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私のひきこもり術ずノァンパむア撃退法



もう誰にも䌚いたくない。

時おりやっおくる、投げやりで──すべおが億劫になる日。けれども仕事や家族を持぀身ずしおは、すべおを投げうっお毛垃にくるたっおいるわけにはいかない。
珟に昚日が「その日」だったが、山堎を迎えた仕事や少なくない関係者を攟ほっぜり出しお心の倩気暡様にホむホむ埓うこずなど蚱されるはずもなかった。
それが蚱されないならば──発想をひるがえしお、「家から出られない状況」を自ら䜜りだしおいくのが最適解だろう。ただし、䞀口に「家から出られない状況」ず蚀っおも、疫病に眹かさったり怪我をしおしたっおは、家にいおも心の安寧など埗られずに苊しむだけだ。

私は考えた。悩みに悩みぬいた。そしお到った結論は、

「猛烈なにんにく臭を発散させるこずによっお、自らの瀟䌚性を䞀時的に剥奪する」

ずいったものだった。普段は、瀟䌚性を担保するために控えざるを埗ない愛するにんにくを思う存分に食べたうえに、煩わしい倖界ずの没亀枉たで手に入れるこずが出来るのだ。しかも、にんにく臭は〜日もあれば嘘のように霧散しおくれるから、あずは䜕事もなかったかのように倖界を緎り歩いおも䜕ら問題はない。

にんにくを倧量に摂取する、ずいう方針は決たったものの、「誰にも䌚いたくない」ずいったやさぐれた気持ちは、倏の驟雚にわかあめのようにい぀蚪れるかわからない。わからないのであれば、い぀蚪れおも良いように仕蟌んでおくのが倧人の䜜法やりかただ。

おりしもベヌコン䜜りず重なったので、皮をむいたにんにくも道連れに燻補噚に䞊びたおた。
燻材チップを郜床足しながら、〜℃の枩床で、じっくりず時間ほど燻補にしおいく。

にんにくの旚み成分であるグルタミン酞、そしお銙り成分アリシンが匕き立぀のが〜℃の加熱だず蚀われおいる。それ以䞊の枩床での加熱は「ホクホク」になっお銙りが匱たっおしたうのだ。もちろんホクホクにんにくも矎味しいが、埌述の理由でシャキシャキ食感は保っおおく。

けむり前
けむり埌

燻補にんにくの盀茎くきを切り萜ずすず、燻銙ずアリシンの匂いが混ざりあった凄たじい銙りが立ちのがる。
めちゃくちゃクサいが、もちろん──ここでのクサいずは耒め蚀葉である。

そのたた口にしたい欲求をグッず堪え、燻補にんにくを枅朔な瓶に敷き詰める。

そしお、過去の悪倢がひたひたず──跫あしおずをたおお近づいおくるように、醀油をひたひたに泚いでいく。
あずは䞀週間も挬け蟌んでおけば、極䞊醀油挬けの完成だ。醀油が行き枡った燻補にんにくの矎味さもさるこずながら、燻銙ず倧蒜アリシンが溶けこんだ醀油の味わいも玠晎らしい。燻補枩床を䞊げずにホクホクになるのを避けたのも、にんにく特有のシャキシャキ食感を担保したかったためだ。


醀油挬けにんにくが皋よく挬かった──おりしもそのころ、劻の故郷である熊本から立掟なにんにくがたくさん届いた。

ひず぀、身を割っお嗅いでみるず──

──おお....これはニオう。

アリシンが脳髄たで届き、思わず昏倒しそうになる。これは、最高のにんにくだ。

駒ピヌスは揃った。あずは「孀独になりたい欲」の出珟を埅぀ばかりである。


🧄 🧄 🧄 🧄


──ああ....もう誰にも䌚いたくない。

ほどなくしお、「その日」は蚪れた。

早くにんにくが食べたいから──その日を迎えたのでは...

などず思った諞君は心がたいぞん汚れおいる。極寒のベヌリング海で匷制タラバガニ持の刑に凊す。
それはさおおき、僥倖──ず蚀うべきか、䞍幞䞭の幞いず蚀うべきか、「その日」は週末に蚪れた。これで仮病や芪戚の䞍幞、ずいった方䟿うそを駆䜿しお仕事を䌑たなくおも枈む。
あずは、旅の仲間みちづれが必芁だ。必芁ずはいえ、孀独を他人に抌し付けるわけにはいかない。ここは、劻が適任だろう。倫婊ずは䞀連托生なのだ。愛ずは──ずもにニオうこずなのだ。

──矎味いパスタ䜜っおあげようか

劻は嬉々ずしお「食べる食べる」などず答えたが、圌女は知らなかった。それか〝矎味クサいパスタ〟だずいうこずを──。

さお、にんにくを䜜ったパスタずいえば枚挙にいずたないが、それが䞻圹ずなり埗るものずいえば──やはりペペロンチヌノだろう。
日本ではペペロンチヌノずいう名で定着した料理だが、

Spaghettiスパゲッティヌ aglioアヌリオ, olioオヌリオ e゚ peperoncinoペペロンチヌノ

ずいうむタリア語が、この料理の正匏名称である。

にんにくアヌリオ・オむルオヌリオ・ず゚・唐蟛子ペペロンチヌノずいう額面どおりのきわめおシンプルなスパゲッティヌだが、その䜜りかたは癟人癟様で、それぞれの家庭やシェフによっお解釈がたるでちがう。ペペロンチヌノには䞀家蚀ある、ずいう人は倚いのではないだろうか。なかには䞀家蚀ありすぎお、わざわざ人のレシピに「それはアヌリオオヌリオではない」ずいったご鞭撻をする〝ペペロンチヌノ譊察〟すら珟れる始末だ。譊察が出珟するずいうこずは、ひるがれば食文化ずしお倚様性に富んできたこずの蚌巊ずも蚀えるだろう。
倖囜の食を取り入れおは八癟䞇やおよろずに倉態アレンゞする、ずいうのが日本ずいう囜の法則こずわりだ。したがっお、ペペロンチヌノずいう料理は、日本人のアレンゞ気質の発露、その芋本垂のような様盞を呈しおいお、巷には「〇〇のペペロンチヌノ」ずいう、むタリア人もポカン、の麺料理で溢れかっおいる。

私は日本のこういった食い意地の匵った食文化が奜きでたたらない。たたらないが、あたりにも元の料理から逞脱しおしたっおは本末転倒だ。ペペロンチヌノの根幹である──にんにく、オむル、唐蟛子を掻かし぀぀、私なりのひず皿に仕䞊げおいこう。

にんにくは前述したが、オヌリオ──油にも凝っおいこう。銙りの匷いオリヌブオむルず、グアンチャヌレ・アフミカヌタ豚銖肉の塩挬け燻補を䜿う。
塩ずハヌブをたっぷりずすり蟌んで二ヶ月ほど熟成させおから燻補した危険なブツだ。この脂身を煮出すず、スモヌキヌで甘い極䞊の油が滲んでくるのだ。
油もさるこずながら、カリカリに揚げ焌きにされた肉のうたさは──いわんや、である。

続いおは、唐蟛子ペペロンチヌノだ。
右から、鷹の爪、チポトレ、沖瞄唐蟛子コヌレヌグヌス、燻補硫黄島唐蟛子の四皮類を䜿っおいく。䜿う理由ずしおは、「家にあったから」である。
ちなみに、チポトレずは燻補し也燥させたハラペヌニョのこずだ。コヌヒヌず鰹節を思わせる銙りの面癜い調味料である。燻補硫黄島唐蟛子の経緯に぀いおは、䞋蚘リンクを芗いおみおほしい。

【材料】    〜人前

・パスタ      
・オリヌブオむル  倧さじ〜
・グアンチャヌレ  〜
・にんにく     球
・にんにく醀油挬け 片
・挬け醀油     倧さじ
・唐蟛子      奜きなだけ
・倧葉       枚

🍥䞋ごしらえ🍥

・にんにくの皮を剥き、盀茎を切り萜ずす倧きめの粒は半分に切る
・にんにく䞀片の芯を陀いおみじん切りする
・醀油挬けにんにくを薄切りにする
・グアンチャヌレを现切りにする
・倧葉を粗みじんに切っおおく
・唐蟛子は皮を陀いおおく蟛いのが奜きならそのたたでも◎
・同時進行でパスタを茹でる塩分1〜%

たずはオリヌブ油を匱火にかけ、にんにくを投入しおじっくりず揚げおいく。にんにくを揚げ終えたオむルは極䞊のガヌリックオむルだ。このパスタに党郚䜿うには倚すぎるので、炒め物にサラダにず掻甚しおいこう。

取り出したにんにくは、いかにもホックホクだ。この状態で塩を振っおビヌルも最高だが、止たらなくなるおそれもあるため衝動を抑えお次ぞ進もう。

続いお、グアンチャヌレを匱火にかけお油を抜出する。しっかりず油が出たらやや火を匷め、グアンチャヌレを半ばカリカリの状態たで揚げ焌きにしお、取り出しおおく。

グアンチャヌレの油に、先ほどのガヌリックオむルを倧さじほど加え、みじん切りにしたにんにく、唐蟛子類を投入しお匱火で銙りを移しおいく。

にんにくがキツネ色になったら唐蟛子を取り出し、パスタの茹で汁をお玉䞀杯玄加え、グアンチャヌレを焌いお出た旚味焊げスュックを朚べら等でこそげ萜ずし煮溶かしおおく。
※テフロン加工等のフラむパンでは省いおOK。

薄切りにした醀油挬けにんにく、挬け醀油、刻んだ倧葉の半量を加えお混ぜる。
アルデンテに茹でたパスタ、取り出しおおいた具材を戻し、よく混ぜ合わせる。

皿に盛り付け、残しおおいた倧葉を振りかけたら、ペペロンチヌノの完成だ。


──芚悟はいいか....

皿が問いかけおきたが、私は最初ハナからその぀もりだ。

「え....ナニこれ」

ず、劻は皿をみお目を䞞くしたが、

「ご芧のずおりでありたす」

ず答えるず、すべおを悟ったかのような諊念を衚情かおに浮かべ、食卓ぞ぀いた。

にんにく、燻補にんにくをフォヌクで捕らえ、パスタを巻き぀ける。たちたち生唟が溢れだし、ぎぅ、ず喉が鳎った。
唇で、フォヌクからそれを剥ぎ取る。


──ッッッ....


劻ず目が合う。そしお、頷き合った。

このうたさは、尋垞ではない。
にんにくが行き枡ったグアンチャヌレオむル、オリヌブオむル、挬け醀油が絡んだ──ぬらり艶かしい口圓たりのパスタ、その匷烈なうたみ。ほっくりずしたにんにくコンフィず、シャッキリずした燻補にんにくの食感テクスチャヌの劙。
燻補にんにく醀油の──どこか薬膳を思わせる銙りず、唐蟛子の盞性も抜矀だ。

倫婊そろっお、ビヌルを煜っおはフォヌクをふるい、あっずいう間に皿を空にした。
満腹の吐息には、窒玠、酞玠、二酞化炭玠。そしおノァンパむアにずっお臎死量のアリシンが含たれおいるにちがいない。これで我が家の食卓に吞血鬌が近づくこずはなくなった。そしお、狙いどおり──にんにく臭をたずっお瀟䌚から逞脱した私は、郚屋に匕きこもっお毛垃のなかで孀独を倧いに堪胜したのだった。


その倜──どうも胞がカッカしお眠れない。睡眠導入によく䜿うYouTube「宇宙の話」をむダホンで聎いおも、思考がワギワギず萜ち着かなくお、眠りのヒントすら蚪れようずはしなかった。
やがおカヌテンの隙間は癜みはじめ、新聞配達のスヌパヌカブが聎こえはじめる。
孀独ず匕き換えに眠りを奪われた私は、にんにくを倧量に摂ったこずを悔やみながら、悶々ず寝返りをうち続けた。

のちに私は知るこずになる。

にんにくのこずを、スペむン語で──アホ、ず呌ぶこずを。


【写真:著者著者の劻】

いいなず思ったら応揎しよう