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桜前線

    吾音萌音


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    あなたはその扉を
    胸に向かってぐっと引く
    少し不器用な左手で
    渾身の願いを込めて

    真正面から花びらが吹き付ける
    後れ毛がさっと浮き
    春風に撫でられた額は
    頼りなげな陽光に輝く
    一瞬閉じた瞳を開けば
    広がる景色の彩りの
    一掃された世界を観るのだ

    真鍮色の取手を握る
    人差し指の先は
    ひんやりとして戸惑うけれど
    あなたはその後ろを憂うことはない
    そのまま前へ
    そして先へ

    河津桜はもう長く並木道となり
    菜の花色のぼんぼりに囲まれて
    幾度も行き交う列車を見送る
    目白が歌い
    曲線を描いては戯れる

    これを春と名付けましょうか

     
     
     
    一人ひとりの心にしっとりと溶け入るような風味、潤滑油でいられたら💚 全てを愛の歌に仕立てます。