
湧き水の年齢は
山を歩いていると、山肌から湧き水が出ている所に出くわすことがある。
その湧き水に年齢があるとしたら――
山に降った雨や雪が土の中に浸み込み、地下水として山を流れる。
そしてそれが地表に出てくると、湧き水になる。
湧き水に年齢があるというと、不思議なように聞こえる。
でも、湧き水の元はすべて雨か雪だったから、降った雨や雪が地中に浸み込み、湧き出すまでに時間がかかっている。
湧き水の年齢を調べる方法がある。
それは、水に含まれているトリチウムと呼ばれる放射性物質の濃度を測定すること。
トリチウムは、大気中で生成される天然の放射性物質で、大気中で雨や雪に溶け込んで地上に降り、地下に浸み込んでいく。
トリチウムの半減期(量が半分になる時期)は約13年で、その間に半分が放射能を持たなくなる。
つまり、13年後にはトリチウム濃度が半分になり、26年後には4分の1になる。
だから、湧き水のトリチウム濃度を測定して現在の雨や雪のトリチウム濃度と比べれば、湧き水の年齢を知ることができる。
タイトルの写真は、静岡県にある柿田川湧水。
富士山に浸み込んだ地下水が湧き出している。
写真では伝えられないけれど、湧き出す地下水によって底の砂は舞い上がり、水面にさざ波が立っていた。
この柿田川湧水、トリチウム濃度の測定によると、26~28年の歳月をかけて富士山からたどり着いているらしい。
ということは、地上に降りてからの年齢は26~28歳である。

26~28年前の水と対面していると思うと、不思議な感覚である。
でも、よくよく考えてみると、普段飲んだり手を洗ったりしている水も、いつぞやかには雨や雪だったのだから、いつも対面していたのは過去の雨や雪なのだ。
過去からのおくりもの、それがこんなに身近にあることに改めて気づく。
私たちはいつも、過去と触れ合っている。