
🌸「ないもの」に魅せられて
「売れてないんです」
朝の支度をしながらテレビを流していたら、気になるフレーズが耳に入った。思わず画面に目を向ける。
店員さんが何かの佃煮を手に取って紹介している。
確かに、見た目も地味でなんとなく得体が知れない。
レポーターが一口食べて、お決まりの表情で「ん!おいしい!」と声を上げている。
「なんで売れないんですかね?みなさん、ぜひお試しください!」
いつもなら売れ筋ベストテンとか人気商品を紹介するコーナーで、なぜか売れないものをピックアップしていたのだ。
うん、買おう。すぐにそう思った。
売れてないとか人気ないとかいうフレーズだけで、どれどれと試してみたくなる。
昔から流行りものがなんだか苦手だった。
乗っかってる自分がいやだったし、私は違うんだぞ感を出したかった。
制服のスカートを捲し上げてルーズソックスが流行りだった学生時代も、膝下スカートにくるぶしソックスだったし、みんなが騒いだ『タイタニック』も映画館には行かなかった。
流行りの曲を口ずさむこともなければ、人気アイドルにも心を動かされたことがない。行列のできる店なんて、もう行列と聞くだけでだめだ。
みんながいいと思って、みんなが持っていて、みんながおすすめするもの。
そういったものよりも、みんなが良さに気づいていないものを見つけるほうが私は好きなのだ。
人気者たちはもう十分恩恵は受けているのだから、なにも私がその拡充の一部になる必要はない。
それよりも、人気がないとか売れてないとかいうものの欠けてる感に魅かれる。その中に魅力を見つけ出したときに心にちょっとした優越感を覚えるから。
私だけが知っている、誰も気づいていない魅力。
人も同じように、目立たない気づかれない所謂デキる人ではない人たちがいる。
その人の中にも、他にはない才能やその人ならではの持ち味がある。それを見つけて活かす方法を考え、それがうまくハマったときの達成感がたまらない。
だから、私は「つまらない」とか「よくない」とかいう〇〇ないという感情を大切にしている。
そのほうがなんでつまらないんだろう、どうしたら面白くなるんだろうと思うし、そういった伸びしろの存在自体に価値があるように思うのだ。
先日、イチローが殿堂入りした。
満票にあと一つ足りなかった
そう言われた彼は満足そうに即答した。
「不完全であるというのはいい。不完全だから進める。そこに向き合えるのはよかった。」
ああ、かっこいい。
足りないということに、そこに価値を見出す彼は本当にすてきな生き方をしていると思う。
あと一歩とどかなかったという人は、成功した人と比べて何を得るのだろうか。この足りなさを自覚したとき、もっと先に進む力が生まれるのだろう。
私はこれからも「ないもの」に目を向けて、その良さに気付いていきたい。
そうすることできっと「いいもの」がたくさん増えて、世の中がもっと楽しくなる気がするから。
