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Photo bymogushiba2023

陽太が猫になった理由(12)

    12.猫vs犬

    死のグループ初戦が、早速決まった。川崎キャッツアイvs横須賀ドッグランだ。

    ジュニアユースのグループ戦ながら、会場は異例の観客動員数を記録した。

    地方ケーブルテレビのスタッフが、観客にマイクを向けた。

    「そりゃあ、青田買いですよ。未来の日本代表戦が、今から楽しみです。」

    と、観客は老若男女共、信じられないほどの期待を、二人に寄せた。

    その上どういう訳か、目黒陽太と犬田郁夫のグッズが、勝手に作られた。

    そして、勝手にバカ売れした。しかし二人共心の中ではこう思っていた。

    「元に戻ったら凡人なのに、どうなるんだろうか?」

    という、大きな不安の影響で、猫の中の陽太や、秋田犬(名前は揚げ玉)の中の郁夫には、異変が起こった。

    それぞれの肉球が冷や汗で、みるみるびしょ濡れになってしまった。

    モフモフは肉球でしか汗をかけないので、両者は大量の汗で滑りそうになった。

    「何で揚げ玉のお手手から、大量の汗が流れているんだろ。」

    美月と違い、入れ替わりには全く気が付いていない、秋田犬・揚げ玉の飼い主は、驚いてしまった。

    揚げ玉の飼い主は事情を知らず、心配そうに冷や汗を、フェイスタオルで拭っていた。

    それぞれの体の中に入っている魂二人が、元に戻った時の心配にも気付かずに。

    いきなり若手のホープとして持ち上げられた、目黒陽太と犬田郁夫。

    その第一試合。運命のキックオフ。試合開始のホイッスルが鳴った。

    キャッツアイのキャプテンが、ボールを先制するところから、ゲームは始まった。

    しかし、蹴り上げたボールは、高く上がり過ぎてしまった。横須賀ドッグランは、犬田選手の影響で、チーム全体が強くなっていた。

    チーム内の協調性の高さから、早速空中戦に持って行かれた。ドッグランの戦術に支配され、翻弄されるキャッツアイ。

    こんな中でもやれる事をとキャッツアイのFWが、冗談で犬田の耳元に、

    「ちゅーる」
    と、囁いた。

    「なんちゃってね・・・。」
    と言う事で、平常心を取り戻したが、何と犬田が舌なめずりを始めた。

    冗談半分で試しただけなのに、予想外のリアクションが出た。

    実況席からは、
    「どうしたんだ、犬田!大事な初戦でペースが乱れ始めたか!」

    急に我を忘れた、謎の犬田のリアクション。ドッグランのチームメイト達は、焦って声を掛け続けた。

    「いつまでも舌なめずりはヤメレ!」

    「いつも通り、真面目にやれ!」

    「普段はそうじゃないだろうが⁉」

    と、無作為な方向にしか、ヘディングを返さない犬田に、チームは狼狽した。

    ちゅーるはイッヌにとっても、麻薬的なおやつらしい。冗談で言った事が、効果的に嵌ってしまった。

    そして試合の流れは、一気にキャッツアイ有利に転がった。

    しかしそれでも、横須賀ドッグランは、犬田がいない前提のフォーメーションに、素早く切り替えた。

    そのまま、一進一退で、0-0のまま、最後のアディッショナルタイムを迎えた。

    川崎キャッツアイは、円陣を組んだ。キャプテンが陽太とメンバーに話しかけた。

    「みんな、ここは取れるぞ。犬田の不調から、空中戦が効かなくなっている。ここはもう陽太、お前の出番だ。良いな。」

    「おう!」

    エース不在なら、実力的には勝ち筋を見込める、横須賀ドッグラン。

    ここぞとばかりに、川崎キャッツアイのプレイが光を放った。

     
     
    面白い事、音楽の事、シリアスな話が好きです。埼玉県と栃木県のハーフです。 好きなアーティスト:エド・シーラン、シズクノメ。 好きな小説家、ライター:星新一、バカリズム。

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