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それはたぶん

    とらふぐ子

    本田すのうさんの企画に、連絡も差し上げず、参加させていただきました。

    (合ってるのかな、参加の仕方……)


    やさぐれちまった悲しみに
    今日も太陽降りそそぐ
    やさぐれちまった悲しみを
    抱えてイオンでアイス食う



    1993年頃だったろうか。

    ドラマティックにSayエイエイエイ
    Love 〜

    🎶

    『夏の日の1993』が流行っていたような気もするから、たぶんその頃なんだろう。


    「ふぐちゃんは繊細なんです!でもすごく頑張ってるんです!」

    そう言っていつも庇かばってくれたマツシタ先輩。

    吹けば飛ぶよな青っちろい私を
    時にやさしく
    時に大袈裟に
    励まし続けてくれた
    マツシタ先輩。

    小柄でかわいい見かけとは違って、
    実はたけし軍団に入りたかったという
    ちょっと不思議なマツシタ先輩。

    その日もなんだかめそめそしながら
    先輩と電話で話していた。

    「ふぐちゃんと話すと楽しい!
    ふぐちゃんは1言えば10分かる!」

    そ、そうなのか?

    「もうふぐちゃんそのものが〇〇だから!」

    な、なんかすごい褒めてくれる。

    肝心の〇〇のところは覚えていない。

    百恵ちゃんの『美・サイレント』の口パクの部分みたいだ。

    あなたの〜◯◯が欲しいのです
    燃えてる〜✖️✖️が好きだから〜

    🎶

    当時、百恵ちゃんがなんて言ってるのか大いに話題になった。
    みんなブラウン管の中で歌う百恵ちゃんの口元を食い入るように見つめて、あれやこれやと推測したものだ。

    ずっと子どもの頃のこと。

    それにしても作詞の見事さよ。
    阿木耀子恐るべし。

    ……


    そう、いつだって大袈裟に、
    こちらがなんか笑けてくるくらい
    マツシタ先輩は褒めてくれた。

    そして続けた。

    「ふぐちゃんって中原中也みたい。
    そうよ!ふぐちゃんは中原中子よ!」

    意味がわからなかった。
    中原中也は学校で習ったけど、
    そんな知らないし特別好きでもない。

    どういう意味で言ってくれたのかわからないけど、私は中原中子になった。

    自分で言うのもなんだが、ポキっと折れそうなほど繊細でピュアだったから、だから先輩はそう言ってくれたんだろうか。

    確かめたいけど確かめられない。

    マツシタ先輩はある日、

    「結婚するの」

    と言って、連絡先も教えてくれないまま居なくなった。
    もともと執着のない人だった。
    思い出のモノとかもすぐくれた。

    「こういうの残さないの、あたし」


    一度だけお相手のことを聞いたことがある。 

    「怪獣みたいな人」

    そう言っていた。

    どんな人だよ。



    あれからいちにぃさん……
    30年以上経ったけど、
    先輩ごめんなさい。
    私、やさぐれました。

    夫に罵声を浴びせ、
    家を飛び出し、
    イオンでひとりソフトクリームなんか食べています。

    急に曲がってくる車には

    「ウィンカー点けろウィンカー!」

    と(聞こえないように)怒鳴るし、

    いつまでも続く理不尽な暑さには

    「ふざけんな!」

    とブチ切れます。

    そんな言葉使いしてなかったのに。
    父さんにもぶたれたことないのに。

    ゆあーん ゆよーん
    ゆやゆよん

    『サーカス』


    なんのはなしですか?

    汚れつちまつた悲しみに
    今日も小雪の降りかかる
    汚れつちまつた悲しみに
    今日も風さへ吹きすぎる

    『汚れつちまつた悲しみに』


    先輩、
    私、汚れちまって、やさぐれました。


    それはたぶん……


    ぜんぶ、更年期のせいだ


     
     
     
    言葉、お笑い(みる)、音楽(きく)などが好き。 見たこと感じたこと、ふと思ったこと、思い出したことなど、書けそうな時に書いています。

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