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森のたよりを書く前に、今でも少し怖くなります

    こんにちは。
    『柚香の森』の店主です。
    4月から、noteで「森のたより」を少しずつ書き始めました。

    本のこと。
    古本屋として感じていること。
    読める日、読めない日のこと。
    一冊の本を送り出す前に、心の中でふっと動くもの。

    そういう小さな気持ちを、少しずつ言葉にしています。
    書くことは、もともと嫌いではありません。
    本を読んでいる時間と少し似ていて、自分の心の奥にあるものを、静かに探しにいくような感じがあります。

    でも、正直に言うと。
    森のたよりを書く前には、今でも少し怖くなります。
    「こんなことを書いて、読んでくださる方はいるのかな」
    「古本屋なのに、本の紹介だけをしていなくていいのかな」
    「お店として、ちゃんとして見えているのかな」
    そんなことを、何度も考えてしまいます。
    たぶん、noteを書いている方なら、少しわかっていただけるかもしれません。
    公開ボタンの前で、手が止まるあの感じです。


    文章は書いた。
    でも、本当にこれでいいのかな。
    少し大げさではないかな。
    反対に、何も伝わらない文章になっていないかな。
    そんなふうに思っているうちに、何度も読み返して、直して、また消して。
    気づけば、本のことを書いているのか、自分の心をのぞき込んでいるのか、わからなくなる日もあります。


    もう少し人間くさいことを言うと、
    「読まれなかったら寂しいな」とも思います。
    せっかく書いた言葉が、誰にも届かなかったらどうしよう。
    反応がなかったら、やっぱりこういう文章は必要とされていないのかな。
    そんなふうに、少し落ち込むこともあります。
    本当は、もっと堂々としていたいです。
    「私はこういう思いで古本屋をしています」
    「こういう本を届けたいと思っています」
    そうまっすぐに言えたらいいのに、と思います。
    けれど実際は、いつも少し迷っています。
    言葉が足りない気がしたり、逆に書きすぎた気がしたり。
    きれいに整えすぎると、本当の気持ちから少し離れてしまうような気もします。

    でも、弱いところを出しすぎるのも、少し怖いのです。
    読んでくださる方に、重たいものを渡したいわけではありません。
    弱音をぶつけたいわけでもありません。
    ただ、きれいな言葉だけではなく、今の自分の揺れも、少しだけ置いておきたい。
    そんな気持ちがあります。

    オンラインの古本屋をしていると、お客様と顔を合わせてお話しする機会は多くありません。
    店の扉を開ける音もありません。
    棚の前で立ち止まってくださる気配も、こちらからは見えません。
    だからこそ、こうして書く言葉のひとつひとつが、そのままお店の空気になるような気がしています。


    だから、急がせない言葉でありたい。
    無理にすすめない言葉でありたい。
    読んだあとに、ほんの少し心がやわらかくなるような言葉でありたい。
    そう思っています。
    けれど、その気持ちが強くなるほど、かえって何も書けなくなることがあります。


    やさしい文章を書きたい。
    でも、やさしいだけの文章にはしたくない。
    本のことを大切にしたい。
    でも、本を飾るだけの言葉にはしたくない。
    お店の印象も大切にしたい。
    でも、よく見せようとしすぎて、本当の気持ちが遠くなるのは少し違う。


    そんなふうに、いつも小さく迷いながら書いています。


    最近、よく読んでいただけた記事を見返してみると、そこにあったのは、立派なことを書いた文章というより、私自身の迷いや、できなさや、心もとなさを少し置いた文章でした。


    たくさん読めない日があること。
    実店舗がなくても、自分なりの形で本を届けていきたいと思っていること。
    大きな声では言えないけれど、それでも続けてみたいと思っていること。
    そういう、少し頼りないけれど本当の気持ちに、誰かがそっと立ち止まってくださったのかもしれません。
    それは、とてもありがたいことでした。
    そして、少し驚きでもありました。


    ちゃんとしたことを書かなければ、と思っていたけれど、もしかすると、ちゃんとしていない部分にこそ、その人らしさがにじむのかもしれません。
    本を読むことにも、正解がないように。
    文章を書くことにも、きっと正解はないのだと思います。
    たくさん読める日があってもいい。
    一行も読めない日があってもいい。
    すらすら書ける日があってもいい。
    何度も消して、やっと一文だけ残る日があってもいい。
    森のたよりも、そんな場所であっていいのかもしれません。
    きれいなことだけを書くのではなく。
    でも、誰かを傷つける言葉にはならないように。
    本音を書くけれど、読んでくださる方の心に強くぶつけすぎないように。
    小さな声で。
    でも、ごまかさずに。
    そんなふうに、言葉を置いていけたらと思っています。

    森のたよりを書く前には、今でも少し深呼吸をします。
    ちゃんと書こうとしすぎずに。
    でも、雑にはしないように。
    本に向き合うときと同じように、そっと言葉を選びます。
    まだ始まったばかりの、小さなたよりです。
    うまく育てられるかはわかりません。
    ときどき迷うと思います。
    書けなくなる日もあると思います。
    それでも、少しずつ書いていきたいです。
    本のことを通して、日々のことを。
    日々のことを通して、心のことを。
    静かな森の中に、小さな道をつくるように。

    今日もまた、少し緊張しながら、
    この文章をここに置いてみます。



    この文章は、柚香の森の「森のたより」として書いたものですが、
    ひとつの小さなエッセイとしても、そっと外へ出してみたくなりました。
     
    #創作大賞2026 #エッセイ部門


     
     
    古本のオンライン書店『柚香の森』です。店の日々や棚のこと、読書の余韻、一冊の本に残る気配、古本の小さな知識、文豪の季節を、忙しい日々のなかで心がふっとほどけるような読みものとして綴っています。

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