
「忘れないうちに書く」その姿に、心を打たれた出来事。すぐ行動するとは…
すぐ行動する。
とはこういうことなのかと、実感した出来事がありました。
私は百貨店で販売の仕事をしています。
毎日さまざまなお客様と出会いますが、ときどき、その方の生き方に触れるような瞬間があります。
ご年配の女性とのひと時
先日ご来店されたのは、80代くらいの女性でした。
配送をご希望とのことで「ちょっと待ってね。住所があるか探すから。」と、ゆっくりお手持ちのカートの中を探されていました。
私は、その様子を少し遠くで見守りながらお待ちすること数分。
やがて取り出されたのは、手のひらより少し大きいくらいの一冊のノートでした。
もう何十年も使い続けてきたのでしょうか。
表紙には年季が入り、中には住所やこれまでの記録がぎっしりと丁寧に書き込まれていました。
そのノートを見ながら、一文字ずつ丁寧に住所を書かれていきます。
文字が小さくて読みづらいところがあると「これは何かしら」と聞いてくださったので、一緒に拝見しながらお答えしました。
そうして3件分の住所を書き終え、お会計に。
使い込まれたノートと鉛筆
お会計のため、私は数分だけその場を離れました。
戻ってくると、テーブルの上にはB5サイズのノートが4~5冊積まれていました。
そして、お客様はそのうちの一冊を開き、短くなった鉛筆で何かを書き始めていたのです。
私はお客様の手が止まるのをゆっくりと待ち、顔を上げてくださった瞬間、私は微笑んでいました。
知らず知らずのうちに、私の表情がより柔らかくなっていたのです。
「あ、ごめんなさいね。今日の記録を書いているの」
そう言ってノートを見せてくださいました。
誰に何を送ったのか。
どんな商品だったのか。
今あった出来事を、その場ですぐに書き留めていたのです。
「すぐに書かないと忘れちゃうから」
私は純粋にすごい…と思いました。
私が席を外していたのは、本当に数分。
その間に、もう書き始められていたのです。
行動が終わった瞬間に、次の行動へ。
この行動の速さ。
私だったら「帰ってから書こう」
そう思ってしまうでしょう。
1枚の紙からノートへ。重いけれど持ち歩く理由
以前は一枚ずつの紙に書いていたそうです。
それだとどこに何を書いたかわからなくなってしまう。
だから今はノートにまとめ、日付順に記録するようになったとのことでした。
「ちょっと重たいんだけれどね」
そう言いながら、4~5冊のノートを持ち歩かれていました。
必要になったとき、すぐ見返せるように、と。
自分なりの工夫。
ゆっくり積み重なっている。
すぐ行動するって、こういうことか。
そこには「忘れてはいけない」という、はっきりとした目的があります。
だからこそ、行動に迷いがありません。
自分の行動を記録し、探さなくてもすぐにわかるように。
丁寧に、丁寧に書かれたノート。
年季の入ったその佇まいに、ただ「すごい」という言葉しか浮かばない私がいました。
素敵。
心を奪われた数十分の出来事でした。
そして優しい笑顔で、その場を去られたお客様の姿が目に焼き付いています。
誰かの想いに触れられる瞬間

百貨店で働いていると、お客様との会話を通して人生に触れられる瞬間があります。
何気ない日常の中に溢れるさまざまな想い。
お客様と会話を紡げること。
ゆっくりとご自身のことを話してくださる瞬間。
それが、たまらなく嬉しい。
この日、一冊のノートから教わったこと。
「すぐ行動する」とは特別なことではなく、小さな行動を積み重ねること。
そしてその先には、目的があるということ。
私も、すぐに行動できる人でありたい。
目の前の人のために。