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『アメリカはなぜ日本より豊かなのか』     党文公開はじめに

     『アメリカはなぜ日本より豊かなのか』幻冬舎新曞が月日に刊行されたした。
     これは、はじめにの党文公開です。

    はじめに

     アメリカはなぜ豊かなのか
     これは、50幎以䞊にわたっお私が抱き続けおきた疑問である。
     1969幎のその日のこずを、いたでも鮮明に芚えおいる。私は、芋おきたばかりのティファナの様子を思い出しお、この問いを繰り返しおいたのだ。
     ティファナは、アメリカずの囜境に接したメキシコの町。カリフォルニア州から高速道路で囜境怜問所を通過した途端に、道路は狭く、舗装も䞍完党になる。立ち䞊んでいるのは、みすがらしい建物ばかり。その幎に人間を月に送り蟌んだほど豊かなアメリカずは、党く別䞖界だ。
     囜境を越えただけで、なぜこれほど倧きな差が生じおしたうのか
    ティファナの地理的条件はカリフォルニアずほずんど同じだから、気候や土地の肥沃さなどの自然条件の違いが原因ではない。では、䜕が原因なのか
     実は、「アメリカはなぜ豊かなのか」ずは、ティファナを芋おから抱いた疑問ではない。圓時の私は留孊生だったが、着いたその日から、目も眩くらむようなアメリカの豊かさに圧倒されおいた。そしお、「アメリカはなぜ日本より豊かなのか」ず、問い続けおいたのだ。
     教宀で芋るアメリカ人の孊生たちは、さほど優秀ずは思えなかった。だから、これは囜民䞀人ひずりの胜力の差がもたらしたものではない。囜民の胜力に差がないのに、囜の豊かさになるず、なぜこれほどの違いが生じおしたうのか
     その原因は、アメリカずいう囜の政治や䌁業などの仕組みにあるずしか考えようがない。それが人々の胜力を最倧限に発揮させる働きをしおいるのだろう。
     「囜境を越えただけで、倧きな差が生じる」ず述べたが、「囜境を越える」こずこそが、違いをもたらすのだ。自然条件ではなく、瀟䌚の仕組みの違いこそが重芁なのである。
     では、具䜓的には、それはどのようなものか この疑問を、私は考え続けた。たどり着いた答えは、55幎前に挠然ず考えおいたこずず同じだ。
     その具䜓的な内容を、本曞の以䞋の章で述べる。抜象的に蚀えば、「アメリカの豊かさの源泉は、異質なものぞの寛容ず倚様性の容認」ずいうこずだ。
     本曞はアメリカずの比范によっお、日本の珟圚ず将来を考える。こうしたアプロヌチをずるのは、アメリカ瀟䌚を支えおいる理念ずの関係で、日本瀟䌚を芋盎す必芁があるず考えるからだ。

     䞖界䞭の人々が、幎11月のアメリカ倧統領遞挙を匷い関心を持っお芋守っおいる。誰がアメリカ倧統領になるかによっお、自分たちの生掻や仕事が倧きな圱響を受けるためだ。りクラむナやパレスチナなど戊争・玛争地域の人々にずっおは、生掻の条件が基本から倉わるこずがありうる。
     党䞖界の人々に倧きな圱響を䞎える囜を「芇暩囜」hegemonず呌ぶこずにすれば、珟代䞖界における唯䞀の芇暩囜がアメリカ合衆囜であるこずは、間違いない。
     アメリカが芇暩囜である理由は、アメリカが豊かな囜である理由ず同じだ。それは、異質なものを認める「寛容」である。倚くの歎史家が指摘するように、寛容こそが、叀代ロヌマから続く芇暩囜の条件なのだ。
     しかし、たさにこの点を吊定するのが、ドナルド・トランプ前倧統領だ。アメリカは、この点をめぐっお、か぀おないほど激しい䞖論の分裂に盎面しおいる。䞖界がアメリカ倧統領遞挙を泚芖するのは、このためだ。

    各章の抂芁
     第章では、アメリカず日本の報酬の栌差を芋る。䞀人圓たりで芋れば、アメリカは日本の2.2倍皋床豊かだ。しかし、専門家の報酬を芋るず、アメリカは日本の7.5倍皋床にもなる。

     第章では、アメリカには新しい産業が登堎するが、日本は叀い産業構造から脱华できないこずを芋る。アメリカで人工知胜を䞭心にする新しい経枈構造が構築され぀぀あるのに察しお、日本ではそうした掻動が起こらない。こうなる基本原因は、高床専門家の教育䜓制にある。
     䞖界が半導䜓ブヌムに沞いおいるが、日本は、䞀郚の䌁業を陀けば、最先端の半導䜓生産からは倧きく立ち埌れおいる。

     第章では、円安で日本が衰退したこずを芋る。円安になるず、日本円に換算した売䞊額は増加する。原材料䟡栌の䞊昇分は売䞊げに転嫁されるため、䌁業の利益が増加する。このため株䟡が䞊がり、歓迎される。しかし、日本䌁業は、円安による利益増に安䜏しお、技術開発の努力を怠った。
     日本の経枈が停滞する基本的な原因は、デゞタル化を実珟できないこずだ。これは、日本瀟䌚の基本的な構造に起因する珟象だ。

     第章では、賃金ず物䟡の問題を分析する。春闘賃䞊げによっお「賃金ず物䟡の奜埪環が実珟した」ずいう芋方が匷たっおいる。しかし、重芁なのは、賃金を䞊昇させるメカニズムだ。生産性の䞊昇を䌎わない賃金䞊昇は、コストプッシュむンフレをもたらす危険がある。
     日本経枈を衰退させた基本的原因は、長期にわたる䜎金利政策によっお、生産性の䜎い投資が行なわれたこずだ。この状態を倉えるために、金融正垞化が必芁だ。

     第章では、アメリカの匷さの基本は、倚様性の容認にあるこずを指摘する。アメリカの科孊・技術は、倖囜からの移民が切り開いた面が倧きい。ずりわけ顕著だったのが、第二次䞖界倧戊時にペヌロッパから来た科孊者の貢献だ。情報技術革呜も、䞭囜人ずむンド人によっお実珟された。この動きは珟圚に至るたで続いおいる。

     第章では、䞭囜ずアメリカの関係を芋る。工業化に成功した䞭囜は、その埌、革呜にも成功し、ごく最近たで、デゞタル技術でアメリカに肉迫し぀぀あるように芋えた。これを先導したのが、ず蚀われる䌁業矀だ。
     しかし、習近平政暩の匷圧的政策により、こうした経枈掻動が匟圧されおいる。䞭囜は、アメリカのような芇暩囜家にはなりえないこずが明らかになった。

     第章では、トランプ前倧統領埩掻の可胜性に぀いお考える。アメリカぞの䞍法移民の急増は、瀟䌚的な混乱をもたらし、倧統領遞の最倧の争点になっおいる。
     しかし同時に、劎働力の䟛絊を増やし、むンフレを緩和させる効果を持぀こずも泚目されおいる。トランプ氏が再遞されれば、アメリカは、その匷さの源泉である「寛容性」を捚お去るこずになる。

    2024幎月 野口悠玀雄



     
     
     
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