
踊るAIマネー 青島刑事とともに帰ってきたもの
「踊る大捜査線」が帰ってきた。
青島刑事とともに、東京を舞台にした物語が、時を経て、再びスクリーンに戻ってきた。
さて、2026年、金融市場でも、「踊っているもの」がある。
AIマネーだ。
この表現には、少し理由がある。
10月4日、Financial Timesは、AIへの投資が米国の株式市場だけでなく、社債市場にも広がっていると報じた。
米国の大型株では、3分の2を超える企業がAIと何らかの関係を持ち、AI関連企業は米国の投資適格社債市場でも約16%を占めるという。
つまり、AIは一部の半導体企業やIT企業だけのテーマではない。
株式にも、社債にも、AIに関係する資産にも、お金が集まっている。
この記事で、運用会社AmundiのCIOが引き合いに出したのが、2007年、世界金融危機の直前に語られた有名な言葉だった。
「音楽が鳴っている間、人々は踊っている」
音楽が鳴っているうちは、人は踊り続ける。
今のAI市場も、まさにそんな状態なのかもしれない。
では、そのAIマネーは、実際にはどこへ向かっているのだろう。
10月1日、Reutersは、JERA、Dell Technologies、英国のAIインフラ企業RHAELMが、千葉で約150億ドル規模のAIデータセンターを計画していると報じた。
最大400MWの電力を使い、2028年から段階的に稼働する計画だという。
AIと聞くと、私たちは画面の中のサービスや半導体を思い浮かべる。
しかし、その裏側では、
土地が必要になる。
データセンターが必要になる。
大量の電力が必要になる。
そして、それらを建設するためのお金が必要になる。
10月1日、Bloombergは、AIのコンピューティングインフラを支えるため、プライベートクレジットから約1兆ドル規模の資金が必要になる可能性を報じた。
さらに10月2日には、Broadcomを中心に、AnthropicなどのAI向け半導体を支える600億ドル規模の資金調達計画も報じられている。
ここまで来ると、AIへの投資は、AI企業の株を買うことだけではない。
融資。
社債。
プライベートクレジット。
半導体。
データセンター。
電力。
土地。
AIを中心に、金融と実物経済が大きな輪になって動き始めている。
金融業界で長年勤務してきた私は、お金は数字だけでは動かないことを見てきた。
その向こうには、必ず企業があり、人がいて、設備があり、そして社会がある。
だから今のAI投資を見ていると、少し不思議な気持ちになる。
「踊る大捜査線」では、青島刑事が東京の街をひたすら走る。
その一方で、東京周辺、お台場、千葉ではAIデータセンターの建設計画が進み、世界ではAIのための巨額の資金調達が続いている。
AIマネーは、まだ踊っている。
しかし、金融で本当に見るべきなのは、音楽がいつ止まるのかだけではない。
誰が、その音楽を鳴らすためのお金を出しているのか。
そして、
その音楽が止まったとき、誰がリスクを引き受けるのか。
AIそのものが悪いわけではない。
むしろ、AIによって新しい産業やサービスが生まれれば、私たちの生活も大きく変わるだろう。
だからこそ、投資額の大きさだけを見るのではなく、そのお金がどこから来て、どこへ流れ、誰のリスクになっているのかを見る必要がある。
スクリーンの中では、青島刑事が東京を走る。
そして現実の世界では、AIマネーが走っている。
「踊る」のは、AI企業だけではない。
銀行も、投資家も、社債市場も、プライベートクレジットも、その輪の中にいる。
そしてその先にある変化は、やがて私たちの電気代、企業の資金調達、投資商品の中身、そして暮らしそのものにもつながっていくのかもしれない。
AIマネーが踊る今だからこそ、
私たちは、その音楽だけでなく、
誰がその音楽を支えているのか、リスクはどこにあるのかを常に考えておきたいと思う。