見出し画像

#22 |仕事 予算内で"ご当地感・こだわり"を実現する業者の探し方


はじめに
「青森のホテルなので、なにかご当地のものを入れたい」

青森のホテル案件の打ち合わせで施主からそう言われたとき、正直すぐには答えが浮かびませんでした。
カタログに載っている素材や、いつも発注している業者のラインナップの中には、「青森らしさ」を表現できるものがなかったからです。
内装デザインの仕事をしていると、こういう「地域性を出したい」「こだわりの素材を使いたい」というオーダーは珍しくありません。
けれど、これは既存の取引ルートだけでは応えられないことが多い要望です。

この記事では、そのときにどうやって業者を探し、交渉し、実際に採用まで持っていったかを、実体験ベースでお伝えします。


既存の取引先だけでは対応できない理由

内装の仕事では、材料や造作物を発注する業者はある程度決まっています。
効率よく、安定した品質で納品してもらうためには、それは合理的なやり方です。
けれど「その土地ならではのもの」「量産品にはない手仕事の温かみ」は、そもそも既製のルートに乗っていません。
このときも、まずはいつも取引しているファブリックメーカーに問い合わせてみました。
納期は確かに早い。けれど、コストは工房に頼む場合の倍近くになることが分かりました。
しかも仕上がりは機械縫製です。
同じ「地域性を表現したい」という要望に応えるはずなのに、機械で一気に仕上げたものでは、一針一針手間をかけたものとは何かが違う気がして、正直なところ納得がいきませんでした。
一方で最終的にたどり着いた工房は、100人近くの刺し手さんがそれぞれ手で縫い上げているところでした。
効率だけを追えばファブリックメーカーに頼むのが早いのに、あえて時間もコストもかけて手仕事にこだわる。そこに触れたとき、これこそが施主の求めている「本物のご当地感」だと確信しました。
既製のルートだけを見ていたら、この選択肢には出会えなかったと思います。

ステップ①:探し方 — 「今も続いているか」で絞り込む

まず私がやったのは、ネット検索でその地域の伝統工芸を探すことでした。
ただし、ただ検索して出てきたものを片っ端から当たったわけではありません。
意識していたのは「昔ながらの作り方を、今も続けているかどうか」という基準です。
伝統工芸と名乗っていても、実際には後継者がいなかったり、小規模すぎて商業案件の量に対応できなかったりするところも少なくありません。
「今も続けている」ことは、技術が途切れていない証拠であり、これから先も安定して取引ができるかどうかの目安になります。

青森のホテル案件では、この基準で検索し、津軽地方に古くから伝わる「こぎん刺し」という伝統的な刺し子の技法を、今も受け継いでいる小さな工房にたどり着きました。
数ある候補の中からこぎん刺しを選んだ理由は、単に「その土地に伝わるもの」というだけでなく、幾何学模様が特徴的で、量産品にはない独特の意匠性があったからです。
ホテルという空間に取り入れても浮かず、むしろ「青森に来た」と感じてもらえる象徴になると考えました。
地域性を出したいという要望に対して、ただ地元産というだけでなく、デザインとして成立するかどうかも合わせて見ていました。

ここから先は

1,136字 / 3画像

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?