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銀座アルゴ事件

    とある日の夕方、一本の電話が入ってきました。

    1.第一部

    それは女性の声で、

    「銀座アルゴ※ですが、注文の背広ができましたので、受け取りに来てください。」

    というものでした。

    ※なお、店名は当時の記憶に基づくもので、現存する同名の店舗とは無関係です。

    伝言先は当時の上司。
    でもその時上司は席を外していたので、隣にいた出向者の一人に、

    「なんか上司に、”銀座の女性”、から、”できちゃったんで”、”来てください”って電話がありましたよ。」

    と話したわけです。

    するとその出向者は「なんだって⁉」と色めき立ってしまったわけです。

    もちろん本当のこともすぐ後に話しましたが、最早事実などは問題ではないわけです。

    こんな面白い話を放っておくわけがない。職場は大騒ぎになりました。
    これには部長まで乗っかって上司をからかい始める始末。

    念のため、そこに悪意は微塵もなかったことは申し添えておきます。

    2.第二部

    ここで終わらないのがこの話。まさかの第二部です。

    後日の夕方、銀座アルゴから、多分同じ女性の方だったのでしょう。

    「背広のお直しの件ですが、出来上がりが予定より延びそうです。」

    との電話が入りました。

    で、またも隣にいた同僚に、

    「またあの女性から、”予定日が延びそう”、と電話がありましたよ。」

    と話したわけです。

    完全に「火に油」ですよね。職場再び大盛り上がり。
    ムーブは止まることを知りませんでした。

    3.本件のオチ

    しかもこの話にはなんとオチがあります。

    後日の午前、例の同僚が話しかけてきました。

    「なあ、あれ、例の背広じゃないか?」

    で、私は、

    「そうかもしれませんね。でも散々いじっちゃったから、そっとしておきましょうか。」

    として見逃していたわけです。

    そしてその日の昼、皆で昼食に出かけるとき、上司から、

    「これこれ、例の背広!」

    と言ってきました。

    聞けば、絶対突っ込まれると思って想定問答まで準備していたとのこと。

    それを聞いて、我々としては、

    「うわぁ、さっきスルーせず聞いてあげればよかったー!」

    と言ったものでした。

    このネタ、相当気に入られたようで、1年近く擦られるネタになりました。

    4.事件解説

    時代背景として、まだ携帯電話が普及していなかったということもありますが、私的買物の連絡先を職場にしてしまったという、ちょっと今では考えられない状況であったことがあります。

    そして上司の最大の不幸(?)は、

    「電話をとったのが私であったこと」

    にあるのは最早明確です。まあそこは認めましょう。

    見てわかる通り、私は嘘をついていません。

    想像の余地を残す形で「編集」しただけです。

    それだけでこれほどのムーブメントが起きるとは私も想像していませんでした。

    まあ、色事ネタはみんな大好き、ということなのでしょうね。

    実のところ、

    ①「銀座」「女性」「できちゃった」「予定日が延びた」

    これらのワードそれぞれがパワーワード過ぎた(全部揃わなくても充分強い)こと。

    特に「銀座の女性」のインパクトが強く、これが騒ぎのトリガーとなったと言っても過言ではないでしょう。

    ②私があえて「何が(できたのか)」を省き、聞き手の解釈の余地を残して伝えたこと。
    で起きた騒ぎではあったのです。

    そしてもちろん、被害者(?)たる当時の上司もまたそれをネタとして受け入れ、その空気を止めなかったという、上司の度量の元にこのムーブメントは成り立っていたということは言うまでもありません。

    大変おおらかな職場だったのです。何と言っても組織の長たる部長まで乗っかってきたくらいのものですから。

    なお、私の眼からは、上司をからかっている時の部長は、仕事をしている時の100倍くらい楽しそうであったことを申し添えておきます。

    5.現代での再現性

    本件、時代的文脈を背景に起こった事件ではありますが、現代でも同様の形で起こり得るものではあります。

    なぜならこの事件を構成する基本要素は、情報の、

    「編集×解釈×拡散」

    のたった3要素だけだからです。

    時代背景なぞ全く関係なく起こり得ることがわかるでしょう。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    自分の知性が社会のどこまで届くのか、試しています。 違和感を拾い、その奥(構造)を考える。 組織、社会、言葉、エンタメ、製品など、ジャンルを横断して思考します。 タワマン理事長経験あり。 “Alive, therefore I live.” #思考 #組織論 #社会 #エンタメ

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