
家に花が増える本当の理由。強い父の心の奥にあったもの♯4

学校から帰るたび、家の花が増えていた。
玄関にひと鉢。
ベランダにまたひと鉢。
昨日までなかった鉢植えが、いつのまにか増えている。
子どもの私は、なんでうちはこんなに花が増えるんだろうと思っていた。

ある日、母が教えてくれた。

会社の事務所に、鉢植えを背中いっぱいに抱えたおばあさんが売りに来るのだという。
父はその姿を見ると、いつも言ったらしい。

「どこから来たんだ。重かったろう」
「全部買ってやれ」
母は驚いた。
「えっ、全部?」
父は多くを語らなかったが、理由があった。

1940年前後、多くの日本人が満州へ渡った。
祖母も国内の貧しさから抜け出し、
広い土地で自立したいという切実な思いで向かった。

1942年。
父は戦時中、満州で生まれた。

戦後、日本へ戻った祖母は4人の子どもを育てるため、いろんな仕事をした。

祖母は鉢植えを売り歩くこともあったそうだ。

売れなかった日は「ごめんね」と帰り、
売れた日は食べ物を持って帰ってきたという。

父は、そんな祖母の背中を見て育った。
だから年をとった人が重い鉢植えを抱えていると、祖母を思い出したのかもしれない。
「うちは会社をやっとる。困っとる人を助けるのは当たり前じゃ」
そう言っていたと母が話してくれた。
最近、叔母から聞いた。

父は広島へ帰るたび、祖母にお小遣いを渡していたらしい。
ああ、父は親孝行したかったんだ。
家に増えていた花は、
父のやさしさだったのだと思う。
時代もあると思いますが、
人はそれぞれ違う環境で育ち、いろんな経験をしながら、その人らしさができていくのだと感じました。
人に優しくすることを、私は父から教わった気がします。

天国のお父さん、ありがとう。
感謝の気持ちは、言葉だけではなく、
別のかたちの優しさで返すこともできる。
先祖の誰か一人でも欠けていたら、
今の私はここにいません。
命はつながり、想いもまた受け継がれていく。
すべてに、ありがとう。
母から聞いた、父と祖母の記憶を書きました。
読んでもらえたら嬉しいです。
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