
蒼龍総合学園 あとがき

ここまで『蒼龍総合学園』を読んでくださって、ありがとうございます。
この物語は、神無月玲が「自分はここにいていいのか」と何度も迷いながら、それでも自分の名前を手放さずに戻ってくる話でした。
玲は最初、自分のために何かを求めることができませんでした。誰かが削れることが怖くて、誰かが傷つくことが自分のせいに思えて、「俺がいなければ」と考えることが癖になっていました。でも、そのたびに誰かが横にいた。
奏斗は手を離さなかった。美月は結界を張り続けた。遥は入学式の日、最初に駆け寄った。炎司は自分で選んで炎を使った。零夜は記憶が欠けても知ろうとした。紫苑は感情を削りながら言いたいことを言った。皇雅と千景は情報を渡した。
一人だったら消えていたかもしれない場所で、玲はここにいることを選び続けました。
存在証明という力は、使うほど玲を削る力です。でも、使わない時は玲を守ろうとする力でもありました。力は玲を消そうとしていたのではなく、玲に合った形で宿ろうとしていた。
力は玲を選んだ。
その言葉は、紫苑が魂視のあとに渡してくれたものです。玲は初めて、自分の力を怖いとだけ思わなくなった気がしました。
名前を失った龍が、何百年も孤独にいました。誰も覚えていない。名前もない。それでも存在し続けた。
玲は「零龍」と呼びました。仮の名前です。でも、呼ぶための名前があることで、龍は少し静かになった。
呼びかけることと、呼ばれることは、存在を確かめることです。
玲と奏斗の話は、まだ始まったばかりです。でも二人が少しずつ、相手の存在を確かめながら並んでいく方向に向かっていることは、書きながら感じていました。
この作品が、誰かの手に届いて、何かひとつでも残ったなら、それだけで十分です。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
夢乃 雫