
電気ポットとおばあちゃん
おばあちゃんちに遊びに行くと、必ずお茶を入れてくれました。
おばあちゃんちの大きなダイニングテーブルには雑多にモノが置かれていて、
新聞とか、鉛筆や定規や老眼鏡や爪切りが入ったケースとか、リモコンとか。
その真ん中に電気ポットがありました。
お茶っ葉の円柱の缶、茶こしとその下にコップ。
急須を出すのが「邪魔くさい」らしく、
おばあちゃんは湯呑みに直接茶こしををセットして、ポットからお湯をジャーっと入れていました。
大体こぼすから布巾で拭いていました。
丁寧なのか、雑なのか。
よくわからないおばあちゃんが好きでした。
そんなおばあちゃんは、
今も元気です。
亡くなったわけじゃないっす。
しんみり系を期待した人がいたら、すみません。
でも、生きてる方がいいに決まってますよね。
雲の上に、私のおばあちゃんはいません。
地上の祖母。
おばあちゃんは減るどころか
むしろ、増えました。
結婚して、
私のおばあちゃんは2人→3人になりました。
結婚して家族が増えるって、
相手と子供ってイメージでしたが、
おばあちゃんも増えるとは盲点でした。
夫のおばあちゃんも優しくて、化粧品を譲ってくれたり、お手紙をくれたりしました。
なお、私のもう一人のおばあちゃんも、ちらし寿司や赤飯を作ってくれる素敵な人です。
おばあちゃんって何人いても、いいんですね。
あ、雲の上に、まだ見ぬおばあちゃんがいました。
さっき、嘘をつきました。
夫のもう一人のおばあちゃんです。
ドラクエ6みたいな気持ちで、いつか会えたら挨拶をしますね。
話をポットに戻します。
ポットの「給湯」ボタンってモヤっとしませんか?
たぶん誰もモヤっとしてないけど、話を続けます。
湯を供給する。
あのさ、誰が誰に言ってますか?
ポットが私に湯をくれる。
でも、私がポットに水をあげたんです。
トースターから焼けたパンを出されても、
給パンとは言いません。
給湯の代わりに何と言えばいいのでしょうか。
出力。
エクスポート。
って私は水をインポートしているのか。
アップロードか。
なら、ダウンロードでもいいか。
いや、ちがう。
STARTとか?
GOとか?
どれもしっくりこない。
ここは言葉じゃなくて、「赤い丸ボタンだけ」が正解かもしれません。
言葉を捨てる勇気。
あと、直径10センチくらいの頭をぎゅ〜って押すタイプ。
それだ。グッドデザイン。
さぁ、湯を出すぞと意気込んで頭を強く押すも、できない。
ああ。と呟いて
「ロック解除」のツマミをスライドしてやり直す。
「ロック解除」に、ちょっとイラッとするけど、安全のためだしなと、10秒で許す。
逆に言うと10秒は怒る。
あの感じ、懐かしいですね。
さて、常時、熱湯を必要としていたのは、
どんな人だったのでしょうか。
来客に備えて、お茶を出せるようにしている。
それも茶葉から急須で入れる人。
自分で飲む用に、水じゃあ味気ないからと、お茶やコーヒーを飲めるようにしている人。
たぶん、家にいる時間が長い。
今みたいに共働きで12時間家を空っぽにするっていうライフスタイルでは、なかったのでしょう。
オフィスのポットはいかがでしょうか。
私が新卒で入社した会社には、ポットがありました。
急須で湯呑みにお茶を汲む、昔ながらのOLをやっていました。
転職したし、コロナもあったし、
今の会社では来客にはペットボトル。
社員用にはウォーターサーバーでお湯も出ます。
自宅で電気ケトルで湯を沸かして、スティックタイプのお茶を溶かしながら、ふと
電気ポットにノスタルジーを感じました。