メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byosakanabunko

🌸スープおばさんと呼ばれて

    いつも同じ時間の電車に乗ると
    駅に着く時間もいつも同じだ。

    今日は並んでいるだろうか。

    改札を出て目の前にあるセブン。

    わたしは数あるコンビニの中でも
    セブンのスープが好きだ。

    社員食堂がなくなって
    毎日おひるごはんを買わなきゃいけなくなった。

    弁当なんて1週間ももたなかった。
    でもなんかおにぎりとかは買うのがもったいなくなって
    おにぎりだけは家から持っていくようになったから

    セブンのスープさえ買えれば
    わたしのお昼ごはんは成立する。

    でも

    わたしが改札を出る時間はちょうど
    セブンに納品されたチルドたちがトレーに山積みされていて
    これから品出しをするかしないか途中かという時の間なのだ。

    スープの棚を見ると
    やっぱり並んでいないから

    山積みの納品トレーを横目に
    これから出すのかなあと思いきや
    やっぱり時間も無くなって
    まあしょうがないかと去っていた。

    たまたま並んでいる時もあるから
    その時は買っていたのだけれど

    毎日決まってわたしはセブンのドアを開けて
    スープはあるかなあと覗いていた。

    ある日
    目の前でお兄さんがせっせと品出ししていたから
    勇気を出して言ってみた。
    そう、スープはこの山積みトレーの中にある。

    「スープありますか?」

    「ああ!!少々おまちください!」

    山積みにされたトレーを一段一段おろしていくお兄さん。

    「あれ?あれ?あれ?」

    めくってもめくってもスープは出てこないで
    一番下のトレーにやっとスープたちが顔を出した。

    「ああっっ!おまたせしました!!」

    「ああ、なんか、すみません。。」

    なんだかやっぱりものすごく申し訳ない気持ちになり
    品名も見ずに手に取って会計を済ませた。

    私もコンビニのバイトをしていたから
    このときのお兄さんの気持ちがとてもよくわかる。

    毎日毎日決まった時間におでんを買いに来るおじさんや
    納豆巻きがないと必ずレジにくる常連さんを思い出した。

    わたしもきっと
    スープおばさんとでもあだ名がついているのではと
    自分をディスっていた。

    それからもうお兄さんに声をかけることはしなかった。

    スープがないときは店を出て
    他のコンビニで買ったり、おかずを他で買ったりした。

    でもやっぱり、食べてみるとセブンのスープが1番だ。

    だから今日も私は改札を出たらセブンのドアをあけた。

    いつもどおり、納品された山積みのトレーを前に
    お兄さんは品出しをしていた。

    ほとんど空になっているチルド棚に目をやると
    スープの棚にだけきれいにスープたちが並んでいた。

    「いらっしゃいませー」

    なんてことなくお兄さんはトレーからお弁当を出していた。

    何種類もある中から
    お気に入りのスンデュブを選んで
    わたしは店を出た。

    「ありがとうございましたー-」

    きっと
    いつもしつこく決まった時間にやってくる
    スープおばさんのために
    お兄さんは真っ先にスープを見つけ出し
    棚に並べておいてくれるようになったのだ。

    そう思うと
    なんだか引っ込みもつかなくなり
    わたしはスープおばさんという名の常連さんになった。

    常連のお客様のきもちが少し
    わかるようになった気がする。

    棚をうめたスープたちに
    あったかいつながりを感じた。

    自分の存在や気持ちが
    誰かの気持ちと交わった瞬間
    人はぬくもりを感じるのだろう。

    あのおでんおじさんや納豆巻きおじさんも
    きっと同じような温かさを感じていたのだろうな。

    気持ちが交差しない一方通行の世の中は
    やはりどこか冷えていて生き苦しい。

    わたしもささやかな毎日のなかで
    誰かの思いに気付いて、棚を埋める存在でいたい。
    そうありたいと思う。

    今日もスープおばさんはセブンのドアを開ける。

    画像
    お読みいただきありがとうございました🌸



     
     
     
    🌸エッセイと✨️小説と書きたいこと書きます。現実と思想のはざまにいる時間がスキ。

    あなたへのおすすめ