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白の夢 あとがき

    白という色に向き合うとき、

    私はいつも、胸の奥に沈んでいる“ある場所”を思い出す。

    そこは、誰にも話したことのない部屋で、

    今でも扉を開けるのが少し怖い。


    この物語を書きながら、

    私は何度もその扉の前に立たされた。

    書くつもりのなかった記憶が、

    白の上で勝手に形を取り始め、

    気づけば、

    忘れたはずの影が指先に触れていた。


    人は、痛みを言葉にしないことで

    なんとか形を保っている瞬間がある。

    私にも、そういう時期があった。

    いや、今も続いているのかもしれない。


    “白の夢”という題を選んだのは、

    その痛みを直接語らずに、

    ただ白の中に沈めておきたかったからだ。

    白は、何も映さないふりをしながら、

    実は一番多くの影を抱え込んでいる。


    書き終えた今でも、

    あの部屋の匂いは、

    ときどきふいに蘇る。

    冬の午後の光、

    閉じたカーテン、

    誰かの気配だけが残った空気。

    それらは、

    私の中でまだ完全には消えていない。


    この物語のどこかに、

    あなた自身の痛みと重なる影があったなら、

    それはきっと偶然ではない。

    私が白の中に沈めたものと、

    あなたが抱えてきた何かが、

    静かに呼応したのだと思う。


    物語が終わっても、

    白の向こう側で、

    まだ誰かの影が揺れている。

    その揺れは、

    ただそこに在り続ける。


    最後まで読んでくださり、 

    ありがとうございました。 



    猿渡夢彦

    白の夢|猿渡夢彦|note

    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

     
     
    漂白された孤独と、その奥に沈む業を書いています。

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