
働き者。|白い天井と、消えないための私たち
カタカタカタカタ。
キーボードを叩く音だけが、空間に響く。
私は無表情で、無彩色の液晶とにらみあい、
ただ目の前に与えられたノルマを無感情で遂行する。
冷たく、つまらない日々。
目を凝らしすぎたせいで、目の奥がずん、と重い。
目薬をバッグから取り出し、上を向いた。
なぜ、会社の天井はみな白いのか。
一瞬そんなことを考えて、すぐ現実に引き戻される。
目をギュッとつむって、しばらく考えていた。
次、先輩から頼まれたタスクがあるな。
あーでも、休みの人の仕事急ぎだったよな。
あーもう、目を開けたくないな。
目を開けたら、必殺仕事人みたいに
冷酷にタスクをキルしていかなきゃいけないな。
必殺仕事人の方がよっぽどか人間味あるな。
なんて頭で考えながら、しぶしぶ目を開けた。
また私は、マシンのようにパソコンのキーボードを叩く。
私、なんのために働いているんだろうか。
私はずっと考えていた。
休むことは、悪なのだろうか。
プライベートを優先することは、意識が低いということなのだろうか。
そもそも、仕事を頑張ることは正義なのだろうか。
ワークライフバランスを整える動きが、
日本社会に根付いてきたと言われているが
私のところまでは、その吉報は届いていない。
休む人は、白い目で見られる。
プライベートを優先する人は、昇進はできない。
仕事を頑張る人が、素晴らしい人間。
これが、現実。
私の本音は、こうだ。
「仕事のために、生きているわけじゃない。」
稼いだお金は、休んでちゃんと使いたい。
せっかく生まれてきたのだから、人間らしく自由に生きたい。
仕事は制約が多い。
完璧に遂行することが求められすぎている。
人間は失敗する生き物。なのに、許されない失敗。
その社会のせいなのか、
日本人はみんな性格が悪いんじゃないか、と
私は思っていた。
結論から言うと、
日本人はみんな性格が悪いんじゃないか、という
私の仮説は間違っている。
本当は、人にやさしくする余裕がなくなってしまったのだ。
いまや、新しいものが光のような速さで生まれ、
古いものは人知れず消えていく。
白い天井の部屋の中で、
消えないためにみんな必死なのだ。
私は、ただ思ってしまう。
人間がもののように使い古される社会ではなく、
人間らしさが価値として、残る社会になってほしい、と。
人間は、ラクをしたくなる生き物だ。
人間らしく生きることは、贅沢なのか。
私はあと何回、
「なんのために働くのか。」
自分にそう問いかけるのだろう。