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{エッセイ}古本屋巡り

    ある街で古本屋を巡る機会があった。
    大手のではなく、個人で経営されているお店。

    世界中にこんなに本というものが溢れているのか、
    と思うほど、どの店内も所狭しと本が置かれていた。
    本が「在る」ではなく、「溢れ出ている」という表現がぴったりだと思うほどに。
    誰が取れるのかというくらい、
    高い天井まで続く棚に並べられた本。
    それはそれは綺麗に床に積み上げられ、
    通る場所もなく迷路のようになっている店。
    綺麗に並んだ本たちは圧巻であり、
    しかしどの本も「我こそは」と主張などせず、
    たた静かにそこに並び
    景色の一環のように収まるそれらは美しかった。

    随分昔に発行されたもの、
    ページがしなしなになったもの、
    表紙が色あせているもの。

    何十年も前に発行された雑誌では、
    詩の受賞者が発表されている。
    これによって人生が変わった者がいるのだろうか。

    今とはまた別の顔をしている頃の、
    街の居酒屋を特集した本。
    色鮮やかな感想、白黒な当時の店主と客の写真。
    ああ生きている、と思う。
    生きた人たちが喜び、集い、飲んだ情景を、
    撮り、書き、発行した者がいる。
    出来上がったこの本を見て、どんな人が訪れたのだろう。店主はどう思ったのだろう。
    当時の「生きた感情」が詰まっている。

    無数に置かれ、主張もしない本の、
    無機質に規則正しく並んでいる黒い活字の向こうに
    手に収まらないほど彩やかで途方もなく壮大な、
    誰かの人生と思いが広がり交錯している。
    だからこの狭い空間が、とっても大きく感じてくる。
    ここに並ぶ本はなんと謙虚なんだろうと思う。

    本はいつまでも、事実と感情を残しておける。
    伝わっていく。
    本の可能性を浴びた日だった。

     
     
    感じたこと、想ったことを形にしたい。 未熟な私の表現する世界を覗いてくださると幸せ。

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