
風向きは選べない。でも「どう受けるか」は選べる。
「今は、ちょっと逆風ですからね」
ビジネスの現場にいると、この言葉を本当によく耳にします。 景気が悪い。競合が増えた。AIが急速に普及した。物価が上がった。
たしかに、私たちの前には容赦ない「向かい風」が吹いています。 でも、最近ふと思うのです。
本当に見ているべきなのは、風が「前から吹いているか、後ろから吹いているか」という平面の話ではないのではないか、と。
本当に大切なのは、「その風を、どの角度から受けるか」。ただそれだけなのかもしれません。
飛行機が「向かい風」を欲しがる理由
よく考えてみれば、飛行機は向かい風だから飛べないわけではありません。 むしろその逆です。
大きな機体が重力に逆らって離陸するとき、飛行機はわざわざ「向かい風」に向かって進みます。前から強い風を受けることで、翼の上下に圧力の差が生まれ、機体を浮かび上がらせる「揚力(ようりょく)」が最大になるからです。
大空を舞う鳥たちも同じ。 彼らは前から受ける風を、巧みに上昇する力へと変えています。
前に進もうとする者にとって、向かい風は「拒絶」ではなく、むしろ「高く飛ぶための足場」になり得るのです。
本当に恐ろしいのは、上から押さえつける風
一方で、私たちを本当に苦しくさせるのは、前後からの風ではありません。 「上から押さえつけてくる風」です。
「こうあるべきだ」という固定観念。
「前例がない」という思考停止。
「絶対に失敗するな」という無言のプレッシャー。
そんな重苦しい空気の風は、人の可能性を容赦なく地べたに押しつぶし、飛び立つエネルギーを奪ってしまいます。
逆に、「下から吹き上げる風」もあります。 誰かからの温かい応援。 過去の失敗から得た教訓。 「このままでは終われない」という悔しさや危機感。
一見するとネガティブに見える出来事や感情ほど、実は私たちを一番高い場所へと押し上げてくれる、強力な上昇気流になることがあるのです。
順風満帆な仕事からは、土台は生まれない
私自身の仕事を振り返ってみても、まさにそうでした。
最初からすべてがうまくいくような「順風満帆な案件」よりも、あちこちから逆風が吹き荒れる「難しい案件」のときほど、必死に頭を動かしていました。
なぜ、想いが伝わらないのだろう?
なぜ、商品が売れないのだろう?
なぜ、チームの意見がまとまらないのだろう?
そのたびに、風に押し流されないように「なぜ」の地面を深く深く掘り続けました。 当時は必死でしたが、その泥臭い積み重ねこそが、今の私の仕事の頑丈な土台になっています。
だから最近の私は、「早く追い風が吹かないかな」と待つエゴを手放しました。 それよりも、何かが起きたときにこう考えるようにしています。
「いま吹いているこの風は、どこから来ているんだろう?」
経営も、デザインも、人生も
同じ風であっても、ただ突っ立っていれば押し戻される「壁」になります。 しかし、翼の角度を変えれば、自分を押し上げる「力」に変わります。
風向きそのものを、自分の力で変えることはできません。 でも、その風を「どう受けるか」は、いまこの瞬間から自分で選ぶことができる。
経営も、デザインも、そして人生も。 案外、小さな「翼の傾け方」の差の中にこそ、未来を分ける大きな違いが隠れているのかもしれません。
いま、あなたの前にはどんな風が吹いていますか?

著者プロフィール
折尾祐希
クリエイティブディレクター
コピーライター
株式会社オンド 代表取締役
大阪・梅田を拠点に、事業とブランドの軸を骨太にする。導き手&伴走型。デザイン業界20年以上。引き算の美学とその裏側の泥臭い思考プロセスを綴っています。
HP:https://ond-ond.com
EC:https://yogu.jp/
自分自身の感覚で確かめることを大切にしています。
近づいて見たり、離れて眺めたり。白と黒の間を探したり。立つ場所が変われば、見える景色も変わります。デザインや経営、ものづくり、日々の暮らしの中で見つけた気づきを通して、誰かの視点の引き出しがひとつ増えるような発信を続けています。