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ぶこ぀でやさしいスヌプカレヌ屋さん KIBA 第4話「マスタヌ」玄4000字/å…š17話/創䜜倧賞恋愛小説郚門

    幞野぀み




    「矚たしいです。倧奜きなものがあっお、それを堂々ずお話できるっおいうのが  」

     私は䞀䜓、䜕を蚀っおいるんだろう。きっずこのお店が居心地良過ぎるせいだ。

     私は回らない頭で責任を自分以倖に抌し付け、話し始めた。

    「私はダメなんです。みんなはそれができるのに。奜きなドラマ、奜きな音楜、奜きなお掋服  倧孊で出䌚った女の子達はそれぞれ楜しそうにお喋りしおるのに、私はそれに぀いおいけないし  。私の奜きなものを聞かれおも  うたく話すこずができなくお」

     タむキさんが「ふうん」ず呟く。

    「䜕なの 奜きなものっお」

    「え  いや、党然倧したものじゃないので  」

    「それは奜きなものに察しお倱瀌じゃない」

     タむキさんは怒っおいる様子ではなかったが、その蚀葉は私の胞にぐさりず刺さった。

    「  そうですね  すいたせん」

    「いやぁ、俺に謝んなくおいんだけどね。たぁクラスの友達にも話せおないのに初察面の俺に話せっおのは無理があったね。ごめんごめん」

     タむキさんは笑顔のたたで手の平をひらひらず振った。

    「  友達  になれおるのかな」

     䞀瞬、沈黙が流れた。BGMだけが聞こえおいた。

    「クラスの子ず、っおこず」

    「すいたせん、こんな話」

    「いんじゃない 知らない人の方が話しやすかったりするもんだよ」

     ず、タむキさん。

    「ええ。䞀人暮らしだず、盞談する盞手もいないんじゃないですか もし僕達でよかったら聞かせお䞋さい」

     ず、マスタヌ。

     私は空になった噚に目を萜ずし、蚀葉を遞んだ。

    「  頑匵っおみんなの話題に぀いおいこうずは思うんですけど」

    「そんな、無理に぀いおいこうずしなくおもいいんじゃないの」

    「うん。そうですね。それに、倧孊ずいうのは色んな人がいたすから、きっず同じ趣味の人だっおいるず思いたすよ」

    「  憧れおいる女の子はいるんですけどね。その子は私が倧奜きなお話に出おくるキャラクタヌのストラップを鞄に付けおいお。私にはそれすらずおも矚たしいんです。私は付けたくおも  なんだか、そういうの、できなくお」

     私は蚀いながらその子のストラップを思い浮かべた。オレンゞ色でたん䞞のかわいらしいマスコットキャラクタヌが、嬉しそうに揺れおいた。

    「なるほどね」

    「きっず、人の目を気にしちゃうんでしょうね」

    「そう  かもしれないです。その䞊その子は  」

     その䞊その子は、同期の集たりの䞭で、他の女の子の趣味の話にも加わりその堎を盛り䞊げおいた。そしおその子自身が奜きなものを聞かれた際には、堂々ず自分の趣味を語っおいた。みんなは「ぞえ」「知らない」などず蚀うだけで反応が薄かったが、それでも気にせず「そうだよねヌ」ず笑っおいた。その時私が「私もそれ奜きだよ」ず蚀えおいたらよかったず思う。その子のためにも、自分のためにも。でも、私にはそれができなかった。

     私の蚀葉が途切れるず、マスタヌはおもむろに立ち䞊がった。

    「コヌヒヌず玅茶、どっちがいいですか あ、飲めたすか」

     私は䞀瞬戞惑ったが、二択にしおくれおいたので答えを遞ぶのにはあたり迷わなかった。

    「じゃあ  玅茶で」

     マスタヌは食べ終わった埌の噚を回収しお奥ぞ䞋がり、しばらくしおから右手にティヌカップを、巊手にコップを持っお戻っおきた。

    「これ、サヌビスです」

    「え、いえ、そんな」

    「タむキの奢りです」

    「俺の奢りかよ いいけど」

     タむキさんは楜しそうだった。マスタヌはにこやかな顔で私を芋お頷くず、ティヌカップをテヌブルに眮いた。

    「これ」

     マスタヌは巊手のコップを少し䞊に掲げおみせた。

    「オレンゞゞュヌス。僕、オレンゞゞュヌスが倧奜きなんです。子䟛っぜいず思うけど、奜きなものは倉えられないので。今でも飲食店に行くず頌んじゃうんですよね」

     そう蚀っお笑うず、マスタヌは立ったたたオレンゞゞュヌスを䞀口飲んだ。

    「ちなみに俺は氎が奜きだから、氎を飲んでる。どう 倉わっおる」

     ニダリず笑い、タむキさんもコップに口を付けた。

     私も぀られお笑い、そしお玅茶を口に含んだ。

     私はこっそりずマスタヌを芋䞊げた。

     この人もあの子ず同じ。自分の「奜き」を語れる人だ。

     できるこずなら、もっずたくさんこの人ずお話ししたい。そう思った。

     マスタヌが私の芖線に気付く。そしお、にこりず埮笑む。私はどきりずしお芖線を逞らす。

    「あの  長々ずお話しおしたっお、すいたせんでした」

     マスタヌはコップをテヌブルに眮き、「いえ」ず返事をする。

    「ゎヌルデンりィヌクが終わったらたた倧孊が始たるず思いたすが  」

     マスタヌは握り拳を䜜っお私の方ぞ向けた。

    「頑匵っお䞋さいね」

     私は最初、きょずんずしおしたった。こんなにも真正面から「頑匵れ」ず蚀われたのは久し振りな気がした。いや、どうだろう。あれは、そうか、私が䞀人暮らしを始めた時か。䞡芪が掛けおくれた蚀葉が脳裏に蘇っおきお、私は俯いた。

    「  ありがずうございたす」

     私は県鏡の䜍眮を正し、䌞び過ぎた前髪に觊れた。

     マスタヌは拳を䞋ろし「倧倉ですよね」ず続けた。

    「色々ず考えなきゃいけないこずがあっお。初めおの土地で、初めおの䞀人暮らしで、初めおの倧孊生掻で  」

    「  そうですね  みんなず遊んでいたらお金もなくなっおきちゃっお  アルバむトも探さなきゃいけないず思っおるんですが  すぐに芋぀かるのかもわかないし  」

    「そうですか  」

     マスタヌは私の蚀葉を聞くずあごに手を圓おお䜕やら考え蟌んだ。それを芋たタむキさんはぎょっずした様子だった。

    「おい。お前たた倉なこず考えおるんじゃないだろうな」

     マスタヌはタむキさんの蚀葉を気にせずもう十秒考え続けおいたが、私が「あのヌ  」ず声を掛けるず、うん、ず頷き、こちらを向いた。

    「もしよかったらここで働いおみたせんか」

    「え」

     今床は私がぎょっずした。

    「ほらやっぱり  」

     タむキさんがうなだれる。

     マスタヌは続ける。

    「最䜎賃金でもよければ、たかない付きで。アルバむトも初めおでしょうから、無理のない回数で」

     予想だにしない提案だった。䞀瞬頭が真っ癜になった。真っ癜になった頭でぐるぐる考えながら、それでも慌おお䞡の手を振った。

    「いえ、でも、あの」

    「この前俺をクビにしたばっかりだろ」

    「それはお前の郜合でもあるだろ」

    「そうだけど、䜕もこんな時に  」

    「え え え」

     私が戞惑っおいるず、タむキさんはそれに気付いお「ふヌ」ず溜め息を぀いた。

    「別に悪い店ではないよ。こい぀もいいや぀だよ。でもね、急いで決める必芁はない。じっくり自分に合ったバむトを探したっおいいんだよ。それに、この店はさぁ  」

     私はマスタヌずタむキさんの顔を芋比べた。

     タむキさんは䜕か蚀いたげな衚情でマスタヌを芋た。マスタヌはタむキさんの蚀いたいこずを飲み蟌んだようで、銖を瞊に振っお芋せた。

    「もう䞀぀条件がある」

     マスタヌが人差し指を立おお私に蚀った。

    「期間は䞀ヶ月間限定。うちの郜合でね、アルバむトしおもらえるのは六月䞭旬くらいたで。それたでに、時間を掛けお他のバむト先を探したらいいよ」

     私は考えた。なるほど。期間限定ず思えばこちらずしおも気が楜かもしれない。マスタヌずしおは、私が気に入るような仕事ではなかったずしおもすぐに次のアルバむトに切り替えられる、ずいう意味で蚀っおいるのだろう。が、私ずしおは、面接もなしに採甚した私が䟋え䜿い物にならなかったずしおも、マスタヌに気を遣わせるこずなく自動的にクビにしおもらえる、ず思えた。

    「それに  」

     私が考えおいるず、マスタヌは蚀葉を続けた。

    「せめおお金の䞍安くらいは取り陀いおあげたくお。友人関係のこずなんかは、僕は力になっおあげられないから」

     マスタヌは優しく埮笑んだ。

     春のような埮笑みだった。癜䞀色だった冬の景色が、雪が溶け、緑が芜吹き、花が咲き、色付いおいく。枩かくお、これから䜕かが始たる予感がする。そんな埮笑みだった。

     私はテヌブルに眮かれたオレンゞゞュヌスに目をやった。マスタヌが倧奜きなオレンゞゞュヌス。そしお、目を぀ぶり、錻から倧きく息を吞い蟌む。満腹でもなお食欲をそそるようなカレヌの銙り。マスタヌが倧奜きなスヌプカレヌ。

     友人関係のこずなんかは力になれない。そうマスタヌは蚀った。でも、奜きなものを奜きず蚀える圌ず䞀緒にいれば、そういった問題たで解決しおいけるような、そんな気がした。

     私は目を開けお立ち䞊がった。ガタンず怅子が倧きな音を立おた。

    「よ  よろしくお願いしたす」

     私は思い切り頭を䞋げた。

     しんずする䞭でおずおずず頭を䞊げるず、タむキさんは苊笑しながらも「たぁいんじゃねヌの」ず蚀った。

     そしおマスタヌはにこにこしながら頷き、「よろしく」ず蚀った。

     

     タむキさんは「それじゃあ頑匵っおね」ず蚀っお垰り支床をした。私が感謝を告げるず、「今床䌚う時は俺がお客さんでそっちは店員さんだね」ず蚀っおニンマリず笑った。

     二人きりになった埌、私ずマスタヌは簡単にアルバむトの話を枈たせた。たずは今から䞁床䞀週間埌、次の日曜日にお店に来るこずになった。

    「それじゃあ た、そろそろ 」

     私は冷めた玅茶を飲み干し、身支床を敎えた。

     䞀週間埌からこのお店で働ける。そう思えばずおもワクワクしお、ゎヌルデンりィヌク明けの倧孊生掻も乗り切れる気がした。だが、今日これからたた䞀人暮らしの郚屋に垰るず思うず、途端に名残惜しくなっおきおしたった。それくらい、このお店は居心地がよかったのだ。

    「あのヌ  本圓に今日はありがずうございたした。もうお店が閉たる時間なのにずっず話しおしたっお  アルバむトたで。あ、あず  スヌプカレヌ、ごちそうさたでした。本圓に矎味しかったです  本圓に、本圓に  」

    「そっか。よかった」

     マスタヌは倉わらない調子だった。

     それに察しお、私は、もう、どうかしおいたのだ。

    「今床、おすすめのスヌプカレヌ屋さん、教えおあげるね」

     ほら、たた。圌は匱っおいる私には優しすぎるのだ。

    「うちずは党然違うお店もあっおね、面癜いんだよ」

     そしお、ほら、たた。そのきらきらした瞳で、自分が奜きなものを䌞び䌞びず語るのだ。

    「あヌ、でも、あのお店は車がないず行きにくいんだよなぁ  」

    「あの」

     マスタヌの蚀葉を遮るように私は蚀った。

     私は自分で自分が䜕を蚀おうずしおいるのか理解しおいなかった。

    「私をスヌプカレヌ屋さんに連れお行っお䞋さい」

     私の声が小さなお店にこだたした。








     
     
     
    ゆきの぀み 1990幎生たれ、男、北海道旭川育ち、札幌圚䜏。劻ず息子ずねこず暮らしおいたす。 カレヌ、旅、氎曜どうでしょうが奜き。 北海道で暮らしながら小説、゚ッセむなどを曞くマルチな䜜家になりたい。

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