
頼るしかなかった【前編】
「夫が女とラブホテルにいる」
早くも探偵からその報告を受け、もうキャンセルできないと思った私は、
数日後、現金105万円を持って探偵事務所へ向かった。
本当に大丈夫なんだろうか、と迷いがある中でも、もう進む以外の選択肢は残されていなかった。
あの時の私は、正常な判断なんてできていなかったと思う。
別居になるのか、離婚になるのか、再構築になるのか、
何も見えていない状況の中、
ただ、子供達を守るために証拠を取らなければいけない、
少しでも有利な条件で決着をつけなければ、と思っていた。
だから、
「証拠はホテルの出と入りが必要です。任せてくれれば確実にとります」
「財産分与や養育費についても、
あなたが有利になるような情報を全部教えられる」
そう言ってくれた探偵を頼るしかなかったのだ。
その頃、自宅のパソコンで、
元夫のGoogleアカウントがログアウトされていないことに気付いた。
メール履歴も、検索履歴も、
YouTubeの閲覧履歴まで見ることができた。
夫が家にいない時間、私はそれを確認することになった。
YouTubeには、アパートやマンションの内覧動画が並んでいた。
女と住む家を探しているんだと思った。
毎晩夜中に帰る日が続いていたので、
もうこのくらいのことでは驚かない自分になっていた。
そんな中、ある市内のホテルの予約メールを見つけた。
いつも出張で利用しているホテルだったが、
予約人数は「2名」だった。ダブルベットの部屋だった。
もう確定だ。これは確実に証拠が取れる。
そう思った私はすぐに探偵に連絡をした。
すると探偵は、
「旭川まで行く場合は、別途出張費と宿泊費がかかります」
と言った。
105万円も払っているのに、
それすら含まれていないのかと思った。
もちろん契約時、
「遠方の場合は追加費用がかかることもある」
とは聞いていた。
でも、探偵の宿泊費までこちらが負担することや、
そもそも探偵が宿泊する必要があるのか、疑問ばかりが浮かんだ。
少しずつ、探偵への違和感が大きくなっていった。
しかも、
「こまめに連絡します」
と言っていたのに、
実際はほとんど連絡が来なかった。
こちらから連絡しなければ状況はわからず、
返ってくる言葉も曖昧だった。
夫に不倫されているだけでも限界だった。
それなのに、頼った探偵にまで不信感を抱くようになっていった。
本当に大丈夫なのか。
騙されているんじゃないか。
何が本当で、何が嘘なのか。
ただでさえ壊れかけていた心を、
追い打ちをかけるように、
私はさらに追い詰められていった。