
アメノアト エピローグ:これからも続く音
放課後の音楽室。カーテンの隙間から入る強い光が、まっすぐに床に伸びている。
僕はいつも通りギターを構えて小さく音を鳴らしていた。
「ねえ、それもしかして新しい曲?」
ふいに後ろから声が降ってきて振り返る。
「うん、ちょっと思いついたから」
彼女が僕の近くまで近づいてきて「いいじゃん」って微笑んで言った。
僕たちの距離はすごく自然で、気がついたら隣にいる関係になっている。
「じゃあ、私がまた歌詞書いて良い?」彼女はそう言って、かばんの中からノートを取り出し、ピアノの上に広げて何かを書き始める。
僕がまたギターを鳴らし始めると、彼女はノートに書きながらハミングで重ねてきた。
まだ先行きが決まっていない曖昧な音なのに、ちゃんと自然に音が重なる。
ふと手を止めて考え、頭の中の音をギターで奏でる。
今僕の頭の中にはいくつもの音がある。過去の音、今の音、未来の音。
いくつもの音が一つになってきれいに重なっていく。
止まっていた僕の時間は、彼女と会ってからゆっくりと動き出した。そして今もちゃんと進んでいる。
でも、この音楽室で奏でる音はきっとずっと変わらない。少しずつ形を変えながら、でも何度でも鳴り続ける。
「ねえ、次は、どこで歌う?」彼女が楽しそうに、弾んだ声で聞いてきた。
「どこでも良いよ」僕は少し考えて答えてから、付け足した。
「一緒なら」
彼女は一瞬少し目を大きくしてこっちを見たけれど、すぐに笑って頷いた。
その笑顔を見て、僕は自分の言ったことに照れ臭くなったけど、また音を奏で始める。
彼女の声が重なる。
この音は、きっとこれからもずっと続いていく。
雨の後の澄んだ空気のように、植物が生き生きとして成長していくように、僕たちの音も成長していくんだ。
そしていつかこの二人の音を、虹が空を渡っていくようにたくさんの人たちの心に届けたい。
「よし、決めた」彼女がノートを閉じながら言った。
「何を?」僕が尋ねると、
「この曲のタイトル」
彼女が小さく息を吸って言う。
「ブルームーン」
僕が目を大きく見開いて彼女を見ると、彼女がはにかんだように照れながら言う。
「次のブルームーンも、一緒に、見よう」
それは一つの物語が終わって、また新しい物語が始まる瞬間だった。