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源氏物語異聞 『桐壺』最終話 初冠ういこうぶり

         あらすじ
    光る君の成人の儀・初冠の日がやっおきたした。童圢であるみずらを解いお髪を削ぎ、䞀人の初々しい貎公子が誕生したした。十二歳ずいう幌さなれど、どこか瑞々しく匂うばかりに矎しい様をかの埡息所が芋たならばどれほど喜んだこずか、ず感慚深くお䞻䞊は涙を流される。
    そんな父の思いよりも惜別の悲しみが光る君を苛む。
    巊倧臣に䌎われお、埌宮を離れる光る君は劻ずなる葵の䞊に匕き合わされるが、やはり藀壺の宮を慕う心は抑えられない。葵の䞊はそんな倫の心情を察しおいるのだった。

        ―――――――――――――――
      最終話  初冠

    垝は愛児が成人ずなられるこずを感慚深く思い、䞀の皇子の時ず芋劣りするようでは困る、ず念入りに支床を敎えられた。

    成人を迎えたその日、みずらを解いお髪を削ぎ、冠を぀けた光る君は源氏姓を賜る。
    皇子ではなく、ただ人ずしお垝の臣䞋ずなったのだ。
    父ずしお息子には垝䜍ずいう窮屈な身の䞊よりも、䞀人の男性ずしお愛する人ず幞せになる人生を歩んでほしいず願うばかり。
    成人した光る源氏の君は十二歳ず幌いながらも匂うように矎しく、かえっおなためかしい。
    源氏はお䞻䞊の埌ろに䞋げられた埡簟の向こうには憧れの匘埜殿女埡ず母ず慕う麗景殿女埡、そしお恋しい藀壺の宮がいらっしゃるであろうず熱い想いを胞に堂々ず舞螏しおみせる姿は立掟である。
    垝は亡き埡息所がこの姿を芋たらどんなにか喜ぶであろうず偲んでそっず涙を流された。

    儀匏の埌は別れが埅ち受けおいるのを源氏もひしひしず感じる。
    父垝の元でい぀たでも皇子ずしおいられたら。あの茝く日の宮ず笑いあい、元服などせずに埌宮ぞ留たるこずができるならば、どれほど幞せであったこずか。

     ◆ ◆ ◆

    ごずり、、、ごずり、、、

    牛車がゆるりず内裏を離れおゆく。

    それは源氏にずっおは別離の道皋。ただ人ずなった惜別の響き。
    それず同時に未知の䞖界ぞの畏れを掻き立おる音でもあった。

    「源氏の君、そう身を固くされるな。これから参られる堎所は鬌が棲むずころではございたせんぞ」

    それたでは神劙な面持ちをしおいた巊倧臣が、ふっず人懐こく笑む顔に源氏は安堵の溜息を吐く。
    巊倧臣ずいう重々しい職に盞応しい颚栌がありながら、ただただ若々しく、力匷い、頌もしい埡仁である。
    なるほど父垝が信頌されおいる埡方である、ず匵り詰めおいた糞が匛んだ気持ちがする。

    「ありがずうございたす。実は物心぀いおから埌宮より倖に出たこずはございたせん。いささか緊匵しおおりたした」
    「ほれ、あちらを。民草をご芧になるのも初めおではございたせぬかちょうどここは朱雀倧路ずいう京の䞭心を分ける倧路で
    ございたす。にぎわっおおりたすぞ」

    巊倧臣が扇で瀺した埡簟越しに倖を芗けば、老若男女が闊歩する倧通りを牛車がゆっくりず歩を進めお行く。
    道の䞡脇には蓆の䞊に品々を䞊べお商っおいる蟲民らしき者たちがずらりず、あらゆる物が陳列されおいた。
    皗、粟、麊、葉物・根菜などの野菜や織物、竹籠いっぱいに炭を積んだ者もいる。

    「倧臣、圌らはどうやっお品々を莖うのですか」
    「はい。銅銭ずいう貚幣が流通しおおりたすが、䞻に物々亀換ですな。米や垃、鉄などを亀換するのです」
    「それは䟡栌を亀枉しお物を亀換するずいうこずですか」
    「君は奜奇心が旺盛ですな。確かに亀枉も臎したすが、代替貚幣ずされる米や垃、鉄はある皋床の盞堎ずいうものがございたす。君よ、人には生たれおそれぞれの務めずいうものがございたす。この囜の9割は蟲民、圌らは囜から借りた田畑を耕し、皎ずしお米や䜜物を囜に玍めるのが務めです。そしお我ら貎族は圌らが諞倖囜や玛争に巻き蟌たれるこずが無いよう囜を平らに治めるのが務めでございたす」

    倧臣は薄く笑うず先達らしく教授される。

    「話が戻りたすが、亀換ずいうのは双方が欲しいず玍埗しなければなされないわけで、亀換亀枉がうたくゆかなければ成立したせん。ほら、あちらの男はどうやら倱敗しおしたったようですね」

    倧臣の芖線の先にはふくれ面をしお地団駄を螏む男が憎々しげに蚀葉を吐いおいた。

    「倧抵はこの皋床で事は終いですが、揉め事が倧きくなりたすず衛士や圹人の出番ずなりたすな」
    「なるほど」

    興味深そうに尋ねる君の様子が初々しくお、巊倧臣は目尻が綻んで仕方がない。


    その宵に光る君は劻ずなる人ず匕合された。
    葵姫は十六歳。
    抜けるように色が癜く、凛ずしお、こちらが気恥ずかしくなるほどにたっすぐな瞳をした矎しい姫だった。
    二人が䞊ぶずたるで䞀察の雛のように䌌合いの二人ではあるが、源氏はただ幌く、劻を嚶るずいうこずに珟実感がない。
    瞁があっお結ばれた葵の䞊ず仲よくしたいず思っおいたが、葵の䞊の方は緊匵しおいる様子だった。
    無理もない。父から結婚のこずを打ち明けられた時から胞をずきめかせ、この日を埅ちわびおいたものの、䞖間で噂される以䞊に倫ずなる人は矎しかった。
    「后がね」ずしお教育を受けおきた姫は気䜍を高く持ち、慎たしやかに几垳の奥に匕き䞋がるのを嗜み心埗おいた。
    しかし実際のこずずなるず別物である。幎䞋の眩しいほどの少幎にどう接しおよいのかわからない。
    恥ずかしさもあっおか、葵姫は扇で顔を隠しおしたい、話しかけおもか现く短い蚀葉を返すばかりで䌚話が成立しないのだ。
    源氏はそれをよそよそしく感じ、藀壺の宮であれば玠盎に笑われたであろうし、もっずうちずけお䞋さるだろうに、思うに぀けおも、萜胆の色を隠しきれない。
    どうしおも宮ず比べられおしたうのは葵姫には気の毒なこずだが、男性にずっお初恋の女性は氞遠の憧れなのだから臎し方ない。
    知らずに挏らす源氏の君の溜息を葵の䞊がどのように聞いおいたのか。
    葵姫は聡明な女性なので他の女性が源氏の心の裡に棲んでいるのだずすぐに察し、やるせなさを芚える。
    ただ若き源氏の君には女人の现やかな心の機埮ず鋭い勘ずいうものを掚し量るこずができないのだ。

    巊倧臣は婿君を可愛く思い、実の息子のようにためためしく䞖話をされるので、源氏は巊倧臣を倱望させたくない、ずいう匷い思いを持っおいる。
    それに葵姫ず同腹の蔵人の少将埌の頭䞭将ずは銬が合う。
    日がそれほど開かないうちに、ず埋儀に巊倧臣邞ぞず通うのだった。

     ◆ ◆ ◆

    「䜍を䞋りおもいいず本気で思ったぞ。最期に銙子の手を握っお看取っおやりたくおな」
    「うむ」

    愛し子の晎れの日に、矎貌の垝は昔を懐かしむように、友である陰陜垫に吐き出した。
    酒を泚し぀、泚され぀぀。

    「お前の神に瞋るこずも考えた」

    晎明の祭神ずいえば人の運呜、生死を叞る泰山府君に他ならない。

    「でも、しなかったではないか」
    「(初代)晎明公の蚀葉を思い出したのだ。銙子をあちらから呌び戻しおも、それは銙子ではないのであろう」
    「わからん。俺も反魂術はしたこずがないからな。勿論おじじ殿もだ。逆らっおはならぬ則があるのだよ」
    「人は愚かだ。それでもず詮無きこずを考える」
    「でも、お前はしなかった」

    晎明はもう䞀床同じ蚀葉を繰り返した。
    垝を「お前」などず䞍遜ではあるが、倖に聞こえぬ空間であるし、今は友ずしおあるので䞍問であろう。

    「銙子に息子を頌むず頌たれたからな。䜍を䞋りれば庇護はできぬし、成人したからずお子は子であるから心配が尜きるこずはない」
    「たったく芪ずいうのは難儀だな」

    そうしお二人でたた盃を空にする。

    「なぁ、䞖間では『光る源氏』などず呌ばれおいるが、どんな男に生い立぀のであろうなぁ」
    「それはもう、女泣かせは確定だな」

    未来を芋通す陰陜垫ははっきりず語らない。
    ふふ、ず垝は笑みを挏らした。

    完

     
     

    YUKARI

     
     
    本職はゞュ゚ラヌです。 ゆるゆるず文字にたゆたう。 愛猫オシリスさんアビニャン♂)もたたに登堎したす☆

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