
「ジョシュアツリーの悟り」-名前を知った瞬間、それは見える
思考の道具箱
いつも通っている道なのに、ある日突然、見慣れないお店があることに気づいた。
そんな経験はありませんか?
実は、お店が急にできたわけではありません。脳が、昨日までその存在を「背景」として完全に無視していただけなのです。
仕事でも日常でも、私たちは「見ているようで見えていないもの」に囲まれて暮らしています。この心の仕組みを、デザインの世界ではちょっと面白い名前で呼びます。
それが、「ジョシュアツリーの悟り」です。
この言葉のきっかけは、アメリカのベストセラー本「ノンデザイナーズ・デザインブック」の著者、ロビン・ウィリアムズが体験したエピソードにあります。
ある年のクリスマス、ロビンは植物図鑑をプレゼントされました。
パラパラとページをめくっていると、「ジョシュアツリー」という奇妙な姿をした植物が目に留まります。それはサボテンのようでもあり、細長い葉がトゲトゲと天に向かって伸びている、とてもユニークな木でした。
彼女は「へえ、こんな変わった植物があるんだ。カリフォルニアの限られた砂漠にしか生えていないんだろうな」と思い、本を閉じました。
そのあと、彼女は車を運転して出かけたのですが‥
そこで驚くべきことが起こります。
「なんと、自分の家のまわりや、いつも通る道路のあちこちに、ジョシュアツリーが何本も生えていたのです」
昨日までと景色はまったく変わっていません。木が急に一晩で成長したわけでもありません。彼女のまわりには、最初からその木がたくさん生えていたのです。それなのに、彼女はそれまでその存在に「一回も」気づきませんでした。
なぜなら、名前も存在も知らなかったから、脳が勝手に景色の一部(背景)として消し去っていたのです。
脳は無意識のうちにフィルターをかけています。
「自分が興味のないもの」は視界から消す 「名前を知らないもの」はただの背景として処理する。
世界が変わったのではなく、脳のフィルターが書き換わったのです。
この「ジョシュアツリーの悟り」は、学びや仕事を豊かにしていく上で、とても強力なヒントになります。
それは、「知識や名前を手に入れることは、世界を広げる道具を手に入れることと同じ」だということです。
脳は「知っているもの」しか見ることができない。
新しい言葉、新しい知識を1つ学ぶことは、背景の中に隠れていた「宝物」を見つけるメガネを手に入れること。
「名前」をひとつ手に入れるたびに、いつもの帰り道や、いつものオフィスの風景の中に、新しいジョシュアツリーがパッと姿を現します。
世界は最初から豊かなのに、自分の脳が隠してしまっているだけなのでは?と言うお話でした。