過した。
    地獄のような実習も、実習を乗り越えられたら2次審査に行ける、何か変われるかもしれない、そう思って必死に耐えた。
    しかし、実習先の病院でインフルエンザを貰ってしまい、2次審査の会場に行くことができなかった。
    この時、人生で初めて死にたいと思った。
    せっかく掴んだ切符を、こんなことで捨てなければならなかった。
    その頃実習残り1日か2日だった。
    インフルエンザで自宅にいた時、私は「死にたい、死にたい」と言いながら泣き続けた。
    親にはもちろんオーディションを受けたことを話していなかったので(話すと反対されるのは目に見えていたので、審査がもう少し進んでどうしようもなくなってから話そうと思っていた)、実習が辛くて泣いていると思われていた。
    慰める親に対して、「何も知らないくせに」と心で呟いていた。

    その後も他のオーディションに応募し続けたが、書類審査を通過することはなかった。
    仕方なく私はその後の2回の長期の病院実習、国家試験を耐え、大学を卒業し、資格を取った。
    地元の病院に就職し、働いていたが、学生時代の直感が的中し、上司のパワハラも重なって、1年半ほどで退職した。

    同世代のアイドルがキラキラしている中、何者にもなれなかった私が、辛かった。
    また、「熱愛」が出れば、何でファンの応援を踏みにじるようなことができるのか、自分のキャリアに傷を付けてまですることなのか、怒りが込み上げていた。

    コロナ禍、アイドルたちはメディアやSNSを使って私達に元気を与えようとしてくださっていた。
    その中、何も出来ない自分にいらついた。
    いつしか同性アイドルを推すことが辛くなり、当時推していた乃木坂46を降りた。
    「何者でもない自分」という存在が辛かった。
    なれないのならせめて仕事で何か支えられたらと思ったが、転職活動は上手くいかず、面接は落ち続け、結局自分の望む人生を送ることができずにいる。

    30代になり、「何者でもない自分」というレッテルを貼り続け、人生を諦めている。
    「30代になるともっと楽しいよ」「40代になるともっともっと楽しいよ」と最近職場で言われたが、アイドルになりたかった私からしたらどんどん老いていくことが不安でしかない。
    これからもきっと私は自分を恨み、苦しんで生きていくだろう。

     
     
    都内を駆け巡る女です。 30代を迎え、noteをはじめてみました。

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