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異海 #10 BONP-00016DB ワライガミ

    ワライガミ

    画像
    海中にて撮影

    生態

    識別コード:BONP-00016DB
    通称 ワライガミ 危険度B(複数に致死性被害の可能)
    体長1.3〜1.7メートル

    下半身はアザラシなどの海洋哺乳類と類似し、上半身は女性に酷似している。しかし、人間でいう二の腕に当たる部分は胴体と癒着しており、肘から先がアザラシの前肢のような形状をしている。
    頭部の毛と腰にかけての毛皮が一部繋がっており、後述する夏眠の際に、丸まった姿勢の時全身を保護する役割を果たすと考えられている。
    エラなどは確認できず、海上に呼吸のため浮上したり、冬季の流氷の上で休む姿も確認できることから、肺呼吸に近い構造をしていると考えられる。
    夏季は流氷がなくなるためか、夏眠を行なっていることが確認されている。
    夏眠をしているワライガミは上半身を前屈し、下肢を抱え込むような姿勢をとり、自身の周りに空気の膜を作る。
    この空気の膜は浮かぶことなくワライガミの周辺に留まり、その状態で海底に複数体で固まって越夏する。
    この空気の膜を採取したところ、空気と海水の狭間に微生物らしきものを確認できたが詳細は不明。
    ワライガミは好奇心が強く、群れで行動する。
    空気を水中で可変的に扱うことができ、泡を操って魚を捕らえることに使うことがある。
    調査隊員にも有効的に近寄り、一見笑顔のような表情を浮かべているが、ボートを転覆させる死亡事故や、研究所での不用意な接触による殺傷事故も起こっており、決して友好的な生物ではないことに注意が必要。
    また、人語発することもあるが、一部鳥類と同様に、音声の複製である可能性が高く、意思疎通ができる可能性は低い。

    遭遇マニュアル

    調査用ボートでワライガミに遭遇した場合、即座に発煙筒など強い光と音を出して威嚇し、一定の距離を取ること。
    どれほど友好的な態度を示されたとしても決して話しかけないこと。
    また隊員同士の発話も禁止。ハンドサインなどで対応すること。

    俗称

    ワライガミという俗称は、笑っているのに噛むという警告から名付けられた。
    流氷の上でくつろいでいる姿は愛らしく、大福、桜餅などの愛称もあるが、被害を受けた隊員などからはサイコパスど畜生などの蔑称で呼ばれることもある。

    事故報告レポート

    ◼️◼️◼️◼️年◼️月◼️◼️日、研究施設内にて発生
    発見者 清掃担当員
    被害者 ワライガミ担当研究員

    事故状況

    夕刻、廊下の清掃を行なっていたところ、ワライガミの鳴き声と悲鳴が聞こえたので、緊急無線を飛ばし、現場に急行。
    ワライガミの飼育エリアに入ったところ、本来閉鎖されているはずの水槽内に人間と思わしき影を発見。水を抜いたところ、衣類から研究員であろうと推測された。
    その後、水槽内に落下していたカードキーからワライガミの担当をしていた研究員と判明。
    研究員の遺体は激しく破損しており、いたるところに咬傷の跡が見られた。
    ワライガミに怪我などはなく、新規の水槽へと速やかに移送された。
    その際、複数の語にわたる文を話したとの報告もあがっているが、移送後、そのような兆候は見られなかった。

    事故原因の究明

    本来ワライガミの水槽の上部には格子状が嵌められており、研究員が不用意に落下する可能性はない。
    しかし、事故当時は給餌用の扉が開けられており、そこから当該研究員は落下したものと考えられる。
    事故の時間帯に給餌の予定はなかったが、扉の鍵が持ち出されており、当該研究員が自ら扉を開け、飛び込んだと推測される。

    今後の対策

    以上の調査結果から、給餌扉の鍵は施錠された棚に保管し、必ず上長か副上長の許可を得て鍵を持ち出すこと。
    給餌は2名以上で、実験時以外での発話、話しかける行為は禁止とする。

    ワライガミ担当研究チームに対する聞き取り調査記録

    ◼️◼️さん(被害者)ですか?そうですね……責任感のある人でしたよ。
    異海生物の解明にも熱心で、なにより生き物が好きな人だったから。
    ……だからこんな事故が起きたのかも。
    あ、いや……死んだ人を悪く言いたいわけじゃないんですけど、◼️◼️さんすごくワライガミの知能に注目してて。よく話しかけてたんですよ。
    ヨウムとかも言葉の意味を理解してるじゃないですか、ワライガミも実はそうなんじゃないかって。
    それで実験外でもたびたび話しかけてて。
    最初はただのオウム返しだったんですけど、確かにシチュエーションにあった言葉を返す時もあって、知能の片鱗を感じることはあったんです。
    ワライガミも◼️◼️さんを認識してるみたいで、私とか他の研究員が実験する時より、◼️◼️さんが近づいた時の方が発語が多かったです。
    懐くというか、表情や甘える仕草も多かった気がします。
    でも、ある時から違和感がありました。
    ワライガミに話しかけてる時、◼️◼️さんの言葉に変な音が混ざるようになったんです。キャーだか、キャハだか甲高い変な音。
    その、ワライガミの鳴き声みたいな……。
    そしてだんだん話しかけてるんじゃなくて、ワライガミと会話してるみたいになって。
    言葉が溶けていくんですよ、ワライガミの鳴き声と日本語が溶けて変な言葉みたいなものになっていって。それを指摘しても自覚してないみたいで。
    上長には報告済みで、もう少しデータが取れたら安全プロトコルを受けさせようって話してたのに。
    はい……この仕事が危険なのは承知しています。
    はい、大丈夫です。
    ワライガミの知能ですか?
    比較的高いと思います。シチュエーションと言葉を繋ぎ合わせて理解はできるようで、ある程度こちらの言葉に反応することがあります。
    ただ、だからといって近づきすぎるのはダメですね。
    清掃員の方に聞いたのですが、ワライガミが◼️◼️さんを食べていた時にこういってたそうです。
    「かわいい、◼️◼️、おいしい」って。

    当該研究員とワライガミの会話記録音声は研究用に保管されている。
    部署の上長の許可を得た時のみ視聴可能だが、必ずヘッドホンやイヤホンで視聴すること。
    スピーカーでの視聴は禁止する。

     
     
    海洋異常事象監視局は、特異海域(通称異海)の調査及び研究を行う機関です。 異海とは千島列島北方に出現した異常特性海域であり、未知の生物が複数確認されています。 異海についての調査記録、研究結果については随時更新予定です。

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