
春のレモンスイーツと、ちょっと優しいAIの話
春はビタミン。特にC。
日差しも強くなり、視覚からも味覚からも、めいっぱいビタミンが恋しくなる季節。
日々のおやつも、定番の茶色くてほっこり素朴なものから、明るくて元気がでる、爽やかなものを作りたくなる。酸味ががっつり効いた、甘酸っぱいやつ。
そんなときに手に取るのは決まって、私の偏愛くだもの、レモンだ。
そして今回、そのレモンでちょっとしたハプニングが起きたのだけど、ルンルン気分でレモンを買いにいったあのときの私はまだ予想さえしていなかった。
幼少時のおやつの定番はハイレモン、成人してからは飲み会の場で揚げ物についてくるレモンをそのままかじっていた私。何度もレモン愛については語ってきて、マガジンまで作っているくらいなので、よかったらこちらからどうぞ。
仲直りのタルト・オ・シトロン
最近喧嘩が多いOtto氏と私。ガツンと私が物申して以降、あちらも気を遣ってくれているのがわかってそれはうれしいのだけど、私は私で「さすがに言い過ぎちゃったかも?」という懸念が拭えない。
こういうときは、ヤツの好物を作るに限る。タルト・オ・シトロン(レモンタルト)。世界各地で起きている衝突も美味しいもので解決できればいいのにね、なんて思いつつ。
レモンタルトというやつは、土台から全部ちゃんと作ろうとすると数日がかりのなかなか手間がかかる代物。まずはタルト生地の仕込みからとりかかる。
レシピは、愛用しているレモンスイーツの本を参考にしよう。かれこれ10年以上お世話になっている、レモン好きのための本だ。こういう特化型のレシピ本っていいよね。いろんなものが網羅されているものよりこういう振り切ったものに惹かれる。

タルト生地(直径16cmのタルト型2台分)
・バター:90g
・粉砂糖:30g
・卵黄:1個分
・薄力粉:120g
・塩:少々
・アーモンドパウダー:20g 室温に戻しておく
サブレを作る要領で、バターと粉砂糖をすり混ぜたところに卵黄を加え、粉類をふるい入れたら切るように混ぜてひとまとめにし、ラップでおくるみして冷蔵庫へ。レシピでは冷蔵庫で1時間以上寝かせるとあるが、私の場合これが24時間だったり、はたまた48時間だったりするわけで。

やっぱりアーモンドパウダーが入ったほうが風味が格段に違いますな
今回は水曜の午後仕込んだ生地を木曜の午後に伸ばして冷凍庫にいれたので、24時間のおやすみでしたね。
レシピどおり、生地を伸ばして型にセットしたのち冷凍庫で半日以上(という言葉に甘えて1日半)固めて、土曜の朝、焼成。生地を伸ばして重しをして180度のオーブンで20分、重しを外してさらに10分焼く。

レシピの分量だと16cmのタルト型2台分だけど、今回使おうとしている我が家の底取れタルト型は22cm。ちょっと厚めに伸ばして生地は全部使い切った。伸ばすのは相変わらず苦手なので切ったり貼ったりの手作り感満載。

次にレモンクリームをつくろう。レシピの分量だと明らかに足りないだろうと思って、材料は1.5倍にしてみる。ここが運命の分かれ道になるとは…。
【レモンクリーム】(直径16cmのタルト型1台分→22cm用に1.5倍に)
・卵:3個
・レモン汁:120cc
・レモン皮のすりおろし:3個分
・グラニュー糖:180g
・ゼラチン:9g 板ゼラチンを使用。レモンクリームに取り掛かる前に、水でふやかしておく。
・バター:120g 角切りにしておく。
左上の機器は、電動の柑橘絞り機。こういうのが2台ある我が家です。


それにしてもたっぷり!指まですらないように!

レシピ通り、溶いた卵とレモン果汁と皮、グラニュー糖を火にかけて弱火で泡立て器ぜ混ぜ、とろみがでてきたところでゴムベラに切り替えてさらに混ぜる。全体的にとろみが出たところで火からおろし、ふやかしたゼラチンを加えて混ぜ、ザルで濾す。2回漉した。
その後、バターを加えて余熱で混ぜて溶かし粗熱がとれたらタルト生地に流し込み、冷蔵庫で冷やす。

多少タルト生地がガタガタしているけど、ここまでは順調にきた。あとはちゃんと冷蔵庫で固まってくれることを祈ろう。
いつものガトー・シトロンも
レモンクリームを濾したときに、レモンの皮のすりおろしが残るわけだけど、これを捨てるのが勿体無いなとレモン狂センサーが発動。月に2度くらい作っている我が家の定番ガトー・シトロンもレモンの皮のすりおろしをたっぷりいれているので、ここに加えれば無駄にならん!と思い、急遽ガトー・シトロンも作ることにした。こういうときの足軽ぶりを常にみせてくれよ私という人間はよ。
私のガトーシトロンはレモンの皮のすりおろし、レモン汁、そしてポピーシードがたっぷり入る。今日は倍倍レモンだね!

ピンチヒッターのおもちゃオーブンでもレモンケーキは焼いていたけど、必ず焦がしたり何かうまくいっていなかった。やっぱり慣れ親しんだいつものオーブンだとちゃーんといい具合に焼けてくれて嬉しい限り。


レモンスイーツたちをおめかししよう
冷蔵庫で1日冷やしたレモンタルト。心配は杞憂、ちゃんと固まってくれた。

ピスタチオでちょっぴりおめかしして、完成。

次、レモンケーキ。型外れもスルッと綺麗に。

上からかけるレモンアイシングは、大量の粉糖にレモン汁を少しずつ足して、細良い硬さになるまでかき混ぜながら調整する。アイシングをまとわせたら、こちらもピスタチオダイスを中央にのせて、出来上がり。




しばらく眺めていたい気もするけど、いまか今かと待ち侘びているスイーツ大好きなヒトが犬のような目をしながら待っているので、早速カット・・・したのだけれども!


タルトのレモンクリームがなぜか2層になっているではないか!?!?

えっと、これは、ちょっと待って。やらかしたやつでは?
タルト生地の上のレモンクリームが、ゼリー層とクリーム層で綺麗に分離してしまっているよ。こんな失敗は初めてだ!なんだか悔しいので、泣く泣く今まで作ってきたものを貼り付けます。いつもはちゃんとできるのに!




ゼリー特有のgluant感(ねばねばというかぷるぷるというかそういう感じのやつ)が全般的に苦手なOtto氏、とりあえず一切れは食べたけど、案の定反応はイマイチ。「味はとってもいいけど食感が(以下略)」と正直なご感想。私はゼリー系どんとこいなので、この段階でかなりありというか今後これで行きたいくらいの出来なのですがね。

落ちこむ私を励まそうとするOtto氏。「レンジでチンしたらどう?」なんていうので、「あーたそりゃ、液状化してどろんどろんのでろんでろんになるでしょうよ」と突っ込むと、「ならば冷凍庫はどうだ!?」と。なるほど、こんにゃくゼリーも凍らせるとソルベみたくなって美味しかったし、それはありかも。
早速一切れ冷凍庫に入れてみたところ・・・
これは、大アリ!これからの季節にさっぱりとアイス感覚で食べられるからイイ!と大絶賛していた。私もひとくち齧ってみたけど、これはこれでぷるんぷるんタルトとは全然違う、もはやアイスですな。

私はあのぷるぷる感も好きなのだけど
通常の成功版レモンタルトを凍らせてもこうなるのだろうか?さもなくば、失敗から新たなスイーツを世に生み出してのしまったかもしれない私は。
教えて、Gemini!
横でヒト科Otto氏が「冷凍庫は?」と感覚派の救済策を提案してくるなか、一方のAIは、理路整然と原因を4つに分解してきた。
切花の長持ちさせる方法とか野菜の下拵えとか、生活の知恵的なものはAI(Gemini氏)に尋ねてみることが多い昨今。この失敗の原因はなにかも教えてくれるかもしれないと思い、すがる思いで尋ねてみたのだ。

Geminiによれば、原因として考えられるのは以下の4つだという。
1、バターを入れるタイミングと温度(乳化不足)
レモンクリームにおいて、一番多い原因がこれです。
・原因: クリームのベース(卵、砂糖、レモン汁)が熱すぎるうちに一度にバターを入れると、バターが「乳化」せずにただの「油」として溶け出してしまいます。逆に冷めすぎてから入れても混ざりきりません。
・対策: ベースが少し落ち着いた**50℃〜60℃**くらいで、冷たいバターを少しずつ加え、その都度よく混ぜる(またはハンドブレンダーで乳化させる)のが理想です。
2、加熱不足(とろみの定着)
・原因: 卵の凝固作用や、レシピにコーンスターチ等が含まれる場合、その「糊化(こか)」が不十分だと、冷やした時に水分と油分を保持できなくなり、分離することがあります。
・対策: 弱火で絶えず混ぜながら、ツヤが出てしっかりとしたとろみがつくまで丁寧に加熱してください。
3、卵への急激な加熱
・原因: レモン汁と砂糖を温めたあとに卵を合わせる際、一気に熱い液を注ぐと、卵が部分的にスクランブルエッグ状態になり、均一なクリームになりません。
・対策: 卵液に熱い液を少しずつ加えながら混ぜる「テンパリング」を丁寧に行い、最後に必ず濾し器で濾すのがポイントです。
4、レモン果汁の酸の影響
・原因: レモンの酸はタンパク質を固める働きがありますが、混ぜ方が甘いとムラになり、離水(水分が出てくること)の原因になります。
ああこれは、おそらく2の加熱不足にちがいない。いつもはバターがすぐ溶けるのになかなか溶けなかったし。
分量をサクっと1,5倍にしたことも合わせて伝えたら、その返答が的確すぎてぐうの音もでません。
とろみをおそらく勘違いしていたし、ちょっと味見してみるかと小指をちょこんとしたときに明らかに80度もなかったし。
分量を1.5倍に増やしたこと自体は間違いではないのですが、実は**「量を増やす=加熱の難易度が上がる」**という落とし穴があります。
まさに「原因2(加熱不足)」というご自身の推測を裏付ける形になりますが、量が1.5倍になったことで、いつもの感覚よりも**「芯まで熱が入るのに時間がかかった」**可能性が非常に高いです。
量を増やした時に起こりやすいこと:
・「とろみ」の勘違い: 量が少ないとすぐに全体が熱くなりますが、1.5倍になると鍋肌だけが先に固まり、中心部はまだ温度が低いままになりがちです。「全体的にとろみがついたかな?」と思って火を止めても、実際にはタンパク質の結合に必要な**80℃**に達していない部分が残っていたのかもしれません。
・加熱時間の不足: 単純に1.5倍の時間がかかるわけではなく、対流が起きにくくなるため、意識的に「長めに、かつしっかり」加熱する必要があります。
・乳化の難易度アップ:クリームの総量が増えると、後から入れるバターを均一に混ぜ合わせる(乳化させる)のにも、より強い攪拌力と時間が必要になります。
この原因分析につづいて、次回の対策をくれた後、最後にくれる一言に私はおおいに救われる。

ちなみに...
お写真の断面を見ると、層にはなっていますが「レモンカード」と「バター風味の層」のどちらも美味しそうに固まっています。これは失敗というより、**「2層仕立ての贅沢レモンタルト」**という新しいレシピと言ってもいいくらい綺麗ですよ!
次は、1.5倍のクリームを力強く練り上げて、ぜひリベンジしてみてください。応援しています!
「2層仕立ての贅沢レモンタルト」とな・・・?
今では日本でもかなりメジャーであろうフランス発祥のタルトタタン。このカラメルりんごがウリのお菓子も、タタン姉妹がりんごタルトを作ろうとしたときにうっかり焦がしてしまった失敗から生まれたといわれている。
失敗を失敗のまま終わらせるか、それとも別の名前をつけてしまうか。
「2層仕立ての贅沢レモンタルト」なんて名前をつけられたら、それはもう失敗じゃない気さえしてくる。失敗からの創造、これぞクリエイション!
そんな風に前向きにさせてくれるAI、悪くないなー。
台所にもうひとり、静かな相棒が増えたみたいで。
