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📕 王とサーカス|小説

    最初に購入してから3回目の読了になる、米澤穂信さんの名作です。文章の流れとテンポが良く、とても読みやすい作品ですね。読み進めていくうちに、その深みに驚愕しました。


    報道の意義を問う社会派ミステリー|あらすじ

    東洋新聞を退社してフリージャーナリストになった大刀洗万智は、海外旅行特集の仕事を受け、その前ノリでカトマンズを訪れた。現地で知り合った少年にガイドを頼んで、これから撮るべきものを探す。

    そんな矢先、ナラヤンヒティ王宮で国王殺害事件が発生する。混沌とした街の中で取材を開始した彼女の前に、自らの経験と矜持を脅かすような大きな問いと、死体が転がる。自分自身が真実を知り、それを世に伝えなければならない理由とは一体何なのか。報道の意義を問われる、大刀洗万智シリーズ。

    報道と追及の襟を正してくれる展開|感想

    あらためて読んでみても、物語の展開と着眼点、メッセージが見事に組み上げられた逸品だと思う。 2001 年に実際に起きたネパール王族殺害事件をモチーフにした本作だが、その事件そのものに切り込むような話ではない。何を報じて、何を報じるべきではないのか。ホントに報じるに値する事実があるのか。報じた先にどのような結末が待っているのか。目の前で起こった出来事を取り上げて報道すること、そしてそれを追求する気持ちの襟を正してくれるような重厚な物語。

    ただ、それは報道する側の人間に限らず、それを享受する自分たち視聴者にとっても大切な意識になる。取り上げれば逆に報道する側の人間にもなっている。

    🏷️ 受け手に求められるメディアリテラシー

    こいつは家のソファで見ていたかったな。面白くなってきたのに……近すぎる!

    7. 弔砲の夜

    自分に降りかかることのない惨劇は、この上なく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。

    9. 王とサーカス

    これほど端的に視聴者の側の心情を言い表す表現は思いつかないほど、的を射ている。刺激的な娯楽だからこそ、好き勝手にある事ない事を付け加えて推測したり、自分自身の曲解を添えて他人に伝えようとしてしまう。

    あたかも深く考えていそうに思える「考えさせられた」という言葉は、実はとても軽くて、この出来事についてそれ以上考えなくても済ませられてしまう、終わりの言葉のような気がした。

    最前列に立ち、そこから後ろを振り返って初めて、人々の怒りを撮れるのだ。

    8. 噂の街

    自分自身も普段ニュースを見て被害者とされる人の気持ちを想像し、憤りを感じたり何気なしに SNS で呟いたりしているが、それがホントに当事者の立場になったものなのかと思うことがある。

    安易な「可哀想だ」や「普通はこうだ」といった感想でも今や、ひとたび投稿すると簡単に同じ感想の人間と気持ちを共有でき、さも自分の意見が絶対的に正しいかのように錯覚してしまう。それが思わぬ形で寄り集まれば、大炎上に繋がったりもする。相手の立場を慮ること自体は人間としての性質ではあるのだろうが、人だかりの陰に隠れて後ろの方からひっそりと怒りを投げ込んでいるだけでは、当事者の気持ちを真に代弁したことにはならない。情報や映像を目の当たりにした一時の感情を単にぶつけるのではなく、あくまで一つの見解を述べているだけということを、改めて肝に銘じさせてくれる。

    🏷️ 送り手が意識すべき姿勢

    王が殺されても、街は平穏に見えていた。だからわたしは、この王は人々にそれほど愛されてはいなかったのかと思っていた。しかし、そうではなかった。

    6. 長い葬列

    目に見えているモノだけが真実ではなく、寄り添って内面を覗いてみて初めて明らかになるモノがあるというのがわかる一節。目に入っているハズなのに、見えていないようなことだってよくある。

    この世の悲惨を伝えられるということは、その場に立ち会っていたということだ。なぜ助けなかったのだ。お前は何をしていたのだーー。

    14. ハゲワシと少女

    貧困に喘ぐスーダンで、倒れた少女とその子を狙うハゲワシの姿を捉えたことで有名な「ハゲワシと少女」。物議を醸した写真だが、撮影した人間の悲惨な末路や批判した人間たちの倫理観はさることながら、物事を取り沙汰せるのであれば、表層の部分を見るだけではなく、さらに一歩踏み込んで観察するべきだと思う。1つの写真や映像の裏側で、当事者たちの人生もこの先それぞれ続いていく。その出来事から何が読み取れ、何を伝えたいのか。その人生が結果的にどのように変わってしまうのかを想像しようとしなければならない。人間ならではの想像力なら、それこそ「可哀想だ」と思うのと同じように慮ってあげられるのではないか。

    あいつらはこの国で何をしたかったんだ。あんたは、何をしたいんだ。

    21. 敵の正体

    本作では、深く踏み込んで考察しなかった結果が招いた一連の事件。一言で考察といっても簡単ではないし、確実に誰かを救えるものでもない。誤った読み取り方をしてしまうことも大いにある。だからこそ、自分の判断に問題はないか、改善の余地はないのか、誰もが「これはイイ」と言っていることが果たして本当に正しいことなのかを、疑い続けることが重要なのだと感じた。

    カトマンズで出会う人々|登場人物

    シリーズ通して活躍する主人公 大刀洗万智は、ネパールの首都カトマンズでジョッチェン地区の外れにある安宿トーキョーロッジに宿泊している。

    👤 大刀洗 万智|たちあらい まち

    • フリージャーナリスト

    • 同僚の死とあらぬ嫌疑をきっかけに、東洋新聞の記者を辞めたばかり

    👤 ロバート・フォクスウェル|ロブ

    • カリフォルニア州の大学に通うアメリカ人の大学生バックパッカー

    • 余裕のある姿を見せようとする一方、臆病で小心な側面を見せる

    👤 サガル

    • トーキョーロッジの向かいに住む現地のモノ売り少年

    • 幼い容姿ながら賢く、片言の日本語と流暢な英語で旅行客相手に商売している

    👤 八津田 源信|やつだ げんしん

    • カトマンズに長期滞在する日本人の仏僧

    • 洞察力が鋭く険しい雰囲気ながら、話し始めると柔和な親しみやすさがある

    👤 シュクマル

    • 食器を販売して絨毯を仕入れているインド人の商人

    • 細面で彫が深い端正な顔立ちをしており、清潔感がある印象

    👤 チャメリ

    • トーキョーロッジの女主人

    • 洋装で肌の色が白く、オドオドした雰囲気をしている

    👤 ラジェスワル・プラダン

    • ネパール国軍の准尉

    • チャメルの夫の知人で、インドのスパイとも噂されている


    読書に慣れていなかった頃の初回読了時はイマイチ理解できなかったですが、2回目、3回目と読んでいくうちに、とても深い真意が描かれていることがわかってきて、自分の中でも好きな作品になりました。 

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    Yukke

     
     
    読書・サイクリング・旅行・ゲーム・アニメ・ドラマ etc... いろんなエンタメに興味もって楽しんでます 典型的に活字離れしていた 20 代までに、得る機会を失った文章力アップのため、それに忘れっぽい体験を記憶しとくために感想文を書きました よろしくお願いします〜

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