
田んぼの住人
水が張られたばかりの田んぼの水はまだ透き通り、稲もまだひょろひょろっとした赤ちゃんで、水面の上にちょこんと顔を出し、風に吹かれている程度。気候の良さもあいまって、梅雨の晴れ間だけに見られるこの田んぼの風景を見につい足が向いてしまう。
畦道を歩いていると、一斉に黒いものが動き出す。
オタマジャクシだ。
高速で泳ぎまくっているので、なかなかゆっくり見ることができないばかりか、土と同化していて見つけづらい。青い丸↓

もうすぐカエルになりそうなものから生まれたばかりの赤ちゃんまで、出てくる出てくる。
また数日後に畦道を歩くと、今度はバチャバチャっと水泳競技のスタートの瞬間とばかりに一斉に何かが田んぼに飛び込んでいく。
カエルだ。

畦道からのスタートダッシュは激しいのに田んぼに入ったら、もうおいらたちを捕まえられないだろとばかりに、ス~イスイとのんびりゆっくり泳ぎ始める。透明度が高い水の中、稲がいい感じの障害物となってなんとも気持ちよさそうに泳いでいくのだ。
一匹ずつカエルをモニタリングしていくと、カエルにも個性があることがわかる。

この子はあっちいったりこっちいったりとせわしなくて、右足と左足をキレイに屈伸できていない。

この子は泳ぐのがかったるいのか、片足だけでゆっくり泳ぎ、もう片方は水に浮かせて、だらんとさせている。この泳ぎがなんともかわいらしい。
泳ぎの美しさNO1はこの子

脚をぴったりくっつけて屈伸運動を繰り返す、美しいカエル泳ぎ。規則正しく足を運動させているせいか、スピードも速く、もちろん見ていてほれぼれする泳ぎ。
ずっとどこまでも泳ぎ続けるのかなと見続けていると、結構ヘタレさんが多いらしくすぐに休憩する。

田んぼの中のくぼみにすっぽりとはまり手を伸ばして体を支えている姿がこれまたキュート。
カエルってぬめぬめしているし、ぴょんぴょんはねて、驚かすし、夜はゲコゲコと鳴きまくるし、ほんとに扱いにくいやつなのだが、なぜか見つけるとつい追いかけてしまう。
嫌い嫌いも好きの内じゃないか!といつも思うカエル。
なんとも言えない愛嬌は、顔の横にちょこんとのったつぶらな瞳のせいか。
さらによーく観察していると、目が真剣そのもの。前方をみすえて一心不乱に泳ぐカエルをみていたら、今度は口の周りをぶくぶくさせながら泳いでいることに気づく。

泳ぎの達人のはずなのに息継ぎがめちゃくちゃヘタなのだ。そんなところもなんか愛らしい。
都会にいるとカエルを見る機会はほぼない。減反政策で田んぼが減らされ、高齢化で放棄地となっているところもある。水路がコンクリートで固められまくっているせいかもしれない。
だから、こうやってカエルが優雅に泳いでいる姿をみると、とてつもなく尊いものと感じてしまう。
カエルがひと泳ぎしては、ちょっとしたくぼみを見つけて、体を手でささえ水面から顔を出す。このカエルの一連のループを飽きもせずに毎日眺めていたら、いつのまにやら自分も尊い人間にされていた。
「あんなに毎日、田んぼの見回りして、田んぼのぞいて。ほんとに田んぼが好きなんだね。今時、あそこまで情熱傾けて農業やるこはいねよ。いい子に育ったねぇ」
ご近所中から、褒められている?母。
「田んぼの住人を見に行くのは、みんながご飯食べ始める17時以降にして。返答に困るのよ。全く」
母親はなんでもお見通しなのである。