
#13 「海外に行ってくる」夢の中で夫はそう言った
夫が亡くなって約1ヶ月が経った頃、
私たち家族は実家へ引っ越すことが決まりました。
本当は夫と過ごした家を離れたくありませんでした。
でも両親も、お義父さんもお義母さんも、
私たちだけを残していくことを心配していました。
ましてや、当時住んでいたのは親戚も全くいない土地。
実家も義実家も簡単に行ける距離ではない土地。
何度も話し合い、
私は子どもたちを連れて実家へ戻ることを決めました。
そして、お義父さんとお義母さんが帰る朝でした。
夫がいなくなったと連絡してから
ずっと私たちのそばにいてくれた二人。
そんな朝、
私は亡くなってから初めて夫の夢を見ました。
夢の中で夫は私に、
「海外に長期で出張に行くことになった。」
と言いました。
それは特別な言い方ではありませんでした。
いつもの出張の時と同じでした。
ただ、実際には、夫は海外出張なんてしたことがありません。
それなのに夢の中の私は、
その言葉をすんなりと自然に受け入れていました。
そして夫は、いつものように「いってくるね」
と言って家を出て行きました。
そこで夢は終わりました。
目が覚めた時、私は涙が出ました。
毎日、夢でもいいから会いたいと思っていた夫が
やっと夢に出てきてくれた。
そんな気持ちと、
本当に夫からのメッセージのような気がしたからです。
夫が亡くなったことは悲しくてたまらない。
辛い、寂しい、それは何年経っても変わりません。
でもあの日の夢を見てから、
夫は遠くへ、少し長い出張に行っているだけ。
今は会えないだけ。
そんなふうに思えるようになったのです。
もちろん現実は分かっています。
夫は帰ってきません。
もう会うこともできません。
それでもあの夢は、私を救ってくれた気がします。
実家への引っ越しが決まり、
お義父さんとお義母さんも帰る朝。
新しい生活を始めることを決めてはいても
この家を離れることをまだ受け入れきれていない私に、
突然いなくなった夫が、
安心させようとしてくれたような気がしました。
「大丈夫だよ」
「いつもの出張だよ」
「少し長くなるけど、行ってくるね」
「留守の間、子どもたちのことを頼んだよ」
そんな声が聞こえた気がしました。
本当のことは分かりません。
でも私は今でも思っています。
あの日の夢は、
夫なりの優しいメッセージだったと。
今でも寂しくてたまらない時は
出張に行っているだけと自分に言い聞かせています。