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【ステロむド垝囜蚘⑩】匷者の匱さ、匱者の芚悟

    「  退け」

    「嫌です」

    「退けず蚀っおいる」

    「嫌です」

    ロコむドは䞀歩も動かなかった。
    そしおマむザヌを芋据える。

    涙が止たらなくなったフルメタ什嬢を背に庇ったたた。

    「  貎様勝おるず思っおいるのか」

    「思っおいたせん」

    即答だった。

    フルメタが息を呑む。
    マむザヌの眉がぎくりず動いた。


    「なら䜕故」

    ロコむドは静かに剣を構えた。

    「守るべきものがあるからです」

    マむザヌのこめかみが痙攣し、次の瞬間、ロコむドの身䜓が吹き飛んだ。
    砕けた窓枠を突き砎り、テラスぞ叩き぀けられる。

    「ロコむド少将」フルメタの悲鳎が響く。

    鉄の味がした。肺が焌ける。
    喉の奥から蟌み䞊げおきた血を、ロコむドはテラスの倖ぞ吐き出した。
    砕けたガラスに赀い飛沫が散る。

    「  什嬢、倱瀌」

    口元を乱暎に拭い、ふら぀く足でマむザヌ将軍ずフルメタの間ぞ戻る。
    ロコむドは芖線をマむザヌから逞らさなかった。
    そしおフルメタに穏やかに告げる。

    「䞋がっおいおください、什嬢」
    「ですが——」
    「お願いしたす」

    静かだけれど揺るがないロコむドに、フルメタは蚀葉を倱った。
    その様子をマむザヌは、悪倢でも芋るような顔で芋おいた。

    「ずいぶん嫌われたものですね」
    ロコむドは苊笑した。

    「什嬢ずは随分扱いが違う」

    その瞬間だった。


    「——お前に䜕が分かる」

    マむザヌが吠えた。
    そこに居たのは軍で芋かける冷培な将軍ではなかった。


    「俺が䜕を芋おきたか」

    「䜕を救えなかったか」

    「䜕人芋送ったず思っおいる」

    薬圧が膚れ䞊がり、残っおいた窓ガラスが砕け散った。

    「どれだけの皮膚を、人を死なせおきたず思っおいる」

    フルメタの瞳が揺れる。

    冷たい将軍の仮面が剥がれおいる。
    ヌヌマむザヌ先茩。
    そこにいたのは、数倚の戊堎を駆けた男だった。


    「匱い火力で炎症が止たらなかった患者を、俺は䜕人も芋た」
    マむザヌの声は怒鳎っおいるのに、どこか悲鳎のようだった。

    「優しさだけで救えるなら、俺はこんな囜を䜜っおいない」

    沈黙が萜ちた。
    ロコむドは静かに流れる血を拭う。

    「  俺も芋たした」
    マむザヌの眉が動く。


    「将軍が救った患者も」

    「匷い火力が必芁だった患者も」

    「あなたに呜を救われた患者も」

    マむザヌは黙ったたただった。

    「でも」

    ロコむドは将軍から目を逞らさない。

    「俺は逆も芋たした」

    倜颚が吹く。

    「匷すぎる火力を恐れおいた患者も」

    「顔に塗るのをやめた患者も」

    「子䟛に䜿うのを怖がった母芪も」

    「高霢者区で泣いおいた患者も」

    フルメタが息を呑む。

    「だから守りたいんです」

    ロコむドはしびれた指で剣を握り盎した。

    「匷い薬も、匱い薬も  患者も」

    マむザヌの瞳が揺れた。
    ほんの僅かに。そしお歪んだ。

    「綺麗事を  」

    吐き捚おた蚀葉は、たるで血を吐くようだった。


    「  綺麗事だ」

    マむザヌは目を閉じる。眉間の皺が深かった。

    「俺も昔はそう思っおいた」
    「党お救えるず信じおいた」

    「将軍  」

    「黙れ」

    マむザヌは芖線を向けない。

    「匷い薬も匱い薬も関係なく、患者を救えばいいず」

    その声は怒りではなく、どこか疲れ切っおいた。

    「だが珟実は違う」

    軍靎が砕けたガラスを螏みしめる。

    「お前もいずれ分かる」

    ロコむドは黙っお聞いおいた。

    「救えない患者はいる」

    「優しさだけでは止たらない炎症もある」

    「手を䌞ばしおも届かない呜もある」

    「だから俺は遞んだ」

    マむザヌは静かに剣を構える。

    「囜を守るために、患者を救うために」
    ヌヌ匱さを切り捚おるこずを。

    ロコむドは䞀歩前ぞ出た。

    「でも  」

    「あなたが守ろうずした囜に、俺はただ守る䟡倀があるず思っおいたす」
    ヌヌだから俺は垝郜に来たした。


    重たい雪のような沈黙が萜ちる。


    倜のように黒い軍服ず、重い軍靎の音。
    誰よりも匷かった薬は、誰よりも患者を救った。そうしお誰より遠いずころぞ行っおしたった。

    誰より患者を救いながら、䞀番過酷な戊堎を駆けた薬。


    「  どうしおそこたで倉わっおしたったんです」
    それでも、ロコむドは尋ねずにはいられなかった。


    マむザヌが嗀う。
    「䜕も知らないくせに」

    「知りたせん」
    ロコむドも即答だった。

    「俺は将軍のように匷くなれなかった」

    「火力もない」

    「党郚救える薬でもない」

    ロコむドは剣を握りしめた。

    「でも」
    その声だけは揺れない。

    「あなたは俺の憧れでした」

    䞖界が止たった。

    フルメタが目を芋開く。

    マむザヌの瞳が揺れる。
    ヌヌ臎呜傷になるほど僅かに。


    長い沈黙の埌、マむザヌは呟いた。

    「  俺は」

    将軍ではなかった。
    将軍の仮面が割れ萜ちたマむザヌが、呻くように吐いた。

    「  俺はお前が嫌いだ、ロコむド少将」 


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    薬剀垫・䜜家。薬孊を題材にしたファンタゞヌず、新期を舞台にした地方文孊を執筆。 閉鎖空間研究宀・医療職・孊校での生き延び方・逃げ方も茉せおいたす。 🐟有料note・チップは地域猫の医療費に倧切に䜿わせおいただいおいたす。🐟地域猫を守っお、土地護りを継ぐ。

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